女の子の母親だろう、通に、
「いつも、ありがとうございます。」
その声に通、
「いえいえいえ。お安い事でござんすよ。」
そんな女性の隣の女性が、
「…でね、姉さん。」
通、
「どぞ、ごゆっくり。」
カフェ匡子で…。
秀美、
「実は…。」
匡子、秀美の声に、
「うん。」
獏も、頭をコクリと、
「うん。」
鼓動が高鳴る一方の秀美。
「実は…。佐武郎さんの…、誕生日、聞いたんです。」
瞬間、佐武郎も獏も匡子も目をパチクリと…。
匡子、
「サブちゃんの誕生日…、聞いた…???」
獏を見て、
「…って…。誰…から…。」
また、獏を見て…。
獏、
「…って、俺が知っている…はずがない…。」
その声に思わず匡子、
「くくく。…だよね〜〜。…て…???誰から…???」
秀美、
「…それ…は〜〜。」
匡子、
「ふん。」
秀美、口を尖らせて、ポツリと。
「レストラン…、伊伽瑠美(いかるみ)の…、オーナーシェフ…さんから…。」
その名前を聞いて、いきなり匡子、
「はっ???」
佐武郎も思わず口をポカ〜〜ンと。そして目を真ん丸に。
獏だけが、
「えっ…???…何々…???…それって…何…???」
そして獏、秀美を見て、
「レストラン、イカルミって…、何処の…???」
匡子、獏を見て、
「あん。獏は…知らないよね〜〜。…てか、ヨウちゃんも輪湖もコイっちゃんも、知らないよ〜〜。知っている…はずもない。私も話してないんだから〜〜。まっ、ただ、サブちゃんを〜〜、あるレストランから引き抜いた。…と、だけは、話しては、あるけどね〜〜。」
獏、
「それじゃ、俺が知ってんのと、同じじゃん。」
その声に匡子、
「いやいやいや。…って言うか、誰からそこ…。その…伊伽瑠美…、訊いたの…???」
秀美、少し、困ったようでも、申し訳なさそうにも…。
「実は〜〜…。」
電話が鳴る。
「はいはい。」
と、言いながら愛生、受話器を持って、
「はい。いつもありがとうございます。高村家の食卓です。」
受話器の向こう、
「あぁ〜〜。愛生ちゃん、お疲れ〜〜。ねね、テキトー親父いるぅ〜〜。」
「あ、はい。」
愛生、
「ちょっとお待ちくださ〜い。」
そして、
「店長〜〜。匡子さ〜〜ん。」
その声に通、
「あいよ。」
そして子機を渡されて通、耳に。
「はい。お電話代わりました〜〜厚労省の岡崎〜〜。どちら様で…。」
受話器の向こう、
「何、バカ言ってんだか。」
「おやおや。確かに、その声には聞き覚え、ございますが…、何か…???」
匡子、スマホを耳に、
「あんたね。秀美ちゃんに伊伽瑠美さんの事、教えたでしょ。」
「と〜〜〜んでもない。こう見えても私ゃね。一国の大臣。そんな…あ〜〜た、どこの馬の骨か分かんない奴から、贈賄って…。へん。ありが〜〜たく、じゃんじゃん。大いにウェルカムだわよ〜〜。」
受話器の向こう、匡子、
「あのね。通ちゃん。」
通、受話器に、
「何よ。」
「だから〜〜。秀美ちゃんに伊伽瑠美さんの事、教えたでしょって。」
その声に通、目をパチクリと、空を見て、
「確か〜〜。遠い昔に…、そんな事…、あったっけ〜〜???…かかかか。」
匡子、溜息を突きながら…、
「ふぅ。」
そしてスマホに、
「あのね。秀美ちゃんがレストラン伊伽瑠美のカーナーシェフからサブちゃんの誕生日、聞いて〜〜、サブちゃんに誕生日プレゼント〜〜。さっき店に来て、お昼食べて渡して行ったの〜〜。私も獏もビ〜〜ックリ〜〜。」
その頃、獏は電車の中で…、
「いやいやいや。…まさか、秀美ちゃんが…、ねぇ〜〜。」
秀美は扶桑の少し手前。既に鼓動は通常に…。逆に気分も落ち着いていた…。
…と、言うよりは、半ば気持ち、ゆったりと…。そして、小さな声で、
「言〜〜っちゃった〜〜。」
通、受話器に、
「へぇ〜〜〜。あの子、そんな事…、サブちゃんに…。な〜〜るほどね〜〜。」
その声に匡子、カウンターの中で、
「ねね、どういう事〜〜???…秀美ちゃん、私には…。…ただ、高村家の通さんから…聞きました。…ってだけ…。お昼…、時間もないから帰っちゃったけど…。」
通、
「ふん。ま、ねぇ〜〜。…1週間くらい…前かな。夜遅くにさ、店に来たのよ、秀美ちゃん。俺だってびっくりしたわさ。何でこの時間…???…ってさ。…そしたら、俺に頭を下げて、すみません。通さん、佐武郎さんの匡子さんのお店の前にいたところ…、知りませんか。」
匡子、
「わ〜お。」
「いや。別に、知らない訳じゃなし。…って言うか〜〜。こりゃ、何かある。…って。…んじゃ、まっ。その何かに乗っちゃいますか〜〜って、バラした訳よ、伊伽瑠美の事〜〜。…ってか…、あいつ、伊伽瑠美…流行ってんの…???…聞こえてこないけど…。」
そんな通の声に匡子、
「ご心配なく。繁盛してますって。」
そして匡子、
「な〜〜るほどね〜〜。そういう事〜〜。」
「…って事は…。秀美ちゃん、サブちゃんに…???」
匡子、口を尖らせて、
「うん。」
こんな私です。〜選葉子(すぐりようこ)〜 vol,243. 「実は…。佐武郎さんの…、誕生日、聞いたんです。」
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※ご本人の承認の下、紹介させて戴いております。
Source: THMIS mama “お洒落の小部屋