ドキドキ 愛実も男性に頭を下げて、
「ごめんなさい。」

そんな女子ふたりから頭を下げられて男性、
「いやいやいや。いぃって。はは。うんうん。気にしないで…。」

その後、柚香はレジにノート数冊。

愛実、
「もぅ~~。頼んだら買って来たのに~~。」

そんな愛実に柚香、
「いいの。…だ~~って、病室から出る口実、なくなっちゃうでしょ。」

その声に愛実、
「あっ。そっか~~。うんうんうん。確かに。そういうのも、あるよね~~。」

レジを済ませて売店から出るとき、まださっきの男性は何かしら商品を選んで。
その時、視線を感じたのか、柚香の方を向いて。

瞬間、柚香、ドキン。
男性がニッコリとお辞儀を…。
柚香もそれに合わせてお辞儀を…。

愛実、
「彼…、病気、何なんだろうね~~。」

柚香、
「…さぁ。」

椅子に座って待っていた幸乃、目の前に近づいてきた柚香と愛実に、
「はい、おかえり~~。…もしかして…、ノート…???…それくらいおばあちゃん、買ってきたのに~~。」

柚香、口を尖らせて、
「だ~~って。」

愛実、クスクスと、幸乃に、
「でしょ、でしょ。や~~っぱり私と同じ事~~。」

柚香、
「だから~~。」

愛実、
「病室から出る口実がなくなる。と、申しております。」

その声に幸乃、ニッコリと、
「あ~~ん~~。な~~るほどね~~。」
幸乃、
「もう少し、回ってみる…???」

その声に柚香、
「うん。」

汀柚香(みぎわゆずか)都内、慶稜(けいりょう)大学の2年。
そして、その祖母、汀幸乃(みぎわゆきの)。
そして柚香の親友の井島愛実(いじまめぐみ)。
こちらは都内の甲南(こうなん)大学の2年である。

汀柚香。実は、東京世田谷にある一軒家に住んでいる。
家族は祖母の汀幸乃と二人暮らし。両親はいない。
柚香、2歳の時に車の事故で亡くなっている。
その時点で祖母の幸乃が柚香の母親代わりになっている。

病室に戻っての柚香、
「全然、勉強…。」

そんな柚香に愛実、
「夜空のほ~~しを~~ってね~~。天文学かぁ~~。」

柚香は都内の大学、慶稜大学の理工学部。
そして愛実も都内ではあるが、甲南大学。こちらは特に、演劇を学べる大学として有名。

愛実、
「ユズ~~、星見るの、好きだからね~~。かかかか。何度も一緒にプラネタリウム、連れてかれた~~。」

「そういうメグも、女優になりたいって、いっつも映画館。」
柚香。

「かかかか。お互い様~~。まま、お互いに、一人っ子でもある訳だし…。」
瞬間、愛実、思わず幸乃の顔を見て、
「わっ!!!…ヤバかった、幸乃おばあちゃんに…。」
顔をクシャリとさせて…。

そんな愛実を見ての幸乃、ニッコリと、顔を傾げて、
「はは。いいのよ。メグちゃん。もぅ~~。と~~っくの昔。全然…、気にしなくて大丈夫~~。はは。」

愛実、思わず幸乃に両手を合わせて…。
幸乃、ニコニコしながら顔を左右に。

愛実、天文学の著書のページを繰っている柚香に、
「さてさて。入院生活、どのくらいになるのか…。」

その声に柚香、
「うん。それほど…、掛かんないって、私自身は、思うんだけど…ねぇ~~。」
そして幸乃を見て、
「ねっ、おばあちゃん。」

幸乃、口を真一文字にして、
「うん。当初は長引くかな~~って、思われたんだけど…。なんたって、体毎、吹っ飛ばされたんだから~~。あちこちもぅ~~。全身打撲だよ~~。アスファルトに叩きつけられてゴロゴロ回って~~。頭から血は流れてるわ。大変だったらしいんだから~~。」

愛実もその話を聞いて頷く、
「うんうん。」

「私が来た時にはまだ手術のランプが…。3日間は、気を失ったまま。目が覚めて、ホッとして…。体の力が一気に抜けて~~。」

柚香、申し訳なさそうな顔で、
「みたいだよね~~。」

幸乃、そんな柚香に、
「まっ。でも…、お蔭で、轢き逃げした犯人も逮捕されて~~。良かったよ~~。あれから…。柚香が助けた女の子も見舞いに来て。おかあさんが泣いてありがとうございましたって…。」

愛実、
「うんうん。」

「まっ。もしかしたら、ユズが助けなかったら、あの、女の子…。」
そこまで言って幸乃、いきなり顔を左右に小刻みに、
「うぅ~~。冗談じゃない、縁起でもない。」
そして幸乃、
「とにかく、早く退院して、いつも通りに。」

柚香、
「うん。だよね~~。」

翌日、柚香、今度はひとりで車椅子で…。看護師には許可を取って。

院内を見学。

…すると、近くのベンチに昨日の男性が…。座って本を読んでいる。

柚香、男性に、
「こんにちは~~。」

すると男子も声に気付いて柚香の顔を…。
「あぁ。こんにちは~~。」

柚香、男性に、
「何読んでいるんですか~~???」

「あぁ…、これ…???」
一旦著書に目を落として、
「機械工学と電気工学の本。」

柚香、キョトンとして、
「機械工学と電気工学の本…。」

LIBRA~リブラ~   vol,002.   愛実も男性に頭を下げて、「ごめんなさい。」   

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Source: THMIS mama “お洒落の小部屋