その声に振り向いて将輝、
「あっ。」
理沙、ようやく笑顔になって、
「あは、はい。」
麻理絵、
「どうしたの~~、そんな大きな声で~~口喧嘩~~???」
理沙、瞬間、
「口喧嘩…じゃ、ないよ~~。ただ~~。」
杏美、腕組みして、
「な~~んか、いつもとは全く、感じ、違っちゃってるように見えたけど~~。どうした、どうした。」
理沙、
「わ、私は…、別に…、いつもと…、変わんないけど…。」
バッグを手にアプローチを歩きながら和奏、コートの方を見て、
「あ~~、アズちゃん、麻理絵ちゃん、いらっしゃ~~い。」
杏美と麻理絵、
「あは。おはようございま~~す。」
和奏、
「うんうん。後でおやつね~~。」
その声にふたり、
「あ~~、は~~い、ありがとうございま~~す。」
杏美、
「…と、言う事は~~。おぃ、どうした、菅田将輝~~。」
将輝、その声に、
「えっ…???」
口を尖らせて理沙、
「なんか、変だよ~。昨日も~~。」
麻理絵、
「えっ…???昨日も…???」
「うん。おとうさんとおかあさんも、将輝君、なんだか様子…って…。」
杏美、右目を歪ませて、
「ん~~。何かあった…???」
将輝を見て…。
「もしかして…、理沙より他に、好きな子…出現…とか…???」
瞬間、理沙、
「はぁ~~あ…???…何言ってる、アズ~~。」
形相を変えて。
「誰がっ!!!」
すぐさま両手を叩いて大口を開けての麻理絵、
「かっかか。」
理沙、
「マリ~~~???」
瞬間、麻理絵、
「かかかかか。ごめん、ごめん。はは。やたらと理沙、ムキになっちゃうから、可笑しっくて。」
そんな麻理絵に理沙は歌舞伎の見得のような顔。
杏美は将輝を見ながら…。
将輝、ボールを持ったままで、
「いや…、俺は…。そんな…。」
「何言ってるぅ。言っちゃいなよ、何か、思うところ、あるんならさ~~。」
麻理絵も、
「そうだよ、そうだよ。…じゃないと、理沙、一緒に練習するのもやりにくくなっちゃうよぉ。将輝君がいなかったら、理沙、車椅子バスケ。」
理沙、そんな麻理絵にまた見得の…、
「にゅ~~。」
将輝、ボソリと、
「この…前の…。」
杏美、
「この…まえ…???」
そして、
「何か、私ら…、将輝君に…???」
瞬間、将輝、目を真ん丸く、
「え゛っ…???…いやいやいや。そんなんじゃ。」
杏美、麻理絵と理沙と顔を見合わせて…。
「???」
将輝、思いっきり息を吸って、吐いて。
「この…前…、の、中間…。」
3人同時に、
「中間…???」
麻理絵、
「あ~~。もしか…して…。中間試験の事…???」
瞬間、杏美、
「はっ…???」
将輝は、頭をコクリと…。
杏美と理沙は頭をカクン。
「???」
麻理絵、
「中間試験が…???」
将輝、口をぐんにゃりと、そしてへの字にもして、
「俺んとこ。鴻上…。」
3人、
「うん。」
「期末でさ…。最低でも、赤点…、クリアしないと…、試合…、出させてもらえない。」
その声に理沙、麻理絵、杏美、3人、一瞬に固まる。目は点。口を噤んで。
数秒…。
口火を切ったのが、杏美、
「ぷっ。」
そして理沙、
「くっ。」
そして麻理絵、小さく、
「かっかかか。」
そして3人、顔を見合わせて、
「か――――――っかかかかか。」
その声が家のリビングの方にも、和奏、慌てて、
「どうしたの~~~???」
杏美、すぐさま、
「あっ、なんでもありませ~~ん。」
和奏、頷き、
「うんうんうん。」
麻理絵も理沙も、声を出さずに、お腹を抱えて…。今にも涙出しそうな。
「かかかかか。」
杏美、将輝を見て、
「うそでしょ。」
将輝は将輝で、むすっとした表情で…。
杏美、
「…で、将輝君の…、結果…は…???」
将輝、仕方なく自分の中間試験の成績を…。
話を聞きながら次第に表情が変わる杏美と理沙、そして麻理絵。
将輝、
「…と、まぁ…。」
麻理絵、
「あんたねぇ…。」
杏美、
「あの、さぁ~。」
理沙、
「はぁ…。」
麻理絵、腕組みしながら、
「このカスッ、ボケッ。何やってんのっ!!!」
杏美、よろめきながら麻理絵の左肩に…。
「だめだ…、眩暈してきた。」
理沙は理沙で、疲れたような顔で、右目を歪めて、
「あ…、赤…点、以下。…って。」
杏美、いきなり、
「何さらしとんのじゃい、えぇ~~っ!!!あぁ!!!」
将輝をどつくような姿勢で…。
理沙、いきなり肩をガックリと。
「それ…でか…。そりゃ、機嫌も悪くなっちゃうか~~。」
自分のボールをドリブルして車椅子を動かし、そしてシュート。ネットにザシュ。
瞬間、杏美も麻理絵も、それを見て、いきなり、
「入った――――――っ!!!凄~~~い、理沙~~~。」
理沙、ふたりに振り向いて、
「かかかか。」
信じて…良かった。 vol.124. 「そんな大きな声で~~口喧嘩~~。」
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庄司紗千 花笠音頭
※ご本人の承認の下、紹介させて戴いております。