一気にざわつく財務企画部内。
蔵井氏、
「姉御っ。…あ、いや…。部長。」
陣屋、急いで蔵井氏の下に。
「学ちゃん、一体何っ!!!」
蔵井氏、すぐさま椅子から立ち上がり、
「その…。あの…。…実は…。」
社員が蔵井氏の下に。
蔵井氏、険しい表情で…。
「実は…。…もしかしたら…。横領…。」
その声に陣屋、いきなり、
「横領…???」
社員たち、
「横っ…。」
陣屋、間髪入れずに、
「シッ!!!」
すぐさま葉子、自分の席のパソコンで…。
あちらこちらを…。
けれども…。頭を傾げて、
「えっ…???…でも…、そんな…形跡…。」
荒俣佐智(あらまたさち)、
「ううん。…多分、普通じゃ、絶対に分かんない。」
その声に社員たち、
「えっ…???」
「物っ凄い、巧妙。」
「巧妙…???」
また社員たち。
陣屋、佐智に、
「サッチ。どういう事…???」
「その時、その時で、ケースが全然違う。…しかも…。金額が出金。そして、入金されて後には、その口座、凍結、解約されてる。」
「はっ…???」
「しかも…、そのケースが、今まで数年に亘って…。一回、一回の金額はそれほどでもないけど…。…けど…。それを合計すると…。」
既に厳しい表情の陣屋。佐智に、
「…で…???…幾らなの…???」
佐智も険しい表情で…。
「…凡そ…。5億。」
いきなり陣屋、
「!!!」
静まり返る部署内。
そして、
「…ご…、5億。」
いきなり佐智、
「すみませんっ!!!申し訳ありません。」
全員の前で深く頭を下げて。
「私…。全然、気付けなくて…。」
いきなり涙をぼろぼろと零す佐智。
蔵井氏、そんな佐智に、
「サッチ。おまえさんのせいじゃない。ふ~~ん。…財務企画、全体で…。」
それでも顔を上げない佐智。蔵井氏、そんな佐智に、
「顔を、上げな…っさい。」
尚子と節が佐智の両側で肩に手を。そして顔を…。
そんな佐智の涙で崩れた顔を見て蔵井氏、ニッコリと。そして顔を左右に、
「おまえさんのせいじゃない。誰のせいでもない。とにかく…。みんなで…。」
陣屋、いきなり手をパンパンと。
「はい。通常業務。」
蔵井氏、
「姉御。」
そんな蔵井氏に陣屋、
「学ちゃん…。」
そして、
「とにかく…。社長には…、私から…。」
「分かりました。お願いします。」
そして陣屋、
「みんな。頼むよ。」
社員一同、
「はいっ!!!」
秀美、葉子に、
「葉子先輩…。」
葉子、
「うん。通常業務、しながら、解決するしか…ない。今は、まだ…、詳細は…。…しかも…、横領だと…、確定、された訳でも、ない。…ただ…。使途不明金には…。」
陣屋、美海の下に。
美海、陣屋に、
「お疲れ様です。どうぞ。」
陣屋、
「ありがとうございます。」
そして…。
廿楽、陣屋からの報告で…、
「分かった。…とにかく、調査は続けて。長谷部には私から。」
陣屋、
「分かりました。」
そして、
「失礼します。」
廿楽、
「あっ。陣屋部長。」
「あっ。はい。」
「…もしか…したら…。水面下で、美知佳、動くかも…、知れない。」
その声に陣屋、
「分かりました。ありがとうございます。」
その後、財務企画部は通常の…。
けれども…。いつになく、社員同士の…声は…。ない。
そして…、夕方、終業時間。社員それぞれが…、
「課長…。」
蔵井氏、そんな社員たちに、
「いつも通り。いつも通り。」
その声に、
「あっ。はい。お疲れ様でした…。」
「お疲れ。」
葉子、仕事を終えて、
「さ~~てと。」
秀美、
「葉子先輩。」
葉子、秀美に、
「行くよ。おかあさん、約束守らない人は、嫌いでしょ。性格が性格だから。」
その声に秀美、何気に困惑した面持ちで、
「えっ、え~~。」
そして葉子、スマホでライン。
数分後、葉子のスマホに。海江田からライン。
「駅で、待ち合おう。」
葉子、
「分かりました。」
送信。
葉子、蔵井氏に、
「課長~。私たち、お先です。」
蔵井氏、
「おぅ。お疲れ~~。」
紫も、
「お疲れ様~~。あっ。そうだ、葉子~~。輪湖、どう…???…アパートで、ひとり。」
葉子、紫に、
「あ~~、はい。今日は別件があるので…。明日…、様子を…。」
紫、そんな葉子に、笑顔で、
「うん。よろしく。」
葉子、紫に頭をコクリと…。
「お疲れ様です。」
蔵井氏、紫に、
「別件…???」
その声に紫、口を尖らせて、頭を傾げて…、
「…???」
駅で海江田を待つ葉子と秀美。
10分程待って海江田がふたりの下に駆け付ける。
「お疲れ様です。」
海江田、
「お待たせ。じゃ、行こうか。」
秀美はニッコリと、
「はい。」
葉子、
「ありがとうございます。」
電車に乗って海江田、
「さて。秀美ちゃんのおかあさん、どんな人なのか…。僕たちが行くこと、おかあさんには…???」
秀美、
「はい。伝えてあります。」
そして海江田、葉子に、
「選さん…。」
葉子、海江田の声に、
「あっ、はい。えぇ~~。」
何気に、いつもとは異なる低い声に、
「…ん~~…???」
こんな私です。~選葉子(すぐりようこ)~ vol,184. 一気にざわつく財務企画部内。
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庄司紗千 花笠音頭
※ご本人の承認の下、紹介させて戴いております。