「いやいやいや。結構入ってるもんだなぁ~~。人~~。」
一樹である。その一樹の右隣りには蒼介。そして一樹の左隣りには杏美。
そして芙美。蒼介の後ろに麻都香、麻理絵、雅美、そして摩季。
通路を挟んでの席には麗亜、そして丈師と流美。
蒼介、
「へぇ~~。麗亜ちゃん、もぅ、杖なくとも…。」
麗亜、その声にニッコリと、
「はい。」
丈師と流美もにこやかに。
そして丈師。…多分、これで4回目だろぅ、左側を向いて、
それぞれに頭を下げて、
「今回は、将輝の事、本当にありがとうございます。」
その声に麻都香、両手の平をひらひらと、そして笑顔で、
「おじさん、これで4回目。気にしない、気にしない。はは。」
そんな麻都香を見て、他もニッコリと頷く。
麻理絵、
「でも、こちらこそ、ありがとうございました。逆に頂いちゃって。」
流美、いきなり左手を振って、
「ああ、いえいえいえ。それだけは受け取ってもらわないと。うんうんうん。ほんと、ありがとう。」
蒼介、
「おっ、始まった~~。」
杏美、
「理沙は、下で見てるんだ~~。」
蒼介、頷いて、
「うん。弓狩監督から言われて。」
一樹、
「僕も…、一度しか会った事、ないんですけど…。どんな人…、なんですかね~~。その、弓狩監督。」
その声に蒼介、
「理沙の話だと、なんだか、話しやすいとか。まっ、家内の方は、専らマネージャーさんと話してるみたいですけど…。」
「へぇ~~。」
ホイッスル。
そして、ものの1分もしないうちに、ゴールの真横から馨、スリーポイント。
それぞれが、
「早~~~や。」
そして、各々、
「す~~ごい。」
「すご~~。」
「や~~るな~~。」
弓狩の隣でゲームを見ている理沙、
「うんうんうん。いい、いい、いつもと同じ調子~~。」
この日、試合会場に入っても、試合直前になっても、
殆ど弓狩からの部員への声は出ていない。部員たちには常に尚哉と和真、
そして涼香からの声のみ。むしろ弓狩は理沙との単発的な言葉があるだけ。
その声に理沙もニッコリと。点数は序盤から開いていく。その差、15点。
一樹、頭を掻いて、
「さすがです。とにかく、早い。しかも、正確と来てるから。」
隣の杏美も、
「うんうん。初めて、バスケのこういう試合見たけど、凄い。それに、さすがだわ、将輝君と馨君。」
麻都香、
「全くミスなんて、ないもんね~~。とにかく攻めてる。」
蒼介と一樹、一緒に、
「鴻上の、ポイントガード。」
蒼介と一樹、共に顔を見合わせて、
「えっ…???」
そして、
「はははは。」
「いやいやいや。」
その瞬間、いきなり観客席、
「お~~~~。」
理沙、
「あは。」
将輝の変形シュート。床に着地しての体を一回転して、両足を床にトン。
一樹、
「かかかかか。」
蒼介、
「うそだろ。」
麻都香、
「なになになに、今の…???有り得ないでしょ、あの体勢で、入るぅ~~???…しかも、どんだけの滞空時間~~。」
麗亜、
「お兄ちゃん、やった、やった~~。かかかかか。」
将輝、部員たちとハイタッチ。
理沙、
「かかかか、決まった~~。」
弓狩、
「ん~~~???」
「いっつも、ウチで、練習してたんです。」
「ほぅ~~~。」
序盤から点数は開いてはいたものの、第1クォーター、第2クォーター。
その点差は変わらずのままのシーソーゲーム。
丈師、
「20分のハーフタイム、ですか~~。」
腕組みをして、
「いい試合になりそうだ~~。」
理沙、部員たちが戻ってきて、
「尚哉先輩も、和真先輩も、頑張れ。いつもの調子、うんうんうん。」
尚哉、そんな理沙に、
「かかかかか。理沙ちゃんに言われちゃ、頑張るしかねぇな。和真。」
和真、理沙に、頭を下げて、敬礼を、
「了解です。」
弓狩、いきなり、
「且元君。」
尚哉、
「あ、はい。」
弓狩、尚哉に、
「敵さん、何を仕掛けてくるか分かりませんよ。気を付けて。」
相手チームは波浦(なみうら)高校である。あまり知名度のある高校でもない。
尚哉、弓狩の声に、
「あ、はい。」
和真も、尚哉に、
「監督、何て…???」
尚哉、
「あ、うん。敵さん、何を仕掛けてくるか分かりませんよ。気を付けてって。」
和真、
「波浦…。はて…???」
相手チームを見て、
「それほど、特に印象のある人物は…。」
理沙、弓狩に、
「監督…???」
弓狩、そんな理沙に、
「ん~~~???ははははは。もしかしたら、面白いものが見られるかも…。」
信じて…良かった。 vol.153. 蒼介、「おっ、始まった~~。」
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庄司紗千「海をこえて」
※ご本人の承認の下、紹介させて頂いております。