ドキドキ 静かに、小さな声で話す輪湖、
「生まれてこの方、全く罹った事、ないんですけど…。」
天井を見て。そして葉子に顔を傾けて。そして困ったような笑顔。

「うんうん。」
葉子。

そして輪湖、また顔を天井に…。

葉子、
「だよね~~。私も、輪湖が仕事休んだこと、一度もないって。うん。」

輪湖、無理して笑いながら、
「かかかか。…それが…、唯一、私の強み。」
そして、コホコホと…。

黙って輪湖を見ている秀美。

輪湖も秀美に視線を…。小さな声で、
「秀美ちゃんにも、心配、掛けたね。」

そんな輪湖に秀美、ただ顔を左右に振って…。

そして輪湖、天井を向いて、目をパチクリと…。
「あのさ…、葉子~~。」

葉子、輪湖を見て、
「ふん…???」

輪湖、
「変な夢…、見た。」

葉子、思わず、
「変な夢…???」

「ふん。」
そして僅かに黙って、それから、
「チョウチョが飛んでんの…。」

葉子、
「チョウチョ…。」

「うん。…で…。とにかく…、暫くは、そのチョウチョが飛んでる夢、ばっかり…。あちこち、飛んでる。」

葉子、
「うんうん。」

「そしたら、今度は、お花畑…???…って言うか…、そんな景色の中で、みんなが、バーベキューしてんの…。」

葉子、両眉の先端を吊り上げて、
「バーベキュー。みんなで…。」

「葉子に、コイチに、秀美ちゃん。そして匡子さんにサブちゃん。海江田課長まで…。」
「へぇ~~~。…って…???」

輪湖、天井に顔を向いたままで、
「うん。何故か、その場所に、私だけ、近づけない。」

「うそ…。」
「近づこうとするんだけど…。なんでか遠ざかる。…仕舞には、コイチ…、私の手を引っ張って、来いよって言ってくれるんだけど…。その時、チョウチョの金粉が目の前で舞って…。近づけない。そんな夢、ばっか。」

葉子、
「へぇ~~~。不思議~~。」

輪湖、葉子に顔を向けて、
「なんで…???」
困ったような笑顔で…。

そんな輪湖を見て葉子も、困ったような笑顔で、
「分かんない。はは。」
そして秀美を見て。

秀美も、困ったように、顔をクシャリとさせて…。

その時、チャイムが…。

輪湖、いきなり目をパチクリと…。そして葉子を…。

葉子も秀美を見て…。ふたり揃って、
「誰…???」
ふたり、共に頭を傾げて…。

葉子、
「輪湖…???」

輪湖もベッドの中、頭を傾げて…。眉の先端を吊るように…。

葉子、立ち上がり、
「だ~れかな~~???ふん。」
そして玄関の方に…。

すると、
「輪湖、俺、虎一郎。何か…。はは…。来ちゃったよ。」

その声に葉子、両眉を吊り上げて、
「コイチ…???」

ドアがガラリと開く。いきなり虎一郎、
「うわぁ~~っと~~。」
一瞬、虎一郎、頭の中で、
「…40度で、こんな元気…ある…???」

ドアの内側から、
「何…???コイチ…???」

虎一郎、いきなりのマスクをした顔に、
「うわぁ~~。」
見ると…、
「なんだよ、脅かすなよ~~。葉子じゃ~~ん。」

葉子、
「あたしで悪かったね。…って言うか…、あんた…、コイチ。40度も熱のあった人に…、そんな…、無防備に…。」

その瞬間、
「わっ!!!…ヤベ。俺…、何も…???」
いきなり慌てる虎一郎。
「いやいやいや。」

「…たく~~。」
一旦ドアを閉めて…。そしてリビングに。ベッドの輪湖と座っている秀美に、
「コイチが来た。」

いきなり輪湖、
「コイチ~~~???」

葉子、
「あのバカ、全くの無防備。」

その声に輪湖、
「はっ…???」

葉子、バッグから袋を出して、
「3枚セット、買っといて良かったよ。」
袋の中から1枚を取り出して、
「はいはい。」
また玄関に。ドアを開けて虎一郎に、
「ほぃ。」

虎一郎、そのマスクを見て、
「へっ…???…いいの…???」

「…って言うか、わざわざここまできて、しかも…、お見舞い。門前払いできる訳ないでしょ。…但し、いい…???女性の部屋です。」

葉子のその声に、顔だけ僅かに前に、虎一郎、
「分かってます。」

「どうぞ。」

虎一郎、思いっきりの恐縮ぶりに、
「お邪魔…しま~~す。」
頭の中で、
「…ほんとうは、玄関で、輪湖、見れればいいかな~~って、思ってたんだ…けど…。」

ベッドに入っている輪湖。
そしてベッドの足元の方で座っている秀美。

瞬間、虎一郎、
「あ、あ~~。秀美ちゃんも…、いたんだ…。」
ニッコリと。

秀美、マスクしたままで、
「お疲れ様です。」
そして虎一郎を見て、大きく頷いて、
「あ~~~。だから、葉子先輩、マスク~~。」

「…ったく、無防備にも程がある。40度の高熱…だって言うのに…。」

スーツ姿のいつも通りの虎一郎、ペコリとして、
「すんませ~~ん。…で…???…輪湖…。」

葉子、
「予想通り、インフル~~。」

その声に虎一郎、
「インフル…???…って、あの…、インフルエンザ…???…うそ。夏も…???」

葉子と秀美、
「冬だけじゃ、ないから…。」

「えっ…???…そうなの…???」
「ただ…、冬みたいに…、狂暴ではないけど…。夏と言う環境だけに…。インフル…、高温多湿…、好まないから…。死滅するのも、早い。…但し…。」

こんな私です。~選葉子(すぐりようこ)~   vol,188.   輪湖、「変な夢…、見た。」

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Source: THMIS mama “お洒落の小部屋