そんな葉子の話を聞いて虎一郎も、思わず、
「ぷっ。」
「…で、私のそんな表情に課長もつられて、こりゃいいやって笑うし。」
葉子。
「…でも、そんな私と課長が、なんでそんな表情で、そして笑っているのか、これまた可笑しくって、肝心のおかあさんは、全然分かんないみたいにキョトンとして、さも疲れたような感じで…。ちょっと、沈黙したよね。あん時。」
秀美に。
秀美も申し訳なさそうに葉子に頭をコクリと。そして困ったような表情で…。
「…で、一言。」
葉子、
「言ってやった。」
一拍置いて。
「おかあさん、鮎川さん。秀美ちゃんのおかあさん。そんなあんたが一緒だから、秀美ちゃん、ダメになるんだよ。そして、あんたと一緒だから、秀美ちゃん、籠の中の鳥なんだよ。いい加減に解放しな。」
瞬間、虎一郎、
「うそっ。そんな事言ったの、おま…。葉子~~。」
輪湖、思わず、
「くくく。」
秀美、葉子に頭を深く下に。
葉子、顔を揺らして、腕組みをして、
「いやいやいや。我ながら、自分であぁいう事を言うとは思わなかった。かな~~り、ハイテンション。…課長も驚いてたもんね~~。おかあさん…、それから何も言えずに…。」
そして、秀美を見て、
「口…、利いて…くれないかぁ~~。」
そして葉子、両目を左右、ぐるりと…。
「…と、言う事は~~。」
そして、
「うん。うんうんうん。秀美ちゃん、アパート、探しちゃえ。」
秀美、その声に、
「へっ…???」
葉子、
「ふん。このタイミングで、アパート、探しちゃえ。意志をそのまま貫いて。その方がいい。」
「えっ…???…えぇ~~~え…???…アパート…???…もぅ…???」
葉子、頭をコクリと。
「うん。ついでって訳じゃないけど…。おかあさんが今、秀美ちゃんに口を利かないっていうんだったら、ある種、先回り。考えるチャンスを与える。…でも、この考えるチャンスって言うのがズルズルとなるともぅダメ。元の木阿弥。だから、先手を打つ。別に…、おかあさんからの回答を待つ訳じゃないんだから~~。」
葉子の話に輪湖、そして虎一郎も、
「うんうん。」
虎一郎は腕組みをして、
「なんだったら、俺も手伝うよ、秀美ちゃんのアパート探し。」
その瞬間、虎一郎の頭、後ろからパコ~~ン。
「痛~~って~~っ!!!」
「下心、見え見え。」
据わった目での葉子。
輪湖、苦しそうに、
「かかかかか。」
その瞬間、輪湖、スマホを持って、なにやら…。
葉子、そんな輪湖を見て、
「うん…???」
輪湖、何やら検索しているらしく…。数秒、沈黙。
虎一郎も、
「…ん~~~???」
そして輪湖、スマホ画面に、目を上から下…。上から下…。
「…っと~~。あった。わお。ビンゴ~~。」
そしてスマホ画面を葉子に。
葉子、
「ふん…???」
画面を見て、
「メゾンド・ヒル・クラシアン。あっ。空室あり。」
輪湖、葉子に、
「うん。うんうんうん。メゾンド・ヒル・クラシアン。ここ。私、3階。その空室、2階。私、ここ、凄いお洒落なアパートですぐ気に入って借りたんだ。コホ。コホコホ。」
その声に葉子も、
「あ~~。はいはいはい。」
そして葉子、
「うんうんうん。ここ…、何かしら、マンション的なイメージあるもんね。」
秀美、
「輪湖先輩…。」
輪湖、秀美を見ながら、
「うん。後で、不動産に、話ししてみる。」
葉子、
「まぁ~~。こっちの段取りで秀美ちゃんのおかあさん、仮に考えがまとまって、どっち転んでも、秀美ちゃん。もぅ~~止まんないよ~~。」
その声に秀美、口を搾って、頭をコクリ。
そして葉子、
「さてと。病人に長いも無用。輪湖。」
輪湖、頭をコクリ。そして、
「ありがと。」
「多分…。熱が治まって、体が元に戻るまでは…。」
顔を傾げて…、
「冬じゃないから…。…とは、言え。この暑さの夏…。とにかく、エアコンの温度設定。それと換気。検温はしっかりと。…そして~~。食べて。」
「うん。OK。」
「熱、下がったら、教えて。」
「分かった。ありがと。」
葉子、
「じゃ、私たち。」
輪湖、
「あっ、うん。」
「あっ。葉子、あれって…どうなった…???」
その声に葉子、
「あれ…???」
素早く目が左右に。そして虎一郎をチラリと…。
虎一郎、輪湖の声に、
「なに…???…あれって…???」
「あ~~~。うん。うんうんうん。」
葉子、口をへの字にして。そして首を振って、
「まだ。全然分かんない。」
その声に輪湖、
「そっか~~。」
「もしかしたら~~。専門家じゃ…ないと…。ん~~~。」
「何の話だよ~~。」
虎一郎。
そんな虎一郎に葉子、
「バ~~カ。病人の前~~。大きな声、出さな~~い。」
いきなり虎一郎、意気消沈。
そんな虎一郎に輪湖、
「かかかか。…でも、コイチ~~。」
口を尖らせての虎一郎、
「ん~~???」
「ありがとね。」
その声に虎一郎、思わず顔を綻ばせて、
「お、おぅ。」
葉子、
「じゃ。私たち。帰る。」
輪湖、
「うん。気を付けてね。」
そして…。
ドア閉めての葉子。
こんな私です。〜選葉子(すぐりようこ)〜 vol,190. 「籠の中の鳥なんだよ。いい加減に解放しな。」
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庄司紗千「海をこえて」
※ご本人の承認の下、紹介させて頂いております。