ビールを飲んでいきなり丈師、
「ぶっ。ぶほっ。かっ。かっ。かっ。ごほっ。ごほっ。」
隣で流美、口に箸を付けたまま目をパチクリ。
丈師、
「うぇ~~。やべぇ~~。」
麗亜、
「お兄ちゃん、凄~~い。羨ましい~~。」
丈師、口を左手で拭いながら、
「将輝、おま、今、何てった…???」
流美はまだ将輝を見つめたままで…。
将輝、
「…だから…。その…。」
流美、
「理沙さんちで、家庭教師…。」
丈師、
「おま。中間試験、どぅなってんだ~???」
麗亜、
「かかかか。お父さん、期末しか、成績、気にしないもんね。」
将輝、
「けどさ~~。これって、俺から言い出したんじゃねぇからな~~。アズさんから言い出して。それがトントン拍子に…。」
流美、
「へぇ~~。アズさんって…、あの、杏美ちゃん…???」
丈師、
「なんだ、流美ちゃん、知ってんのか…???」
「ふん。理沙さんの友達。一番の友達かな。ねぇ、麗亜~~。」
麗亜ニッコリと、
「うん。」
丈師、
「…に、してもだ。おま、将輝、瑞樹さんに散々お世話になっといて、今度は何か、家庭教師。」
その声に将輝、
「いや。だって。仕方ねぇじゃん。期末…、もし駄目だったら、試合、出してもらえねぇんだから。」
麗亜、
「えっ…???そうなの…???」
流美、
「わお。」
丈師、
「おまえなぁ~~。」
「あ~~ん、もぅ~~。」
いきなり麗亜、
「お兄ちゃんばっかり、理沙お姉さんち~~。」
流美、
「かかかかか。お姉ちゃんがまた連れてってあげるよ。」
「しっかし…。妹の麗亜は…、成績上、全く問題なし。…それなのに…。あ~~ぁあ。誰に似たんだか~~。」
その声に流美、
「そればっかりは~~。」
丈師を見て顔を傾げて、
「当然、姉さんじゃ、ないわよね~~。自慢じゃないけど…、しっかりと、六大学の慶明(けいめい)、出てますから~~。」
丈師にニッコリと。
その顔を見て丈師、口をへの字にして、
「悪かったですね~~。どこぞの短大出で~~。」
麗亜、
「かかかか。お父さん、やぶへび~~。」
「な~~に~~。じゃ、将輝、それで~~。ここ数日、な~~んか様子が変だなぁ~~って、思ったけど。中間試験。」
流美。
将輝、ムスッとしたままでご飯を食べながら、頭をコクリ。
「まっ、とにかく。」
丈師、いきなり強調して、
「なんだ…。そうなってしまったんなら、しっかりと。とにかく、瑞樹さんには迷惑掛けないように。とうさんからもお礼言っとくから。」
そして丈師、
「しっかし。凄ぇよな~~。検察事務官に、元パラリーガルって…。いやいやいや。」
流美、
「な~~に言ってんのよ~~。義兄さんだって、消防署の分署長よ~~。さっすが、姉さんが惚れた男~~。」
その声に丈師、ニッコリとして、
「そお…???」
麗亜、ニコニコしながら、
「かかかか。」
「とにかく将輝、瑞樹さん、失礼のないように。」
ビールをグラスに注いで。
将輝、
「分かってるよ~~。」
流美、
「因みに、将輝~~。中間試験~~。」
将輝、数秒の沈黙。
「赤…点…、いかない。」
瞬間、丈師、飲んだビールを、
「ぶ――――――――っ!!!」
流美、
「え――――――――っ!!!」
麗亜、
「お父さん、汚いよ~~。」
流美、左肘をテーブルに、額に付けて、
「だめだこりゃ。」
その夜、ベッド上で和奏、
「うそっ!!!…そんな…。」
蒼介は枕の上に両手を組んで、その上に頭を。
「ふ~~。」
「うつ病って…。しかも…、記憶障害…。」
顔をあちらこちらに、和奏。
「ん…、じゃあ、何…???事故の事…、それ以上に、過去の事すら、もぅ…。」
蒼介に顔を向けて。
「あぁ。子供達にも無表情って…。返す言葉もなかった。最初っから最後まで、ポカ~~ンと…。」
和奏、
「あ~~~。」
いきなり頭をがっくりと、そして髪を前にバサリと。額に左手を当て、
「そんな~~。」
和奏、そのままの状態で…。そして数秒後、すすり泣くように、
「理沙が…、理沙が可哀想。あんなにまでなって…。しかも…。」
「久我さん、言ってた。専門の医師からも改善の見込みは…、困難に値する。」
空を見ながら…。
「責任能力すら、見込めないって…。なんでだよ。」
そして蒼介、
「理沙に…、何てったら。」
和奏、
「轢き逃げよ、轢き逃げ。…しかも、その足で平然と、鹿児島…???…で、何…???家族にも事故の事は…一切。」
「あぁ。」
「冗談じゃない。こっちは…。こっちは…。もぅ…、歩けないの。」
信じて…良かった。 vol.129. 丈師、「将輝、おま、今、何てった…???」
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※ご本人の承認の下、紹介させて頂いております。