「…って言うかさぁ~。」
両腕をまっすぐに伸ばして、そのままテーブルの端を両手で握るように匡子。
獏、そんな匡子に、
「ん~~???」
「あんた、これからどうすんの…???」
「えへっ…???どうするって…、何を…???」
その言葉に匡子、
「んもぅ~~。とぼけないでよ。結婚よ、結婚。もぅ…35なんだから~~。その内、知らずの間に40超えちゃうよ。」
その声に獏、キョトンとした顔で…。
「ん…???ん~~~。まぁ…。そぅ…なるで…、しょうね~~。」
「な~~に、その、呑気な~~。まぁ、あんたほどのマスクだから、周りがほっとかない…かも…、知れないけど…。」
獏、顔を僅かに前にキョトンと、
「お褒めに預かり、恐縮でございます。」
「まっ。あんたの仕事…???営業推進部…???…営業って言うくらいだから、いろいろとひと様と会ったり、するんでしょうけど…。」
「まぁ…。ねぇ~~。」
「まっ、シカゴでの、その…、ナンシーさん…、まさか…、トラウマに…、なっている訳じゃ~ない、とは思うけど…。」
いきなり獏、
「はぁ~~あ…???…いきなり、何言い出すかと思ったら。」
そして右手を目の前で振りながら、
「ないない。ないないない。…もぅ…、2年…経ってるんだよ~~。それに、いつまでもそれ…引き摺ってたら、仕事…。」
その声に匡子、思わず顔を2回程前に、
「あん、うん、まぁまぁ…、そうなっちゃうよね~~。…で、ま、結局は、あんた…、シカゴでの役割、果たしたって事だからね~~。うんうんうん。」
匡子、体を小さく左右に揺らして顔を天井に、
「ふ~~ん。」
そして、
「おっと~~。」
隣には佐武郎がいる。
「びっくりした~~。サブちゃん、いたの…???トイレに行ったと思ったら。わお。びっくり~~。」
獏、
「かかかかか。」
匡子、今度は体を前に、獏に、
「ねね。どんな人だったの、その…、ナンシーさん。」
獏、キョトンとして笑いながら、
「えへ~~。」
店のドアが開く。
匡子、
「いらっしゃいませ~~。」
女性客。何やら、待ち合わせだったらしい。
佐武郎、トレイにおしぼりとグラスを…。そしてカウンターを…。
獏、
「彼女…か。ナンシー。」
匡子、
「うんうんうん。」
「ふ~~~。」
ビールを飲んで…。
「あれから…、2年…、経つんだよな~~。」
その頃、電車は三鷹駅に。
葉子、輪湖に、
「バイバ~~イ。」
輪湖、
「あ~~。うん。じゃね~~。」
葉子、ホームに降り立ち歩き出す。
「さて…と…。」
スマホにライン。
「…ん…???おかあさん…。はっ…???アイス…買ってきて~~???…忙しくって、買う時間、なかった~~???」
そして葉子、
「ふ~~~ん。お疲れ様。」
そして、
「あ~~い。分かりました~~。…と、送信。」
獏、匡子に、
「元々は…、彼女、ある社員の妹さんなんだ。」
「へぇ~~。」
「俺が、半年掛けて、窓際から復活させた社員の…。とにっかく、出来る奴。」
匡子、その話にまた、
「へぇ~~。」
「その…彼も、会社の情報漏洩で、窓際に飛ばされたんだ…けど…。しかも、その情報漏洩の主って、会社の役員。」
いきなり匡子、
「わお。」
「…で、半年掛けて、ようやく事態を収拾。ボスに叩きつけて、会社で、こういう事、起きてますけど…って…。そしたら、その後、その役員、地方に飛ばされて、その社員は復活できたと。…で~~。俺は、気にすんなって言ったんだけど、彼、気が済まないって、家に呼ばれてホームパーティ。」
匡子、ニッコリとしながら顔を僅かに右に傾けて、
「へぇ~~。」
「…で、その時に、その彼の妹って人に紹介されて…。その人が、ナンシー・フレデリック。」
「はぁ~~~。そういう経緯が…、あったんだ~~。」
「丁度、歳も同じくらい…???」
ビールを一口飲んで獏、
「俺…。まぁ…。ん~~。ロンドンにいた頃も、友達はいっぱいいた。でも、結婚って考え、全くなくって。」
匡子、
「まぁ…。その頃はまだ、あんた、学生だし。」
「…で、今度は海外、アメリカ、シカゴ。そこでだって、結婚なんて全く意識なかったんだ。」
途端に匡子、
「あら~~。そのマスクで、勿体な~~い。向うで会社の奇麗な人、いたでしょ。」
その声に獏、
「かかかか。」
笑いながら、
「ん、まぁ~~。ねぇ~~。確かに…。いるんだね~~。奇麗な人が~~。…しかも…、フレンドリーと来てるから。かかかか。」
そして獏、腕組みして、
「ん~~。…でも…。まっ、それ…、やっちゃうとさ…。いやいやいや。俺…、そん時、20代、前半だよ。片や、仕事…、任されてて…。」
いきなり匡子、
「あっ。そっか~~。」
こんな私です。~選葉子(すぐりようこ)~ vol,054. 「とぼけないでよ。結婚よ、結婚。もぅ…35なんだから~~。」
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