海江田、
「ただいま~~。」
その瞬間、カウンターから、
「あ~~。はい、おかえり~~。」
そして3人が後ろを振り向く。
輪湖と秀美は右斜め後ろに顔を。葉子は左斜め後ろに顔を。
それぞれが、
「お疲れ様で~~す。」
輪湖が、
「おっと、一緒だったか。」
海江田の後ろの虎一郎を見て。
葉子、虎一郎に、
「お疲れ~~。」
秀美も、頭をペコリと、
「お疲れ様です。」
海江田も3人に、
「お疲れ様~~。」
虎一郎は自然に輪湖の左隣の椅子に。
そして海江田も自然に葉子の隣の椅子に。
海江田、椅子に座って、
「ふぅ~~。現着っと。」
その声に葉子、海江田を見て、
「課長…、もしかして…、営業先から真っすぐ…???」
そんな葉子に海江田、
「ふん。そっ。佐賀美君もね~~、同じく。駅でバッタリ会った。…で、お互いに、直帰って…。」
輪湖、
「…で、真っすぐにここに。」
虎一郎を見て。
虎一郎、佐武郎から受け取ったおしぼりで乱暴に顔を拭きながら、
「そゆこと~~。あ~~。気持ちい。」
そして虎一郎、おしぼりをそのまま顔に被せたままで、
「サブちゃ~~ん、生~~~。」
その声に佐武郎、ニッコリとして…。そして虎一郎の前に水の入ったグラスを。
海江田は自分でトレイからグラスを取ってポットから水を。
葉子、そんな海江田を見て、
「凄…。」
の、声と重なるように海江田、
「それにしても…。あっ。」
そして、
「あっ、ごめん…。何…???」
葉子、海江田に、
「あ、いえ…。課長、自分で…。」
そんな葉子に海江田、
「あ~~。うん。…まっ。自分の叔母の店だから…。結構、勝手に…。…それにしても…。」
匡子、獏を見て、
「うん…???どしたの…???」
「あ、いや…。なんでか…。必ずこの席は、空いてるねぇ~~。」
獏の右の椅子、2つを見て。そして後ろのテーブル席を見て、
「と~~。テーブル席は~、あと、3つで、埋まるか~~。」
輪湖、
「うんうんうん。…だよね~~。私たち、来るといっつも、このカウンタ―の席は空いてるんだよね~~。不思議~~。」
その声に匡子、ニッコリと、
「うん。まぁ~~。多分、そういうのって、他の店も同じように、あるんじゃない…。不思議に…、お客様同士の暗黙の了解って言うのが…。」
そして匡子、僅かに口を搾って、
「…とは、言っても、私が勝手にこのカウンター席、いつも、みんなのためにリザーブしている…訳でも、ないんだけど~~。」
輪湖、
「かかかか。分かってま~~す。」
海江田、
「さて。システム企画部には、一体、誰が来るのやら…。ん~~~。」
葉子、目をパチクリと…、
「課長も…、まだ…、知らないんですか…???」
海江田、その声に、おちょぼ口にして、
「ふん。全然。」
いきなり虎一郎、
「んめ~~~。生き返る~~。」
そして海江田は匡子からグラスを…。
「サンキュ。」
輪湖、
「わっ。コイチ~~。」
その声に虎一郎、思わず、
「わお。…っと~~。」
そして海江田に向かって、
「課長~~。すんません。俺…。」
そんな虎一郎に海江田、
「かかかかか。おぅ。はは。では。」
ニッコリと。
虎一郎もニッコリと、
「お疲れ~~っす。」
海江田も、グラスをかざして、
「お疲れ~~。」
そしてビールを一口。
「ん~~~。」
葉子に、
「部長も知らないかも…。知ってたら、僕に話してるから…。」
その声に葉子、2度頷いて、
「ふんふん。」
「課長の両親って、どういう人なんですか~~???」
いきなり秀美。
「子供の頃からロンドンって聞きましたけど~~。」
そんな秀美に虎一郎、思わず目を真ん丸に、そして、頭の中で、
「…秀美ちゃん…。」
輪湖も、頭の中で、
「…凄っ。いきなり…。」
葉子は口の中でモグモグと…。
匡子は匡子でカウンターの中で、静観。そしてこちらも、頭の中で、
「…おっと~~。」
海江田は、そんな声に、僅かに考えるように、
「ふん。僕の両親。」
すると、便乗するように、今度は輪湖が、
「わっ。私も知りたい~~。ねぇ~~。」
秀美の左肩に右手を…。
海江田、
「僕の親父は…。ロンドンで、外資系の仕事~~。…グラソンタスカって企業で働いてる。日本にも参入しているけどね~~。」
葉子、
「確か…。製薬会社ですよね~。」
輪湖、
「うそ。葉子、知ってんの…???」
秀美、
「さすが。葉子先輩。」
虎一郎、自分のスマホで、
「凄ぇ~~~。世界100か国以上に拠点持ってる製薬会社~~。ヒョ~~。」
葉子、前を向いて、
「日本でもかなり知名度ある製薬会社。」
「確かに。」
海江田、
「テレビでもドキュメント番組にも出てるから。」
輪湖、
「へぇ~~。凄いんだ~~。」
秀美、
「じゃあ~。課長のおとうさんは、その製薬会社、長いんですね~~。」
「確かに。ふん。」
海江田。
「僕が生まれた頃には…ねぇ~~。既に。」
そして、匡子を見て。
匡子、ニッコリと、
「その通り。」
こんな私です。~選葉子(すぐりようこ)~ vol,171. 「このカウンタ―の席は空いてるんだよね~~。不思議~~。」
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庄司紗千「海をこえて」
※ご本人の承認の下、紹介させて頂いております。