ドキドキ 車椅子を自操してゆっくりと元来た通路を…。そして、自分の部屋の…。
その時、通路の端の方にひとりの男性。こっちを見て笑顔で右手を…。

そんな男性を見て陽織、
「誰…???…あの人…???」
そのままドアに手を。そして…病室の中に…。

真輝、遠くから見ていて、顔を傾げる。
「…あれ…???」

車椅子からまたベッドに。端坐位のまま、
「さ~~て~~。どぅすっかな~~。」
そのままベッドにバン。
「とにかく…。おばあちゃんが来ないと…。」
そこまで言って、
「えっ…???…今、私、何て言った…???…おばあちゃんが…来ない…と…って…???…んじゃ…。私のおかあさんとおとうさんは…???」
両目をキョロキョロと…。
「えっ…???…それまた、一体…、どうなってる~~~???」
思わず小鼻がツ~~ンと来て、
「うそうそうそうそ。」
そしてまた布団を顔まで、
「あ~~~ん。」

そしてまた…、あれこれと考えながらも…。次第に…うとうとと…。
眠りに…引き釣り込まれた…かと…。

その時、ドアが開いて、
「柚香~~。おばあちゃん、来たよ~~~。はは、病院の前でメグちゃんとバッタリ会ってね~~。」

ハタと布団の中で目を覚ます陽織、
「…ん…???…確かに。おばあちゃんの声。…でも…。誰…???メグちゃんって…???」

「ユズ~~。ジュース買ってきた~~。一緒に飲も。」

陽織、鼓動が一気に高鳴る。そして、頭の中で、
「…どうしよ。どうしよ。頭の中、めちゃくちゃ~~。一体、なんなの~~???」

幸乃、布団を頭から被っている柚香を見て、
「あら。どうしたんだい…???布団、頭から被って…。はははは。」

愛実、ベッドを回って顔の方に、布団をチラリと捲って、
「ユズ~~。」

顔を凹ませている陽織、
「……。」

愛実、
「はは。どうしたの~~。そんな顔して~~???」

幸乃もチラリと柚香の顔を見て、
「ん~~~???」
そして、
「どうしたんだい、そんな顔して~~???…何か…あったかぃ…???」

その声に陽織、ぶすっとした顔で、
「何でもない。」
そしてまた布団を頭まで。

愛実はキョトンとして…。

幸乃、思わず困ったような顔を、
「変な子だね~~。折角メグちゃん、来てくれたのに~~。昨日に続いて、今日も~~。ありがたいよ~~。」

けれども陽織、布団の中から、
「ありがと。」

そんな柚香に愛実、口を真一文字にして…。けれども、
「はは。うん。まっ。そういうときもあるよ。うん。…病院にいたらね~~。とにかく、外にも出れないから…。」

全く、見ず知らずの女性に言葉すらなく、布団の中、頭の中で、
「…いやいやいや。だから、あんた、一体、誰…???…分かんないから声も出ないよ。…だから、私は柚香じゃなくって、陽織だって…。」

布団を頭から被って、そのままの柚香に愛実も、仕方なく、
「ふふ。うん。分かった。」
そして、
「おばあちゃん、私、今日は、これで帰るね。ユズ、何かしら、調子、悪いような…。はは。…また、今度来るよ。うん。」
ニッコリと。

そんな愛実に幸乃、謝るように、
「ごめんね~~~。折角来てくれたのに~~。」

「ううん…。大丈夫、顔、ちょっと見れただけでも…。うん。」
そして椅子から立ち上がりドアに。そして振り向いて、
「じゃね~~。また。」
ドアが開いて、そのまま廊下に、
「バイバ~~イ。」

幸乃ニッコリと恵に手を振って。

数秒後、幸乃、
「さて。どうしたものやら。」

幸乃、床頭台にある天文学の本を手に取り、そして開いて、
「ふ~~~ん。柚香、将来は…、きっと、天文学者だね~~~。ふふ。」

そんな幸乃に陽織、まだ被った布団の中で、
「おばあちゃん。」

「う~~~ん…???」

「メグちゃんって…誰…???」
その声に幸乃、
「へっ…???」

「だから。メグちゃんって…誰…???」

その声に幸乃、
「はっ…???…へっ…???…メグちゃんって…誰って…???…おま…。」

「私…、メグちゃんって…、知らないんだけど…。…そもそも、ここ…、病院…???…なんで私、病院にいる…???…それに…。私のおかあさんとおとうさんは…???…どこ…???」

いきなり目をパチクリと幸乃、
「あっ…。えっ…???…へっ…???…何…???…どうしたの…柚香~~。おま…。」

「だから。…私、柚香じゃない。私の名前は陽織。」

いきなり幸乃、鼓動が高鳴る。そして体全身に震えが…。
「何言ってる。あんた。おま…。なんで…???…そんな…。柚香。あんたは、柚香。陽織じゃ。」
そして幸乃、布団を首まで捲って、
「何をおま。おまえは、柚香。陽織は…。陽織がなんで…???」

「私は陽織。汀陽織(みぎわひおり)。柚香の妹の陽織だよ。」

その声に幸乃は顔を真っ青にして、
「陽織な訳がない。あんたは柚香。汀柚香だよ。」

その声に陽織、
「違う。絶対に違う。私は陽織。おばあちゃ~~ん。」

幸乃、困ってしまって…、いきなりそわそわと…。そして…。

LIBRA~リブラ~   vol,006,   車椅子を自操してゆっくりと元来た通路を…。

※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※

《PR》

庄司紗千「3センチの中央線」
※ご本人の承認の下、紹介させて頂いております。

アメーバ  

Source: THMIS mama “お洒落の小部屋