その後もメンバー全員に何らかのモーション。
尚哉はその行為に、
「喝~~っ!!!」
和真は、
「あんたらさ、それ、甘いの。」
己龍、
「そんな何回も同じ手が…、かかかか。」
将輝は将輝で、
「おぃおぃ、つまんねぇことすんなよ〜〜。」
逆にフェイクで相手が将輝の動きに着いて行けない。
そして馨、仲間からの絶妙なパスで体勢を崩しながらもスリーポイント。
理沙、試合を見ながら、拍手で、
「凄い、凄〜〜い。」
観覧席でも杏美達、
「うそだ〜〜〜。」
一樹も、顔を揺らしながら、
「いやいやいや。高校生があんな事、出来るって〜〜。何者なんだ〜〜、弓狩監督〜〜。かっかかかか。」
丈師、
「将輝の話では、部員には殆ど、指導しない、話さない…、そうです。」
腕組みしながら。
その声に一樹も蒼介も丈師の方を、
「えっ…???」
麻都香たちも同じように。
「自分が何か言ったら、それが先入観になってしまう。そうすると、自分たちの試合が出来ない。だから、どうしても、部員たちでそれ以上できない。そんな状態になった時にだけ、ポツリと助言、するそうです。」
その話に、その場、全員、沈黙。
「将輝の話だと…。」
丈師が左を見て話し始める。
和奏、試合を見ながら、
「凄〜〜い、あんな体勢でも出来るんだ〜〜???」
涼香、
「えぇ。そのための練習も…。以前、ファール攻めにあって散々な目に遭ったんです。その時に監督が、ファールを受け止めるゲームをしろって。」
「ファールを受け止めるゲーム…???」
「えぇ…。けど、ファールを受け止めるゲームをしても、今度は体が持たない。」
「…ですよね〜〜。」
「だから、今度は、どんなファールが来ても、それをすり抜けて前に進む方法。相手も巧妙にファールを仕掛けてきますから。」
和奏、
「うんうんうん。そっか〜〜。」
第3クォーター、残り2分。
蒼介、
「…日本大学バスケの強豪、都築(つづき)大学、その大学時代、1年の時からレギュラー入り…。」
一樹、
「ポジションはポイントガード。大学4年間で、大学バスケリーグで2度の優勝、2度の準優勝に貢献…かぁ〜〜。」
「…で、卒業後は監督に就任。」
麻都香。
丈師、
「まっ、私も、大事な息子を任せている訳ですから、ある程度、調べたんですけど…。」
蒼介、そんな丈師に顔を向けて、
「えぇ。」
「どうやら、監督になって、余りに厳格で無理な指導で…、それが祟ってひとりの部員に怪我を負わせてしまったらしい。そのせいでその選手、選手生命を絶たれてしまったそうです。」
その話に麻都香たち、
「え〜〜〜〜っ!!!」
一樹と蒼介、
「ん〜〜〜。」
丈師は続ける。
「その責任から数年、弓狩監督自身、バスケ界からは姿を消したらしい。…でも、ある切っ掛けで、鴻上高校のバスケ部監督を任せられた…、と言う。」
蒼介、
「ある切っ掛け…???」
「多分、学校側のトップに、弓狩監督を探し出した誰かが、いたんでしょう。昔から、鴻上バスケは都内でも強豪ですから。前の監督は体の不調を訴えてのリタイヤ。」
蒼介、
「えっ???そうだったんですか。」
「えぇ。もぅ。何年も前です。」
第3クォーター終了。
戻ってくる部員たちに理沙、笑顔で拍手、
「凄い、凄〜〜い。」
和真、
「理沙ちゃん、見てんだ。みっともないゲームは見せないよ。」
ニッコリと。
理沙、笑顔で、
「はい。」
尚哉、
「点差は…縮まってねぇな。」
涼香、
「うん。多分、向うさん、ファールしながらのシュートで…。」
「あぁ…。」
「しっかし、よくもまあ、あれだけのファール。しかも、審判にも…。ある意味、や〜〜るもんだぁ。」
己龍。
「勝ちたいって事で、手段、選ばず、なんだろうな〜〜。」
和真。
涼香、
「…けど、気を付けて〜〜。そういうファールをしてでものし上がってくる。他にも何か、あるかも…。」
その声に尚哉、
「あぁ〜〜。」
そして第4クォーター。
瞬間、鴻上サイド。
「…ん…???」
波浦高校、選手交代である。
鴻上サイド、誰もが、
「えっ…???」
将輝、
「なんだ…???…あの、ヒョロっとしたの…???…動けんの…???」
コート上の鴻上、みな頭を傾げて。
そして…。数秒後、その選手にパスが回ったかと思うと、
いきなり鴻上のディフェンスを交わしてシュート。
弓狩以外の鴻上メンバー、身を乗り出して、
「早っ!!!」
「ファールを受け止めるゲーム…???」
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庄司紗千 きっと大丈夫
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