将輝、柚花の後ろに着いて行くような感じで…。
歩きながら学校の話をいろいろと。そして凡そ20分程。
とある小さな洋風のカフェレストラン。
将輝、その店を見て小さく、
「クレマチス…。」
柚花、お店のドアを開けて、
「ただいま~~。」
その瞬間、将輝、
「ただいま…???」
柚花、将輝の左手を引いて、
「はい。入って、入って~~。」
カウンターから男性と女性、
「はい、おかえり~~。」
「いらっしゃ~~い。」
ニッコリとしながら。
将輝、僅かに顔を傾げて。
柚花、
「ここね。私の叔父さんと叔母さんの店なの。」
将輝、不可思議そうに、
「叔父さんと叔母さん…???」
柚花、将輝の手を取り、カウンターに。
「さっ、座って、座って。」
柚花に進められて、
「あ、あ~~、はい。」
カウンターの男性、
「こんにちは~~。」
その声に将輝、キョトンとして、
「こんにちは…。」
女性が将輝の右側から、
「はい。いらっしゃいませ。どうぞ~~。」
水の入ったグラスを…。
将輝、
「ど、ども。こんにちは。」
男性、
「まさか、柚花が、こんなイケメン、連れてくるとは…。かかかかか。」
カウンターの中に入った女性、
「ゆっくりして行ってね~~。」
その声に柚花、
「あん。ゆっくりとは…、できないよ~~。これから買い物に~~。」
「あっ。そっか。うんうん。」
柚花、将輝に、
「来週の日曜日、従姉の結婚式なの。そのお祝いのプレゼント。」
将輝、
「あ、はぁ~~。」
女性、
「誰かに付き合ってもらって買いに行きたいんですって。柚花には、友達もいるんだけど…。その友達もデートや何やらで、忙しいらしいの。」
将輝、
「は、はぁ~~。」
柚花、将輝を見てカウンターの中のふたりに、
「彼ね。高校のバスケ部。」
男性、その声に、
「へぇ~~。バスケ~~。」
そして目の前の男子を見て、
「ポジションは…???」
将輝、ポツリと…、
「ポイント…ガード…ですけど…。」
その声に、
「わお。凄いじゃん、チームの要。司令塔的存在。うん。」
瞬間、将輝、
「えっ…???」
すると男性の隣で女性、
「ふふ。この人、高校と大学でバスケ、やってたの。」
その声に男性、
「かかかかか。かなり、遠い昔だけど…。」
「でも、今だってテレビでバスケの試合、放送している時は、チャンネル、変えちゃうでしょ。」
そんな声に男性、思わず顔を傾げてニコリと、
「はは。まぁね。」
将輝、僅かに身を乗り出して、
「高校と…、大学で…???」
男性、ニコリと、
「うん。まぁ、そこそこ…、やってたかな~~。」
柚花、
「おじちゃんの高校って、どこだっけ…。」
その声に、
「興譲(こうじょう)高校。」
瞬間、将輝、
「えっ…。」
男性、
「…で、大学は…、都築大学。」
将輝、
「うそ。」
男性、
「えっ…???」
柚花、将輝を見て。
男性の隣の女性も目の前の男子を見て、
「うん…???」
柚花、将輝に、
「ねね、どうか…、したの…???」
そんな柚花の声には答えず将輝、まっすぐに目の前の男性に、
「す、すみませんけど…。…あの…、もしかしたら…、なんですけど…。」
男性、口を噤んでキョトンとした顔で、
「うん。」
将輝、
「あの…、弓狩…、智也…、と言う人…。」
間髪入れずに男性、
「あ~~。うんうんうん。僕、大学時代のバスケの監督。」
すると男性、
「ははは。いや、懐かしい名前…、出て来たね~~。」
けれども男性、
「へっ…???…でも、どうして、弓狩さんの事…???」
柚花は将輝の横顔を見て…。
カウンターの中の女性はコーヒーを淹れている。
将輝、
「弓狩…。今、僕の学校の、バスケの監督なんです。」
瞬間、柚花、
「へっ…???…あの人が…???」
ようやく柚花の顔を見て将輝、首をコクリ。
男性、驚いたような顔で、
「へぇ~~~。こりゃ驚いた。弓狩さん、今…。何…。じゃあ…。」
柚花と将輝を見て、さりげなく右人差し指でふたりを…、
「鴻上高校の…、バスケ監督~~。」
柚花、
「へぇ~~。凄~~い~。」
将輝も思わず表情を和らげて、
「うん。」
男性、
「いやいやいや。監督とは、ここ、何年も会ってないもんな~~。結婚式には、来てくれたんだけど…。」
女性を見て、
「あれ…以来…かぁ~~。」
腕組みしながら、
「へぇ~~。」
そして、
「もしかして…、まだスキンヘッドに、鼻髭、顎髭…???」
将輝、
「あ、あ~~。はい。」
「懐かしいなぁ~~。」
信じて…良かった。 vol.183. 小さな洋風のカフェレストラン
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