その、茶目っ気たっぷりのVサインに、
ズボンのポケットに両手を突っ込んで、笑顔で口をへの字の宮越耀司。
「選稜平が来るぞ~~っつぅたら、いきなり目の前で万歳。絶対にサイン、ゲットしてやるって。かかかかか。」
稜平、
「そうでしたか~~。」
千鶴、3人に、
「それでは私は、これで…。」
一礼をして、ドアの外に。
稜平、
「元気で可愛らしい秘書さんだ~~。」
その声に宮越、
「えぇ~~。正にその通り。…って、私から言うのも変ですけど…。かかかかか。」
思わずドヤ顔の宮越。
「まっ。それでも、とにかく、物凄い勘が鋭く、しかも回転が速い。それに気が利く。」
稜平、
「凄いじゃないですか~~。」
「まっ。そんな訳で…。」
頭を撫でながらの宮越。
部屋の外に出て千鶴、僅かに頭を傾げて、
「あれが、選稜平の娘さん…。全く似ていない…どころか、何で…???ハーフ…???…なんだか…、物凄さ、感じるんだけど…。」
宮越、稜平とひとりの女性に、
「まずは、ようこそ、我がファームへ。」
両手の平を腰のあたりまで…。
「…つぅ~ても、代表は、堀越悦郎ですけどね~~。」
その声に稜平、
「何を仰います~~。そんな堀越代表の下、宮越先生のシニアパートナーが他にももう一人。それに他にもアソシエイトとパラリーガルを合わせて105名。凄いですよ~~。」
宮越、その声に、照れるように、
「にっ。まっ。そんな訳で…。」
そして、
「どうぞ、どうぞ、お座りください。」
稜平、
「おっ。申し訳ない。…あっ、その前に。」
葉子が持っている長細い紙の袋を…。
葉子、父に渡す。
稜平、その袋から1本のワインを…。
宮越、ニコニコと、
「おやおやおや~~。そんな…お気を遣わせて申し訳ない。頂きます。」
稜平、
「どうぞ、どうぞ。」
そして稜平と葉子、ゆっくりとソファに落ち着く。
宮越、女性を見て、
「こちらが、選先生の娘さん。」
稜平、ニコニコと、
「えぇ。」
葉子、目の前の宮越に、丁寧にお辞儀をして、
「初めまして、選葉子と申します。」
「選葉子さん。」
宮越も女性に頭を下げて、
「宮越耀司と申します。初めまして。…そして、今後共に、よろしく。」
稜平の顔を見て、
「ですよね。」
ニッコリと。
稜平、頭を下げて、
「ありがとうございます。」
「しっかし、奇麗なお嬢さんだわ。」
そこまで言って宮越、
「あっ、失礼。いえね。最初入ってきたときに、頭の中に、外国人女性って…。一瞬、ビックリしちゃいましてね。かかかか。失礼しました。」
宮越、ソファに座ったままで、両膝を合わせて、膝の上に両手を。コクリと頭を。
稜平、そんな宮越に、笑顔で、
「いえいえいえ。間違えられても、まっ、仕方がないんですけど…。仰る通り、見れば、しっかりとハーフみたいなんで…。」
葉子を見ての稜平。
「けれども、しっかりと、私の娘です。自慢の娘、誇れる娘です。」
その話に、ポーカーフェイスで口を真一文字に葉子、
「おとうさん。」
稜平、
「今日は、私の方が宮越先生に用事があるから、私が選ぶって、そのワインを…。」
宮越、ワインを見て、そしてふたりを見て、
「恐縮です。」
そして宮越、
「今、葉子さんは。あ、いきなり名前で失礼。」
その声に葉子、
「いえ。ありがとうございます。」
「仕事は…、どちらで…???」
葉子、
「あ、はい。百貨店扶桑で…。財務企画部で…。」
その声に宮越、目を丸く、
「へぇ~~~~。いやいや。そうでしたか~~。はいはいはい。百貨店扶桑~~。存じ上げております。うんうんうん。」
そして宮越、稜平に向かって、
「選先生。」
稜平、
「あっ、はい。」
ニコニコ顔で宮越、
「よろしかったら、葉子さんの事、どんな感じのお嬢さんなのか…。失礼ではあるんですけど…。許されるならば、お聞かせ…願いたい…のですが…。」
口を真一文字に、そして両眉を吊り上げての表情で稜平に。
そして、最後は、猫のような穏やかな表情で…。
稜平、
「は、はぁ~~。」
葉子は、既に、この法律事務所のエントランスで、
話しがどういう展開になるのかも凡その予想、そして覚悟はしていた。
稜平、
「そう…ですね~~。」
葉子を見て。
静かに僅かに俯くように葉子。
そして稜平、葉子が生まれる前の珍しい光景から話始める。
葉子は、その話を子供の頃から両親に何度も聞いてはいた。
宮越、
「へぇ~~。奥様のお腹の上で、蝶が…。羽を揺らして…。その後、一瞬消えて、光った…。…そして、葉子さんは…生まれた…。なんか、凄いですよね~~。」
稜平、
「かかかか。それからと言うもの…。」
その後、30分は、葉子の生まれてから、今までの事が稜平の口から…。
話の途中、何度も頷き、また、驚く宮越、
「え~~~ぇえ…???」
こんな私です。~選葉子(すぐりようこ)~ vol,124. 「まずは、ようこそ、我がファームへ。」
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庄司紗千 「雫音〜shizukune〜」
※ご本人の承認の下、紹介させて戴いております。