蒼介、神妙な顔のままで…。そして腕組んで、
「母親が、子供たちを分からない。そして、その子供たちは、今度はそんな母親を怖がる。…けど、怖がる前に子供たち。物凄いショックだよ。泣き喚いただろうな~~。母親が、母親でなくなってしまったんだから。」
いきなり栞奈、
「とうさん…。」
理沙は車椅子の中で頭を下にしたままで…、泣きながら…。
そんな理沙の背中をさする栞奈。
和奏、
「理沙~~。ごめんね~~。あなたが悲しい思い、するの、おとうさんもおかあさんも分かってた。…分かってたけど、理沙とお姉ぇには、話さなきゃって。」
その声に理沙、頭をコクリと。
「おとうさんとおかあさんだけで、決められる問題じゃなかったから。…だって、一番は、理沙なんだから。事故に遭って、治療受けて。そして車椅子に乗って。…だけど、結局は…。」
栞奈も目を赤く、そして頬に涙。
「理沙~~~。」
蒼介、
「悔しいよ。悔しいんだけどさ~~。」
理沙、泣きながら、
「ごめん。」
顔を下に向いたまま車椅子を後ろに、そしてテーブルから外れて部屋の方に。
栞奈、
「理沙~~。」
和奏、栞奈を見て、そして蒼介を見て、頭をコクリと。蒼介もコクリと。
和奏、
「そ~~っとしておいてあげましょ。…もしかしたら、これが、今の理沙にとっての、事故からの…、最後の試練。」
栞奈、
「かあさん。」
「お姉ぇだって、分かるでしょ。理沙の事、愛してるから。」
「そりゃ、そうだけど~~。」
蒼介、
「俺たちは、とにかく理沙を見守る事しかできないさ。こうしろ、あぁしろなんて、出来ない。ただ、理沙が…、間違った結論だったら、心を壊さないように、質す。…なんじゃ、ないかな。」
そんな父を見て栞奈、口をへの字にして、頭をコクリ。
和奏、
「お姉ぇ…。」
そんな母に栞奈、
「うん。大丈夫、私の大切な妹だもん。」
「ありがと。」
栞奈、ゆっくりと椅子から立ち上がり、理沙の部屋に。
理沙は、ベッドのそばで、車椅子に乗ったままで泣いていた。
その理沙の背中から栞奈、理沙を抱き締めるように、
「理沙~~。」
理沙、
「うっ。うぅぅぅぅ。お姉ぇ…。」
栞奈、左手で理沙の頭を撫でて、
「うんうん。」
そして、
「もぅ…、休んじゃえ。」
理沙、頭をコクリと。そして上体を下に。
ペダルを立てて後ろに回して。栞奈はベッドの布団とタオルケットを。
理沙、アームサポートをぐっと引いて。スライドボードをベッドと自分のお尻の下に。
そして、自身でスルっと。両膝の裏を両手で持ち上げてベッドに。
栞奈、理沙にタオルケットと薄手の布団を…。
理沙、
「ありがと。」
栞奈、ニッコリと、
「うん。」
そして、
「…で…???…どうだったの、家庭教師…???」
いきなり目をパチクリの理沙、
「あぁ。……。」
そして目を右左に、
「追加注文あった。」
栞奈、
「追加注文~???」
そして、
「なにそれ…???」
「将輝君、馨君もって…。」
栞奈、いきなり、
「はぁ~~~あ…???」
2、3秒フリーズ。そして両手をパン、
「ぷっ。かっかかかかか。え゛~~~ぇ…???」
理沙、
「あの、バカ。」
「かかかか。何なら、私も手伝ってあげようか~~???」
理沙、その声に、
「あ~~。それ、いいかも~~。現役大学生~~。」
「時間があったらね~~。バイトの兼ね合いで~~。」
理沙、笑顔になって、
「うん。」
「じゃね~~。おやすみ~~。」
「うん。おやすみ。」
そして栞奈、リビングに。
「理沙、今、寝た~~。かかかか、家庭教師の話したら…、ふふ。」
和奏、ニッコリと、
「うん。ありがと。」
蒼介、
「へぇ~~。あぁ、今日から…。」
和奏、ニッコリと、
「うん。」
栞奈、また椅子に駆け寄り、椅子を引いて座り、
「ねね、将輝君の他に、馨君も~~???」
蒼介、
「は…あ…???」
和奏を見て…。
和奏もニコニコと、
「うんうん。私も帰って来てビックリ~~。馨君もいるから~~。」
栞奈、
「追加注文なんだって~~。」
「かかかか。うんうん。アズちゃん、そう言ってた。」
蒼介、
「なんと、なんと~~、かかかか。…って事は、馨君が追加注文…???」
栞奈、頭をコクリ。
「…で、理沙、将輝君、あのバカって。」
蒼介、
「あ~らら~~。」
和奏、
「さてさて。どうなりますか~~。」
蒼介、
「とにかく。この件は、理沙の反応。そして声を聞くしか…。僕らがどぅこぅは…。」
栞奈、
「分かった。」
和奏も、
「うん。そうだね~~。」
信じて…良かった。 vol.134. 栞奈、「うん。大丈夫、私の大切な妹だもん。」
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