ドキドキ 医師、そんな葉子の顔を見て、クスクスと笑って…、由香里と稜平に…。
そして、腕組みをして、
「…先天性…と、言わざるを得ない…でしょうね~~。私も、葉子ちゃんを…、まっ、生まれた頃から知ってますけど…、とにかく健康そのもの。おとうさんもおかあさんもそうでしょ。生まれてこの方、風邪を拗らせたなんて…。しかも、病気など…。」

そうなのだ。他の子供と比べて、夜泣きすらなく、しかも、風邪以外にも、
それ以上の病気、ひとつも生まれてから、経験がない。体験したことがない。
逆に、両親としてみれば、葉子がこれから育っていく中で、
仮にでも、何かしら大病の恐れ…、それを心配する事にもなるのだが…。

そんな両親の大いなる不安を…、当の本人、葉子、しっかりと裏切って、
学生時代、一切の病気などなく…、現在、30歳。

…そして…、独身である。

学生時代から、そのハーフ的な容貌から周囲にチヤホヤされなかったと言えば噓になる。
確かに、小学から高校までは、確実に葉子自体、クラスの中では目立っていた。
視線が強かった。けれども、感情を全くと言って良いほどに表面に出さない葉子。
そういう視線にも一切動揺することなく平然と。
逆に、そういう姿勢が功を奏したのか、葉子の陰口を言う生徒の方が、
他の生徒から仲間外れにされるケースがあった。
そんな訳で、淡々と学生生活を過ごし…。周りからも視線を注がれはした…のだが…。
残念ながら周囲の女性たちには次々と彼氏が出来る中、何故か葉子には、
そういう異性は近づくことなく…。

葉子には母方の従妹と父方の従妹の2人の従妹がいる。
その2人共に、20代半ばで結婚している。

由佳理も稜平も親戚からは、
「葉子ちゃん、ねぇ~~。まっ、感情…一切、表に出さないからね~~。中々ね~~。難しいとこも…あるかも…。」

その声に共々…、
「あはははははは。」
笑うしかなかった。

しかも、大学在籍中に、事もあろうか葉子の成績を聞きつけて、
「是非、事務所に招きたい。」
と、言う政治家も現れた。

葉子、母と父にその事を聞かされて、
「なんで私、そんなとこに行かなきゃなんないの。残念ですけど、私、政治家、特に官僚と言うのが、まず嫌い。冗談じゃない。きっぱり断って、かあさん、とうさん。」

けれども、大学卒業までに、そういうケースは凡そ20件以上はあったかと…。

稜平、
「まっ、仕っ方、ないかぁ~~。ある意味、お堅い職業…だったら…、もしかして…、葉子、何かしら…、見染められるかな~~。ははははは。」
頭を撫でながらも…。

その声に妻の由佳理、稜平を睨むように、
「おとうさん。稜平~~~。」

稜平、ほくそ笑みながら、
「な~~んてね。」

そんな葉子、大学卒業と同時に、リクルート系の雑誌。
そして頭に浮かんだ数字数桁。その数字を、紙に貼り、カードにして、箱の中に入れ、
目隠しして並び替える。そこから導き出されたページと行で…。
「あっ、ここ。」

それが、これから葉子が社会の第一歩を踏み出すと言う、
大手百貨店扶桑(ふそう)であった。学歴としては申し分なし。
しかも、家族構成から、父親はベストセラー作家。
そして母親は著名なグラフィックデザイナーと言う事で、こちらも申し分なし。

…けれども…。当の本人が感情を表に出さない。
…と、言う…、イレギュラー。学歴では扶桑側がとにかく、ウェルカム。
そして容貌も接待には申し分なし。…なのだが…。
結果は、表舞台からは外されての、財務企画部。

由佳理も稜平も、
「へぇ~~。財務企画部。」
「…と言う事は…、まぁ…、昔で言えば、経理職かぁ~~。」

夫の声に由佳理、
「うんうんうん。」
けれども由佳理、葉子に、
「でもさぁ~~、葉子~~。どうして…、扶桑…、百貨店に…???…まっ、あなたが決めたと言う事は、何かしら…訳あり、なんだと思うけど…。」

そんな母に葉子、キョトンとして顔を右左に、
「ううん。全然。…だって、決めるの面倒臭いから、頭の中に浮かんだ数字、何個を目隠しにして、並び替えて…。…で、ページ開いて、何行か…。あっ、ここ。…って…。…そしたら、扶桑…。」
紅茶を飲みながら…。

その声に由佳理も稜平も、目をパチクリと…。
「えっ…???…へっ…???」
「わ~~お…。」

そこに、由佳理のスマホにライン。由佳理、メッセージを見て、
「爽太は、友達と飲み会~~。」

稜平、両膝を両手でパン。
「そっか~~。とにかく、社会人1年生。葉子、頑張れよ。」

葉子、目の前の扶桑のパンフレットを見ながら、父の声に、
「うん。」

こんな私です。~選葉子(すぐりようこ)~   vol,004.   「…先天性…と、言わざるを得ない…でしょうね~~。」

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Source: THMIS mama “お洒落の小部屋