葉子、海江田を見て、
「課長…、シカゴのそのグレート、ピレニーズは、まだ…、生きているんですよね。」
いきなり振られて海江田、目をパチクリとさせて、
「あ、あ~~。まだまだ、若さの盛りだよ。…ただ…、ご主人を亡くしてから…、今…、どうなってるか~~???」
葉子、空を見て、
「元気だと良い。」
美知佳、
「うん。そうだね。」
匡子もニッコリと…。
輪湖、
「…って言うか、葉子~~。何で名前が。クゥン…???」
秀美も、
「あっ、そういえば…。なんか…、ユニークって…。」
葉子、そんな声に、
「ふん。なんにでも、鼻をクンクンさせて、物凄い人に懐くんだって。…で、おとうさんが、それならクゥンでいいんじゃないの。それから…。」
匡子、
「かかかかか。な~~るほどね~~。」
そして、下唇をビロンと。
「…と言う事で、獏~~。話はワンちゃんの方に行っちゃったけどさ~~。」
獏を見て口一文字に…。
すぐさま葉子、
「あっ、すみません…。」
匡子、そんな葉子に右手を振って、
「ううん、いいのよ~~。…でも、これからが、肝心。」
その声に葉子、
「えっ…???」
美知佳、ニコリと、
「おや…。」
輪湖も秀美を見て、
「うんうんうん。」
佐武郎、テーブル席から客の空のグラスを掲げるのを見てニコリと、そして左手を…。
海江田、
「ふ~~ん。…で、そんな僕を見て、フィアンセも愛犬も、何やら気付いたのかも…。…フィアンセが、いきなり僕の顔の前に顔を出して、何厳しい顔をしてんのよって…。」
瞬間、輪湖も葉子も、両眉の先端を吊り上げて、
「…してんのよ…???」
匡子、思わず、
「くくく。」
海江田、
「ふん。僕も思わず驚いた。えっ…???…って…。」
美知佳、目をパチクリさせながら、
「あっ。ちょっと待って、海江田課長…。なんで課長も、驚くの…???フィアンセだもん、相手の男性に、そういう言い方って…、別に…。」
そんな美知佳に、輪湖と葉子は、
「あ、あ~~。」
「私たちは…。…でも…。…男性の人と、付き合った事…、ないから…。ちょっと…、凄い表現って…。思っただけで…。ねっ、輪湖。」
輪湖も、
「うんうんうん。」
美知佳、
「あ、な~~る。」
匡子、
「但し…。」
美知佳、そんな匡子を見て、
「但し…???」
「うん。獏のフィアンセのその方、物凄い感情の溢れた方で~~。しかも…、一番は笑顔。とにかく素敵な笑顔。なんですって。」
その声に美知佳、海江田のグラスの傍にあるスマホを手に取り、画像を…。
「あっ。な~~るほど…。うんうんうん。笑顔だわ~~。」
匡子、
「だから~~。ここが、ひとつ、不思議なところなんだけど~~。いつもの優しい表現のフィアンセさんじゃなかったって…。ねっ、獏~~。」
「まっ。確かに。夢の中の彼女は、とにかく、話しが淡々と…。」
そこで海江田、一拍置いて…。
「思い切って、フィアンセに…。…もしかして…、選葉子さん…って…???」
いきなり葉子、ドキン。
秀美も…、ドキン。
輪湖と美知佳、
「わお。」
葉子、目を小刻みに右左に。
海江田、
「そしたら彼女。…誰、その人…???…だから、何、そんな厳しい顏で…。」
輪湖も葉子も美知佳も、僅かに肩を落として…。
「…で、僕、今悩んでいる横領の事、話して聞かせる。…そうしていると、彼女の前に蝶が…。」
美知佳、
「おっと~~。」
輪湖と秀美、葉子、海江田を見る。
「…で、その蝶が彼女の指に止まる。彼女が話し出す。」
葉子、海江田に顔を…。
「彼女がその時、アナグラムって…。」
輪湖、
「うそ。」
秀美、
「凄っ。」
美知佳、頭を揺らして、
「へぇ~~ぇえ~~。」
海江田、顔を小刻みに左右に、
「い…、いや…。ぼ、僕だって、いきなりアナグラムって言われてびっくりするじゃない。」
美知佳、
「うんうんうん。」
「…で、それからは、何とも僕より詳しく、扶桑の事、彼女、話すのよ。」
輪湖、
「わ~~お。」
秀美、
「凄すぎ~~。」
葉子、
「……。」
「…僕が、なんでそんなに詳しく…???…すると彼女、蝶が教えてくれたって。…で、それからは、頑張って課長って…。」
美知佳、
「へぇ~~え~~。」
「ただ…。」
海江田、
「最後の、声がどうしても…、聞こえなかった。何かしら、口パクで…。誰かの名前を言っていたような…。…で、目が覚めた。」
葉子、
「口パク。」
海江田、またビールを一口。
「多分…、あの口パクが…、小田島って…、言ってたんだろうなぁって、今、思えば…。」
数秒…、沈黙。
「…と言う事で…。」
匡子。
獏、
「あ、あ~~~。」
葉子は、
「……。」
輪湖、
「なんか、凄い話。」
秀美、
「うんうん。」
そして、佐武郎が空になっていたグラスを新しいサワーに交換して秀美の前に。
秀美、ニコリと、
「ありがとう~。」
匡子、美知佳に、
「部長、私に獏のスマホ。」
美知佳、
「あっ。はいはい。」
そして匡子、スマホを受け取って画像を…。そしてニコリと、
「ヨウちゃん、獏と結婚しちゃえ。」
こんな私です。〜選葉子(すぐりようこ)〜 vol,211. 葉子、空を見て、「元気だと良い。」
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庄司紗千 「雫音〜shizukune〜」
※ご本人の承認の下、紹介させて戴いております。