新年に入っての瑞樹家、例年のように蒼介の勤務先、
そして和奏の法律事務所からの年賀の人々で賑わっている。
その度に車椅子の理沙の去年の様々な話題で盛り上がる。
そんな中で、いつもの正月であれば和奏の故郷、
香川の実家に家族で帰省するのであるが、
今回は逆に和奏の両親が香川から上京。
理沙に会った祖父母、とにかく涙ながらに事故から入院、
そして現在までの経緯を話されて涙ぐむ。理沙も祖父母に会って感慨無量。
和奏、旧姓を錦織(にしきおり)と言う。
そんな祖父母も2日間と言う短い日程ではあったが香川へと帰って行った。
蒼介と和奏の職場上の人間関係を察しての事であった。
毎年、新年のほぼ一週間程度は蒼介も和奏も職場の人間関係で忙しい正月を迎えていた。
年始とあって、その期間は外でのバスケの練習も長時間は不可能。
けれども何とか僅かな…、30分程度でも、理沙自身、
欠かす事無く身体を動かす事に懸命。
杏美たちも年始の忙しい瑞樹家には中々足を運ぶことは出来ずに、
ただ、ただラインや電話での連絡のみ。
いつもであれば友達同士、街に出掛けていたのではあるが…。
栞奈、そんな理沙に、
「今回だけは、しょうがないよね~~。とうさんもかあさんもお客さんで忙しいし…。…それに…、オンラインも、ないしね~~。かかかか、私が免許持ってれば、車であちこち行けるんだけどね。」
そんな姉に理沙、
「かかかか。うんうん。」
笑いながら、
「…でも、ふ~~ん、仕方ないよね~~。学校も休み。部活もないし、スポーツセンターも休みだし~~。」
理沙の部屋で栞奈とふたり。
リビングでは蒼介も和奏もお互いの仕事関係の人々と賑やかに盛り上がっている。
その時、理沙のスマホに将輝から電話。理沙、
「あっ。」
栞奈、
「ふん…???」
理沙、自分のスマホの画面を姉に見せて…。
栞奈、画面を見て、
「おんや~~。」
理沙、何を思ったのか、舌をチロリと、口を真一文字に、そしてニッコリと。
スマホへの画面の一部を指でトン。そして耳へは当てずにそのままで、
「はい、私~~。あけまして、おめでとうございます。」
瞬間、栞奈いきなり口に両手を…、そして、
「ぷっ」
スマホからの声、
「おぅ。あ、あけまして…。」
その声に理沙、
「かかかかか。無理しなくていいよ。」
思わず栞奈、ケラケラと、
「くくくく。将輝君らしい~~。」
将輝、
「えっ…???おま…、栞奈さん…、いるんだ…???…で、スピーカーって…???」
栞奈、将輝に、
「あけまして、おめでとう~~。」
将輝、
「あっ、あけまして、おめでとうございます。」
途端に理沙、
「わっ。お姉ぇにはちゃんと言うんだ~~。」
栞奈、再び、
「かかかかかか。」
将輝、スマホ越しに、
「あのさ。」
理沙、
「ふん。」
「いきなりで、悪いんだけどさ、これから、出れるか…???」
理沙、栞奈を見て、
「これから~~???」
栞奈、
「わ~~お。」
理沙、
「ちょっと…、これからすぐは…、さすがに…。おとうさんもおかあさんも…今、お客様…。」
その瞬間、将輝、傍にいる人に話すように、
「お客さんだって。」
小さな声で、「そっか。」と、聞こえる。
すると、声が変わって、
「あ~~。もしもし、理沙さん。丈師です。」
理沙と栞奈、
「わっ。おじさん。」
いきなりスマホに、
「あけましておめでとうございます。」
スマホからは丈師、
「あけましておめでとう。うん。今年もよろしくお願いしま~~す。」
そして流美と麗亜の声も、
「あけましておめでとう。」
理沙と栞奈、
「あは。うん。あけましておめでとう。」
丈師、
「多分、理沙さんのおとうさんとおかあさん、正月で忙しいと思ったんだ。…でな。今回は俺が迎えに行く。」
瞬間、理沙と栞奈、
「え~~???」
「…と、言う事で~~。急遽…。」
リビングで理沙、両親に。
蒼介、
「へぇ~~。丈師さんが~~。」
和奏、
「うんうん。丈師さん、そういうんなら、甘えちゃいましょう。私たちは、もぅ~~。アルコール、入っちゃってるから。」
「そうだね~~。」
蒼介の隣で摘まみを食べている男性、
「ごめんね~~、理沙ちゃん、おとうさんとおかあさん、独占しちゃって~~。」
その声に理沙、照れるように両手を前で振り、
「いえいえいえ。」
その時、玄関のチャイム。
理沙、
「あは。」
信じて…良かった。 vol.160. 新年に入っての瑞樹家。
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