ドキドキ  空港内の駐車場を出て一路市街へ…。

ローガン、運転しながら後部座席に、
「疲れたでしょう。」

その言葉に獏、微笑みながら、
「まっ。確かに。旅なんて、殆どする事がなかったから…。…でも、まっ。」
そして隣に座っている葉子を見て…。ニコリと、
「彼女の方が心配。未だかつて、旅行経験なし。しかも…、海外なんて…。」

葉子、獏のそんな話を聞いているのかいないのか、顔をあちらこちらに。
時折、獏の顔を見て…。

獏、
「もしかしたら…。後で…、パタンと…。」

その声を聞いてローガン、
「ア~ハハハハハ。ワ~~オ。な~~るほど~~。」

そして車は市街をゆっくりと回り、そのまま今度は郊外へ…。

獏、後部座席で葉子に、
「葉子、一旦市街を回って、ローガン、郊外の自宅に行くみたい。」

その声に葉子、口を尖らせながらも2度頷く。
そして、ポツリと、
「アメリカ…。シカゴ…。」

そして…。

やがて車は住宅街に入り、数分後…。車は路上に駐車。

ローガン、
「ヘィ。到着。」

獏、
「着いたか。」
葉子に。
「郊外とは言え、まぁ…、車で走って数分には、市街に入る位置だけど…。」

外に出た途端に、葉子、
「さすがに、ちょっと…、寒いね。」

シカゴ、気温は東京に比べて、5度は低い。

ローガン、キャリアケースを持ちながら玄関に。

すぐに玄関に出てくる女性、アメリア・フレデリック。ローガンの妻である。
「おかえりなさい。」
そしてローガンの後ろにいる獏を見て、
「オ~~、獏~~。会いたかった~~。久しぶり~~。」
獏に抱き付く。

獏もアメリアを抱き締め、
「久しぶり、アメリア。元気だった…???」

アメリア、2度程頷いて…。
そして、そんな獏の後ろにいる女性を見て…。

ポニーテールになった髪に麦わら帽子を外して葉子。

アメリア、そんな女性を見て、いきなり目に涙が、
「オーマイガ…。ナンシー…。」
いきなり感情が込み上げてきて、目の前の女性に抱き付く。

いきなり葉子、目をパチクリとさせて…。

そんなアメリアと葉子を見て獏、自然に微笑む。
「はは。」

ローガンもニッコリと…。

けれどもアメリア、はたと気付いて…。
「あっ。…ごめんなさい。いきなり…。」

けれども葉子、顔を振って、
「大丈夫です。」
英語で…。

アメリア、
「ワオ。」

いきなり家の中から子供たちが…、
「パパ~~~。」

ローガン、
「ハ~~イ、ただいま~~。」

アメリア、女性に、
「ごめんなさいね、いきなり抱き締めたりして…。」

葉子、
「いいえ…。全然。」

ローガンと獏、家の中に。そして、葉子を…。

入ってきた女性を見て子供たちも、いきなり目を真ん丸にさせて、
「ナンシーッ!!!キャ――――――ッ!!!」
いきなり子供たちふたり、共に、女性に抱き付く。
「ナンシー、ナンシー。」

葉子、今度はさすがに、笑顔で、
「アハハハハハハ。こんにちは~~。」

アメリアがいきなり、
「こら、あなたたち。」

とは言うが、ローガンが、
「ハハ。アメリア、ユ~もだよ。」

葉子、既に子供たちから囲まれて…。

ローガン、リビングに…。

すると…。

ソファに座っていた男性と女性。ふたり共に立ち上がり、
「なんという事だ。」
「まさか…。信じられない。…こんな事って…。」

ローガンの…。そして亡きナンシーの、父と母である。
イーサン・フレデリック。父親である。そして、ソフィア・フレデリック。母親である。

ふたり共にゆっくりと獏と女性に近づき。まずは獏に、
「獏、久しぶり。」

獏も、
「おとうさんも…。」

そしてソフィアも…。そしてイーサン、女性に、
「なんて事だ。ナンシーに生き写しだ。」

葉子、右手を差し出すが、イーサン、優しく女性を抱き締める。
「なんて事だ。なんて事だ。」

抱き締められて葉子。…けれども葉子も、そんな老人を快く受け入れて…。
抱き締める。

そして…。目を真っ赤にしているソフィア。
こちらは葉子の両頬にキスをして、同じように女性を抱き締める。
「ナンシー。オォ、ナンシー。」

葉子、小さく、
「こんにちは。」

その声に、ソフィア、今度は女性を抱き締めたまま、泣きだす。
「ア~~~。」

アメリア、獏に、
「びっくりだわ。ナンシーに、声もそっくり。」

ローガンも、
「あぁ~~。声を聞いた瞬間、僕も…。」
そしてローガン、父と母に、
「とうさん、かあさん。申し訳ないが…、その人は、ナンシーじゃないよ。前にも話したけど、その人は、獏の婚約者。名前は、選葉子さん。」

その声にイーサン、
「あ、あ~~。」
そして妻を呼んで、
「ソフィア。」

ソフィア、ようやく女性から離れて、女性にお辞儀をする。そして一言、
「ごめんなさいね。…でも、余りに娘に…、生き写しで…。」

葉子、ニコリと、
「大丈夫です。お話は、獏から伺ってますから。」

その声にイーサン、
「なんと。声まで…。」

ローガン、
「そういう事。」

ソフィア、目に涙を溜めたままで、
「ア、 ハハハハ~~。」
そして、
「もう一度~~。」
女性を抱き締める。

葉子、
「えぇ。どうぞ。」

こんな私です。〜選葉子(すぐりようこ)〜   vol,231.   ポニーテールになった髪に麦わら帽子を外して葉子。

※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※

《PR》

庄司紗千「海をこえて」
※ご本人の承認の下、紹介させて頂いております。

アメーバ

Source: THMIS mama “お洒落の小部屋