チャイムが鳴る。
「ハ〜〜イ。」
モニターを見る葉子。モニターの画面には稜平と由佳理。
「おや。来ましたか〜〜。」
鏡花(きょうか)。獏の母親である。
「葉子さん。お願い。」
葉子、その声に、
「はい。」
そして、獏に、
「獏。」
獏、
「おぅ。」
葉子玄関に。ドアを開けて、
「どうぞ〜〜。」
稜平と由佳理、
「よっ。」
「お邪魔しま〜〜す。」
そしてリビングに。
稜平、
「ほほほほほぅ〜〜。うんうんうん。いいね〜〜。」
由佳理もニッコリと、
「うんうんうん。」
椅子から立ち上がり入ってきたふたりに深々とお辞儀をする鏡花。
「こんにちは。そして、初めまして、海江田獏の母の、海江田鏡花と申します。おふたりの事は獏から…。」
稜平も目の前の女性に深々とお辞儀を。そして由佳理も。
「初めまして、選葉子の父の選稜平と申します。」
「由佳理と申します。」
鏡花、ふたりに、
「どうぞ。どうぞ。主人ももうじき…。羽田には着いたと連絡ありましたから…。」
稜平、そして由佳理、ニッコリと。
「そうですか〜〜。」
海江田家のマンション。
鏡花、
「私も昨日、ここに着いたばかりで…。時々、葉子さんとはスマホとオンラインで…。とても奇麗なお嬢さん。」
その声に稜平も由佳理も、
「はははは。」
「ありがとうございます。」
獏、
「どうぞ、ごゆっくりと…。」
鏡花、
「なんか…、部屋随分と、生活的に…。はは。」
そして鏡花、
「不躾で全く申し訳ないんですけど、私、仕事の関係でどうしても、家を留守にすること多くて…。それに、主人も、殆どが不在。ロンドンが本拠地で…。」
稜平、
「外資系の…。」
「えぇ。…だから…、葉子さんと結婚して、このマンションで一緒に住むって聞いてもぅ〜〜、ビックリ。」
稜平、鏡花に、
「あの…、葉子の事は…???」
その声に鏡花、目を閉じて笑顔で、
「えぇ。存じております。けれども…、そんな事は全く。はい。ご心配には及びません。実際、私と主人の方こそ、全く…。こう言って妙ですけど…、殆ど…。一年に何回顔を合わせるか。」
そして、困ったような顔で、
「ふふ。疎遠になってますから…。…でも。…そんな主人ですけど…。私には…。」
瞬間、獏、
「かあさん。」
咄嗟に鏡花、目をパチクリとさせて、
「あら、やだ。私ったら…。おほほほほ。」
既に夏から秋に変わろうとしていた。
葉子と獏の結婚式を控えている。
その前に家族で一度会おうと言う事であった。
家族同士、仕事の忙しさもあり、中々都合が付かずに結婚式の2週間前と言う事になった。
マンションのチャイムが鳴る。
獏、
「来ましたか〜〜。」
モニターに。
画面には武流の顔。
「今、開ける。」
武流、リビングに入って来るなり、まずは稜平と握手。そしてハグ。そして、
「読んでますよ〜〜。ベストセラー作家、選稜平〜〜。いやいやいや。こんな凄い方とご縁に。はは、嬉しいですね〜〜。」
その声に鏡花も、
「私も〜〜。あなた、おかえりなさい。」
「おぅ。ただいま。」
既にキッチンでは由佳理と葉子が…。
武流、キャリアケースから、
「一緒に飲もうかと思いまして…。」
そして箱を取り出し…。
稜平、
「おぅ〜〜。いいですね〜〜。うんうん。ワインですか〜〜。」
「レアものです。」
楽しい語らいの中で、いよいよ…。
武流、
「それでは、獏と葉子さんの…。そして…、海江田家と選家、両家のために。」
6人、一斉に、
「かんぱ〜〜い。」
和やかな時間が始まる。
鏡花、料理を食べて、
「うんうんうん。由佳理さん、料理お上手〜〜。私なんて…、全然。」
そして鏡花、由佳理に頭を下げて、
「仕事でホテル暮らしが多いもので。不行き届きで申し訳ありません。」
その言葉に、武流も頭を下げて、
「申し訳ない。私も、家事の事は一切。ロンドンでは、家政婦を雇っているくらいで…。面目ない。」
由佳理右手を左右に、
「と〜〜んでもない。私なんて、料理の方は、まだまだ〜〜。匡子さんに電話で聞いているくらいですから〜〜。」
賑やかに、時間は流れる。
そうこうしながら、やがて…、稜平と由佳理は帰路に。
武流と鏡花はお互いの寝室に。
葉子と獏もお互いの寝室に。
選家とは全く異なる、一般住宅からマンション。
葉子、ベッドに腰を落ち着かせて、
「ふぅ〜〜。」
獏、そんな葉子に、
「はは、疲れたろぅ〜〜。」
口を尖らせて葉子、
「ふん。…いや。だって、初めて会ったから。獏の両親。」
「まっ。パソコンではしょっちゅうオンラインで…。」
「うん。でも、実物は…。」
そして葉子、
「でも…、おとうさんとおかあさん。私の事…、大丈夫だったかな〜〜。」
その声に獏、
「えへ…???」
そして、
「何言ってる…???…俺が選んだ女性だ。文句は言わせない。」
その声に葉子、口を真一文字に、そして、目を真ん丸にして、
「ありがと。」
「おっ。」
けれども葉子、壁を見ながら、
「でもね〜〜。まだまだ…、こんな私です…。旦那様…???」
獏、葉子の頭の後ろを撫でて、
「うん…???…こんな私です…けど…???…どうしましたか…、奥様…???」
「他の人とは、余り…感情…。」
「今更…。」
そこまで言って獏、
「それこそ、これからどんな風になるのか、選葉子さま。あっ。今度は海江田葉子になるんだ。…大いに、期待してますよ〜〜。葉子のこれからを…。」
瞬間、葉子、獏に顔を向き直って舌をチロリと。
「オゥ。マイ、ハニー〜〜。」
いきなり獏に抱き付き、獏を押し倒す。
数秒後…。
「…けど…、不思議だよな〜〜。」
獏。顔の上の葉子に。
葉子、
「うん…???」
「11年のシカゴより。幼いころからのロンドンより。この1年ちょっと…。はは。…とにかく、選葉子に、尽きる。マイ、ダーリン。」
そんな獏に優しく微笑む葉子、
「ふふ。」
9月某日。
白いウェディングドレスの葉子、モーニングの獏。
互いの指に、結婚指輪。抱き合うふたり。
こんな私です。〜選葉子(すぐりようこ)〜 vol,248. 「こんな私です。選葉子です。」
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庄司紗千 つつじヶ丘の坂道で…。
※ご本人の承認の下、紹介させて頂いております。
Source: THMIS mama “お洒落の小部屋