ドキドキ そして理沙、
「このままじゃ、おかあさんも子供達も可哀想過ぎる。」

その声に蒼介、
「理沙〜〜。」

和奏も、
「理沙〜〜。」
語尾を上げて。

栞奈も、
「理沙…。」

理沙、
「おとうさん。」

蒼介、数秒、理沙の顔を見て。…そして、新聞を四つ折りに畳んで傍に置いて、
「理沙は…。それで、いいんだな。」

理沙、何も言わずに頭をコクリと。

蒼介、コーヒーカップも横にずらして、
「法律的には、加害者が何らかの状況で、責任能力がなくとも…。まぁ。今回の場合は、うつ状態になって、事故の事すら記憶にない。そしてまた、今後も改善する見込みは…。…と言うか、全く分からない。その場合は、配偶者、またはその他、家族が賠償を負う事になる。…んだけど…。」

そんな夫の声にキッチンの和奏も、テーブルに出てきて理沙に、
「うん。そうなの。だから、おとうさんもおかあさんも、検察と弁護、仕事しているところでも相談しながら…。」

話を聞いて栞奈、
「へぇ〜〜。そうなんだ〜。」
そして栞奈、
「理沙〜〜。」

理沙、
「私…、あんまり難しい事は分かんない。分かんないよ。確かに、轢き逃げしたのって、いけない事だよ。私もこういう体になって。」

理沙の声に3人共に、口を噤んで…。

「実際、私、事故にあって、自分がこれからどうなるのかって、全く分かんなかった。物凄い、不安だった。みんなにも困らせた。みんなに心配させた。」

ただただ理沙を見つめる蒼介。栞奈、そして和奏。

「私、すんごい、怖かった。怖かったけど…。…なんだけど…。私、みんなに守られてきた。学校の友達。そして病院で知り合った麗亜ちゃん、将輝君。」

蒼介、そんな理沙に小さく頷く蒼介。

「そして私、今、体、こんなんだけど、新しい目標、出来たから。」

栞奈、
「理沙…。」

「私…、もしかして、罪を犯した人が…、罪を認めて、それを…、何て言うかな…、罪を認めて、それを償うって言うんだったら、私は、それに従う。…って言うか、それが本当だと思う。」
そこまで言って理沙、首を捻って、
「従うって…、言うのも…変だけどさ…。…でも、その…、私を轢いたその人。今…。…それを考えると、私…、やなんだ。いつまでも、ず〜〜っと、引きずるような感じで…。…だから…。…そういうの…、私、やだから。」

そんな理沙の声を聞いて和奏、2、3度頷き、
「うんうん。」

蒼介は腕組みして、そして、
「そっか~~。」

栞奈も父の顔を見て、
「とうさん。」

蒼介、栞奈の顔を見て、
「うん。」
そして妻を見て、理沙を見て。
「実際、とうさんも、あの人を見て…。あっ…。まっ、いっか~。名前…出しても…。」
妻を見て。

和奏も顔をコクリと。

「その人…、吉武さんって人なのね。」

栞奈、
「吉武…。」

「うん。…とうさん、その人見たとき、完璧に頭、ぶん殴られた感じで…。思いっきり、参った~~。ってなって…。…その人、全く焦点の合わない目の状態。今、何故ここに…。警察なんだけど…、それすら分からない。」

和奏もその声に、
「うんうん。」
そして、
「かあさんもそれを見て…。とにかく理沙にも話さないとってなって…。」
和奏、
「理沙は、それでいいのね。」

理沙、母を見て、頷く。

「今、理沙が言っている事。それって言うのは、吉武さんと言う人、理沙を轢き逃げしたんだけど…。通常なら、その時点で事故として処理されて、それ相応の処罰。そして賠償請求が発生する。」
そして和奏、
「そして、今回の場合は、吉武さん、その奥さん。もちろん子供達の母親である訳なんだけど…、その彼女の場合、事故を起こした責任能力を追求する事が出来ない。事故後にうつ病となり、過去の記憶がない。そしてその症状の改善も今後は期待できない。」

母の話を聞いている理沙と栞奈。

「当然、事故の場合、その影響は家族全員に関わってくる。その事を踏まえた上で、今の理沙の話は、賠償請求はなしにして、示談と言う方向にと言う話になる。…示談、つまりは、被害者となっている理沙、あなたが、加害者、吉武さんね。彼女を許すと言う事。」

蒼介、和奏の話を聞きながら2、3度頷く。

和奏、
「そして、被害者の理沙としては、加害者の吉武さんには処罰を望んでいないと言う事。分かる…???」

理沙、母の話に口を噤んで…。

信じて…良かった。   vol.137.   「おかあさんも子供達も可哀想過ぎる。」

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庄司紗千「海をこえて」
※ご本人の承認の下、紹介させて頂いております。

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Source: THMIS mama “お洒落の小部屋