理沙、走る車の後部座席で、黙って過ぎ去る景色を見ながら…。
そんな娘をバッグミラーで見ながらの蒼介。
「理沙〜〜。どんな感じ〜〜???久々の車〜〜。」
そんな父親の声に理沙、今度は左から右に目を…、
「ん〜〜〜。外…、出られた〜〜。体…、動いてく〜〜。」
その声に蒼介、そして和奏も、
「ふっ。」
「うんうん。そうだね〜〜。」
そして和奏、
「ホッとした…。」
蒼介、
「ん〜〜〜???」
「やっぱり、家族…。いっつも、一緒にいたいじゃん。私はやだよ。理沙が傍にいないのなんて。」
そして後部席に首を、
「ねぇ〜〜、理沙〜〜。」
そんな母の顔に理沙、
「ありがと。ふふ。」
ニッコリと…。
そして…、やがて…。
瑞樹家、玄関先で…。
理沙、車の窓から、
「わぁ〜〜。凄〜〜い。玄関まで、変わってる〜〜。」
蒼介、トランクから車椅子を…。そして後部座席に。
「こうやって…。」
理沙、
「うんうん。OK、OK。かか、おとうさん、うま〜〜い。」
そして車椅子に理沙、ヒョコンと。
蒼介、
「んじゃ、かあさん。俺、車。」
和奏、
「うん。」
数メートルのアプローチはそのまま、その後は、スロープである。
理沙、
「へぇ〜〜。こんな風に出来たんだ〜〜。」
蒼介、車から荷物を持って…。そして玄関に…。
理沙、
「ドアが…。」
和奏、
「うん。理沙、これからは…、車椅子だからね〜〜。」
「へぇ〜〜。」
ドアから引き戸になっている。そしてそこから廊下までも…。
「ここにも、坂。」
蒼介、
「これ、スロープって言うんだ。はは、このくらいの傾斜だったら、かあさんでも平気で車椅子。」
そんな蒼介に和奏、ニッコリと、
「うん。」
そして理沙、廊下に。瑞樹家の1階、段差…、全くなし。
しかも、どの部屋も車椅子で行き来しやすいように、
寸法が考えられ、そして、引き戸までも取り付けられている。
理沙、
「帰ってきた———————っ。ヒャ〜〜〜〜。」
そんな理沙を見ての蒼介と和奏、共に笑顔で…、
「かかかか。」
「おかえり。」
車椅子を一回転させて理沙、
「うん。ただいま。」
その後、昼食を済ませて、1階のあちらこちらを…。
トイレを見ては理沙、口に両手を当てて、
「わっ!!!凄っ。使いやす〜〜。」
蒼介、
「かかかか。」
けれども、
「とはいえ…、残念ながら、2階には…、今は…、無理だけどな〜〜。」
そんな父親に理沙、懸命に首を振り、
「ううん、ううん、そんな事ない。十分だよ〜〜。部屋だって、広く…。私の部屋、狭いのに…。」
「かかかか、そんなの…、どうにでもなるさ〜〜。」
「そうよ。」
和奏。
「とにかく、習慣。」
夕方近くになって、
「ただいま。ただいま、ただいま。ただいま。理沙〜〜〜。」
廊下をドタドタと。
蒼介、
「おほ、帰ってきた〜〜〜。」
栞奈、リビングでの車椅子の理沙を見て、
「理沙〜〜〜。」
理沙、車椅子から首を後ろに、
「お姉ぇ〜〜。」
栞奈、車椅子から理沙に抱き付き、
「おかえり〜〜。」
理沙、
「うん。うんうんうんうん。ただいま、お姉ぇ。」
「さっ。揃いましたか…。」
蒼介。
瑞樹家、今夜は…、理沙の退院祝いと言う事で…、家族4人、水入らずで…。
「乾杯」
そしてその夜…。
「そうですか〜〜、退院…しましたか〜〜。」
一樹、スマホ越しで…。
電話の向こう、和奏、
「えぇ。お蔭様で…。」
「とにかく、良かったです。」
「あっ、先生には、先日、手伝ってくださって…。」
その声に一樹、
「いえいえ。そんな…、瑞樹さん、かかか。何度も…。私からお願いした訳ですから。えぇ。」
「ありがとうございます。あの、学校の方には、また、改めて。」
一樹、スマホ越しでニッコリと、
「ありがとうございます。えぇ。お待ちしております。」
「それでは、ごめんくださいませ。」
通話が切れる。
一樹、
「そっか〜〜。瑞樹〜〜。退院したか〜〜。はは。」
理沙も理沙で、夕食過ぎには友達にスマホで連絡。友人それぞれが歓喜。
そして…、翌日。
職員室では、教師陣の拍手に一樹、深々とお礼。
「ありがとうございます。」
坂崎も拍手して、
「本当に良かった〜〜。うんうんうん。退院おめでとう〜〜。」
室越は、何故か眼鏡を外して、目にハンカチを、
「うぅ…。うんうん。良かった〜〜。」
そして…、2年B組。一樹からの生徒たちへの報告。
その瞬間、一斉に、
「キャ――――――――ッ!!!」
生徒たちの歓喜。
一樹、そんな生徒たちをニコニコと…。
その生徒たちの声に隣の教室。江梨子、
「ふふ。」
信じて…良かった。 vol.052. 「やっぱり、家族…。いっつも、一緒にいたいじゃん。」
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庄司紗千 つつじヶ丘の坂道で…。
※ご本人の承認の下、紹介させて頂いております。
Source: THMIS mama “お洒落の小部屋