そして…。そのまま季節は秋から冬へと…。
百貨店扶桑の業績は、横領事件があった頃の数値をそのままキープ。
訪れる客数は伸びていた。それに比例しての社員たちの勤務も、
社会的にも多忙を極めてもいたが…。
12月にも入ると、その多忙が当たり前となり、より効率的にと…、扶桑自体が顧客への還元。
そして社員への還元と進んで行った。
獏と葉子も、お互いの家に行き来。獏の住んでいるマンションも、少しずつではあるが、
家庭的には…、なっても…いた。
但し、これだけは決して変わらない事が…。
朝は必ず葉子は選家からの出勤。そして獏の昼と夜は変わらず匡子の店。
そして…。
獏、ローガンとアメリアの子供たちを見て、
「こんにちは、エミリー、ミラ。」
ニッコリと。
葉子にまとわりついていた子供たちが獏を見て、恥ずかしそうに、
「こんにちは、バク~~。」
アメリアが葉子に、
「この子が、エミリー、今、ミドルスクール。」
葉子、
「…と、言う事は、今、中学生。」
アメリア、
「えぇ、1年よ。そして、この子が、ミラ。エレメンタリー。」
「小学…。」
獏、
「…と言う事は…、エミリーは中学1年。ミラが…、小学…、4年生…。」
アメリア、獏を見て、
「ふふ。そう~~。」
「そっか~~。あれから…、3年になるもんな~~。」
葉子、
「かわい。」
それからは葉子、獏とローガン、そして、子供たちと一緒にシカゴの街を…。
そして…、夜は家族と共に…。家族の以前からのたっての希望で、
通常であればホテルで宿泊のところを…。ナンシーが使っていた部屋はまだそのまま。
家族が是非、使ってくれとの事で…。不思議に葉子もその事には素直に受け入れていた…。
普通であれば、自分の恋人のかつての…、
婚約者でもある女性の部屋に泊まると言う事は考えられない…、のではあるが…。
何故か葉子は、導かれるままに…。それが自然でもあった。
そして…。
信じられない事がまたひとつ。
フレデリック家の家族も驚いた事だが…。
あれから…、元気がなく、ただ、ただうずくまってばかりいた愛犬のリリーが…。
葉子を見た途端に葉子に激しく縋り付いたのだった。
後々、聞いた話なのだが…、ナンシーが亡くなった日からのリリーは、
殆ど、動きもままならず、元気のない表情が3年、続いたという。
葉子、時にはアメリアと子供たちとのショッピング。
そして家族で一緒の観光と賑やかで楽しいフレデリック家との一週間を過ごす。
そして、東京の選家。
葉子がアメリカに旅立ったその日の夜、由佳理はリビングで、葉子と獏の…、
あの日の高村家での踊りの動画を…。涙を零しながら…。
「葉子~~。シカゴで…どうしてる~~???」
そんな葉子。…ではあったが…。アメリカ、シカゴでの葉子の表情は、やはり…。
…けれども、フレデリック家では、そんな葉子に一切として常に笑顔で接してくれていた。
時にエミリーが…。
「ナンシー。」
葉子、
「うん。どうしたの…???」
葉子は子供たちが葉子の事をナンシーと言うのを甘んじて受け入れていた。
…と、言うよりも、葉子自身が、自分の事をナンシ―と呼ばれることに、
ある意味、喜びも感じていた。
幾ら、自分がナンシーではないと思っていても、まず顔かたち、
そのものがナンシーと…、双子のように感じられる家族に…。
しかも、声までそっくりな自分にとって…。フレデリック家の人が…、
自分を待っていてくれた、もうひとつの家族のように…。
エミリー、
「ナンシーが、笑わなくても、悲しくなくても、楽しくなくても、私は、全然、いいよ。ナンシーの事、大~~ぃ好きだから。」
その声に葉子、
「えっ…???」
そしてまたエミリー、
「私~~。ナンシーも葉子も大~~ぃ好き~~。」
瞬間、葉子、思わず目が赤く…。そして、ポトリと目から涙が…。
そして…、自分も知らない間に、エミリーを抱いていた。
エミリー、抱かれたままで、
「ハハハハ。うんうん。」
そんな葉子と姉のエミリーを見て、買い物から帰ってきたミラが、アプローチを走りながらも、
「キャハハハ~~。」
そして葉子とエミリーにダイブ。
エミリー、
「ミラもナンシーも葉子も大好きだよね~~。」
ミラ、
「キャハハハハ。うん~~。」
葉子、何故か、涙が止まらなかった。
そんな3人を見て、荷物を持ちながらのアメリア、笑顔で…。そして葉子に、
「ただいま。」
「おかえりなさい。」
そして、その夜。
ベッドの上で葉子、隣の獏に、
「エミリーとミラが、私の事、大好きだって…。私…、泣いてしまった。」
そんな葉子に獏、ニッコリと、
「そっか~~。…うん。良かった~~。良い思い出で…、帰れるな…。」
葉子、また、ふたりの事を思い出したのか…、目を染めて、
「うん。」
そして…、次の日には…、飛行機…、オヘア空港を…。
こんな私です。〜選葉子(すぐりようこ)〜 vol,236. そのまま季節は秋から冬へと…。
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庄司紗千「おふろ月夜」
※ご本人の承認の下、紹介させて頂いております。
Source: THMIS mama “お洒落の小部屋