ドキドキ  熊沢の話に看護師たち。そして、その場に居合わせた研修医たちも、
「解離性同一性障害。」

研修医のひとりが、
「熊沢先生…、PTSD…では…???」

その声に熊沢、目を閉じて顔を左右に。
「いいえ。…私も最初は、それが頭に…。…けれども、彼女を見て、そして話しを聞きながらにして…。紛れもなく…、柚香さんの…、今の身体に中には…、その…、彼女の妹である、陽織さんが…。…しかも…、決定的な事が…。…陽織さんには…、過去の記憶が、全くない。」

みな一同に、
「…そ、そんな…。」

熊沢、
「まずは、汀さん。幸乃さん。おばあちゃんから聞いた話を…。」

「は、はい。」

病室では…。あれから陽織と幸乃は…。会話はなく…。
陽織はまた…、ベッドの中で…、布団を被ったまま…。

幸乃の頭は混乱していた…。
あの時の事故の事から…。頭の中で走馬灯のように、駆け巡っていた。
柚香の…、天文学の本を見ながら…。頭に入る事なく…。
そして、時には涙がページにポツリ、ポツリと…。

…その度に、
「はぁ~~~。」

どのくらい時間が、過ぎたろぅ…。

看護師が病室に…。そしてベッドにうつ伏せになっている幸乃を見て、
「おばあちゃん…。」

その声に気付き、はたと目が覚める幸乃。
「あぁ…、看護婦さん。」

「お疲れでは…???」
「あ、はぁ~~。はは。えぇ…。…でも…、もう少し。」

その声に看護師、笑顔で、
「はい。分かりました。…でも、あまり、ご無理は…。」

幸乃、笑顔で、
「はい。ありがとうございます。」

ベッドの陽織は静かに眠っている。
食事は…、ショックからか…、一口も…、手を付けられていない…。

既に面会時間を過ぎて…。

幸乃、看護師から…。
「申し訳ありません。それでは…、お言葉に甘えて…。」

看護師、ニッコリと、
「はい。分かりました。お気を付けて。」

看護師に丁寧にお辞儀をして病室を出る幸乃。
看護師もエレベーターに入っていく幸乃を病室の前から見送って一礼を…。

その時、ベッドの中から…、
「おばあちゃん…。」

その声に看護師、
「おばあちゃん、今、帰りましたよ。…大丈夫…???」

ベッドの中からは、返事が…、
「う…、うん。」

看護師、
「また、来るね。」

翌朝も…、朝食…、ベッドの中でもぞもぞとはしているが…。
起きようとする動きはなく…。

ナースステーションでは…。
「夕食に続き…、朝…もかぁ…。」
「確かに…ねぇ~~。」

そして…、午前10時。看護師が病室を…。すると…、
「大~~ぃ変。」
またベッドの中がもぬけの殻。すぐさまスマホで…。

ナースステーション、電話を取って…。
「また汀さん。病室から出たようです。」

一同、すぐさま屋上に…。
…けれども、数人の患者と看護師以外に車椅子に乗っているはずの陽織の姿はなし。

看護師と医師、
「…今度は…何処に…???」

5分後…。

医師の松峰忠司(まつみねただし)のスマホに、
「いました。1階の売店の前のべンチです。」

松峰、
「分かった。」
看護師の窪谷彩芽(くぼたにあやめ)が陽織を見つけて、
「汀さん。汀さん。」

名前を呼ばれて陽織、看護師を見つけて、
「や~~っば。見つかっちゃった~~。」

隣に座っている真輝、
「おっと~~~。」

彩芽、
「心配した~~。病室にいなくって~~。」

真輝、看護師の前で、
「見つかっちゃいましたね~~。」

陽織も、ニコニコと、
「見つかっちゃいましたね~~。」

けれども陽織の隣に座っている男性を見て彩芽、
「あれ…???…君は…???…勝巳君。真輝君。」

真輝、看護師に、
「おはようございます。」

陽織、看護師に、
「今ね、看護師さん。真輝君に、天文学の本。見せてるの。」
そして陽織、
「…で、看護師さん、凄いんだよ。真輝君、私と同じ大学。いやいやいやいや。び~~っくり~~。」
そして真輝を見て、
「ねっ。」

真輝もその声に、
「えぇ。…って言うか、僕もびっくりで、柚香さん。汀さんと同じなんて…。凄い偶然。僕の1個、後輩。」

その話に、彩芽、
「はっ…???」

そして彩芽の下には他の看護師や松峰も、
「いたか~~~。」

ぞろぞろと柚香の元に集まる看護師たち。

それを見て陽織、
「えぇ…???…一体何…???」

彩芽、他の看護師と松峰の前に、
「ちょ…、ちょっと…お待ちください。」

他の看護師と松峰、彩芽を見て、
「…ん…???」
「何…???」

彩芽、陽織を見て、
「汀さん。」

陽織、
「あ、はい…。」
キョトンと…。

彩芽、
「汀…、柚香…さんで…。」

その声に他の看護師と松峰、
「はっ…???」

彩芽、
「…いいんだよね…???」

その声に柚香、顰めた顔で、
「はっ…???」

隣に座っている真輝も…、両眉の先端を吊り上げて、
「…ん…???」

柚香、目をパチクリと、
「あ…???…えっ…???…と…。」
そして、
「はっ…???」
顔を傾げて、
「えっ…???…すみません…。柚香…、ですけど…。何か…???」

瞬間、看護師も松峰も、一気に体を崩して、
「お~~~~。」
「あ~~~~。」

LIBRA~リブラ~   vol,012.   「過去の記憶が、全くない。」

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Source: THMIS mama “お洒落の小部屋