いつの間にか理沙、車椅子の上でカクン。
そんな理沙を見向きもせずに将輝はスマホのイヤホンで動画を…。
やがて電車は三鷹。
将輝、
「おっと~~。ここまで来たか~~。」
そして、
「お~~い。」
その声に理沙、いきなり首を…。すると、
「あぃた~~~。すぅ~~。」
「…んなふうに寝てっからだろ。」
そんな将輝に理沙、いきなり顔をぐんにゃりと、
「む~~~。」
すると将輝、きょとんとした顔で…。
右手中指を自分の顎に。そして指をトントンと。
瞬間、理沙、
「うそ。」
いきなり両手で自分の顎を。
それを見て将輝、
「んな訳、ねぇだろ。三鷹まで来たぞ。」
理沙、いきなり自分のバッグを将輝に投げる構えで、
「んもぅ~~~。」
再び電車は動き出す。
そして数分後。
将輝、
「おし。」
席から立ち上がり、進んで車椅子のハンドルを…。
理沙はロックを解除して、開いたドアに将輝、背を向けて。
「ゆっくり行くぞ。」
理沙、
「うん。」
完全にホームに車椅子が、
そして、そこからは理沙が自身で車椅子を。
改札で待っていた和奏、ふたりを見るなり右手を上げて。
そして理沙も母親の顔を見つけて右手を…。
そして改札を抜けて…。
和奏、
「はい、おかえり~~。将輝君、おつかれ~~。ありがと。お昼、食べよ。」
将輝、
「ども。お待たせしました。」
瞬間、和奏、理沙の右こめかみを見て、
「えぇ~~。理沙~~。あなた、どうした~~、怪我~~???」
そして、将輝を見て、
「将輝く~~ん…???」
すぐさま理沙、
「あ、おかあさん、これ、将輝が悪いんじゃないよ。」
和奏、瞬間、
「へっ…???」
いきなり将輝と理沙を交互に見て…。
将輝、
「実は~~。」
頭を掻いて、その経緯を和奏に話し始める。
駅を出てスロープを…。
和奏、
「何、そぅなんだぁ~~。理沙、他に痛いとこ、ないよね~~。」
理沙、そんな母に、
「だ~~いじょうぶ~~。それに、薬師丸ひろ子ばりの元看護婦さんから見てもらったし。ニシ。」
その声に和奏、
「へっ…???…薬師丸ひろ子…???ぱり…???」
和奏、すぐさま将輝を見て…。
けれども将輝は困った風に顔を。
理沙、
「将輝は分かんないよ。」
その声に和奏、少し可笑しがった顔で…、
「さて。何食べる~~???」
「私は…、ラーメン。」
「将輝君は~~???」
将輝、
「あ~~。僕も…、ラーメンで…いいですね~~。」
すぐさま和奏、
「OK~~。んじゃ、ちょっと、遠いけど、あそこ、行くか~~。」
理沙、
「あそこ…???」
運転中に和奏、
「ははは。…でも凄いじゃん、初めてのシュート~~。」
理沙、
「へへへへ。」
将輝、
「思わず、小野倉さんも、お~~~って拍手。」
「へぇ~~。」
「でもねぇ~~。」
理沙、
「それからがぁ~~。」
和奏、バックミラーを見ながら、
「転倒ってね~~。」
将輝、
「小野倉さんと一緒に、びっくりしちゃって。」
「うんうんうん。」
「でも…、あのパスじゃ、ちょっと難しいよな~~。」
和奏、
「ふん…???」
「パスした相手も、ちょっと難しい体勢でのパスだったから…。…でも、それを無理やり。」
「ふ~~ん。」
和奏、バックミラーを見ながら。
「でも…。」
和奏、また、
「ふん。」
「でも…、車椅子に乗ってて、あのパス、受けられたら、僕、凄いと思いますよ。」
その声に理沙、口を尖らせて…。
和奏は、
「へぇ~~。」
「考えると…、体勢を崩してのあのパス。でも、バスケの選手だったら、リーチがあるから、ある意味、ノーマーク。逆にスリーポイントのチャンス。」
瞬間、理沙、
「あっ、そっか~~。うんうん。普通の選手なら…、確かに。」
和奏、その声にニコニコと、
「へぇ~~。うん。いいじゃん、いいじゃん。」
交差点で右折する和奏。狭い路地を…。
瞬間、将輝も、理沙も、
「狭っ!!!」
和奏、
「ふふ~~ん、ここは一方通行。狭いよ~~。…並んでないと…、いいんだけど~~。」
数秒、ゆっくりと走って、
「ジャ~~ン。ここ~~。」
将輝、
「ラーメン…、拓ちゃん。」
店の隣に駐車場がある。半分は埋まっている。
瞬間、和奏、
「ん~~、ちとやばいかな~~。」
将輝、
「えっ…???」
「客は、車で…だけじゃ、ないからね~~。」
「あ~~。」
店に入って…。
「こんにちは~~。」
厨房から、
「らっしゃ~~い。」
男性の声。
そして、
「あらワカちゃん、久しぶり~~。」
和奏、
「こんにちは、おばちゃん。」
「何、娘ちゃんに、彼氏でもできたかぃ。」
信じて…良かった。 vol.117. 将輝、「おっと~~。ここまで来たか~~。」
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庄司紗千 「雫音〜shizukune〜」
※ご本人の承認の下、紹介させて戴いております。