輪湖も秀美も葉子も、
「課長…???」
美知佳、
「ん~~~???」
海江田、口を尖らせて…。何故か隣の葉子が気になり始める。
「あっ、いや…。まぁね~~。…うん。まっ。僕も…、インフル…罹った訳じゃないけど…。」
そこで海江田、声を一旦止めて、そして…、
「はい。見ました。夢を…。ふん。…いや。確かに…。まぁ~~。リアル…でしたね~~。」
美知佳、
「あは。」
「まぁ…。僕もかなり…調べてて…。…松樹部長にあぁいう風に言われて…、そんなに難しくは…。と、思ったんだけど…。中々これが…。調べても皆目見当が付かない。…確かに…。これが11年のブランクかって感じで…。」
匡子は口を尖らせて獏を見る。
輪湖も秀美も葉子も海江田を…。
海江田、ビールを一口。
「…で…。時間も時間。1時過ぎてたからベッドに…。うつらうつらと、眠ったんじゃない…。いきなりシカゴのいつもフィアンセと行く公園が出て来た。」
輪湖、
「あっ。葉子の言った通り。」
秀美、輪湖を見て、
「うんうんうん。」
葉子は口を尖らせて。
美知佳、腕組みした両肘をカウンターに。
「僕…。夢の中でも横領の事、考えてんだよね。」
4人、
「へぇ~~。」
匡子は2度頷いて…。
「僕は、芝生の上に寝転んでてさ。」
美知佳、
「まさか…、ひとりで…???」
その瞬間、葉子、思わず、
「ぷっ。」
そんな葉子を匡子が、
「えっ…???」
輪湖も秀美も、
「えっ…???」
秀美、輪湖を見て…。
海江田が続ける。
美知佳に、
「あっ、いや…。確かに、寝転んでるのは僕だけですけど、周りでフィアンセの愛犬が走り回ってて。しかもフィアンセは笑いながら、愛犬は楽しそうに吠えながら…。」
美知佳、
「へぇ~~~。…で、その愛犬って…、どんな…???」
海江田、
「雌のグレート、ピレニーズです。」
葉子、ポツリと、
「おっきぃ~~~。」
匡子、
「あら、ヨウちゃん、知ってた…???」
葉子、そんな匡子に、コクリと、
「うん。…実は、ウチでも飼ってたんです。私の小さな頃ですけど…。雌のグレート、ピレニーズ。大型犬。」
輪湖、いきなり、
「へぇ~~。そうだったんだ~~。」
海江田も、
「いやいやいや。雌のグレート、ピレニーズ…。」
葉子、
「…って言うか、ウチのは、私が小学に入る時に…???…だったかな…。死んじゃいましたけど…。あの時…、とうさん…。寿命だよ。楽しませてもらった。11年だもんな~~。」
海江田、
「確かに。犬の寿命は10年から13年と言われてるし…。」
葉子、匡子を見ながら、
「ウチのとうさん…、後からおかあさんに聞いたんだけど、無類の犬好きと言う…。」
匡子、笑いながら、
「わ~~お。」
「でも…。それからはおとうさん、犬を飼うのは辞めたって。」
その瞬間、他のメンバー、
「えっ…???…どうして…???」
海江田、葉子を見て、
「そんな…。」
匡子、
「なんで、なんで…???」
「理由は…。」
葉子、
「私…。死んじゃったクゥンを見て、家を出たの。」
匡子、いきなり、
「はっ…???」
輪湖も、
「えっ…???」
秀美は、顔を傾げて、
「あれ…???」
海江田と美知佳、
「どう…いう…???」
「こと…???」
海江田、
「家を出た…。…って、何歳で…???…確か、さっき…、小学に入る時って…。…もしかして…。6歳…???」
葉子、口を尖らせて、
「…です。…私。」
匡子、葉子を見る。
「私。こんな感じで…、感情って表に出ないんです。」
匡子、真面目な顔で、
「うん。うんうん。」
美知佳、
「確かに…。選さん見ていると…、いつも、ポーカーフェイス。」
「あの時…。本当は。本当は。私、死んだクゥンを見て、思いっきり泣きたかったんです。…けど…。泣けなかった。」
その言葉にみな、沈黙する。
葉子、
「泣く事が、出来なかった。…だから…。クゥンが死んで、おとうさんもおかあさんもバタバタとしてた時…だった…らしい。私…、家から出て、懸命にどこかに歩いてた。どこに行くのかも分かんないで…。」
輪湖、
「葉子…。」
秀美、
「葉子先輩。」
「いつの間にか、おとうさんの声、聞こえて…。…でも、私、おとうさんの手を振り切って。私…、おとうさんに、こぅ言ったんだって。クゥンが死んじゃった。私、帰らない。」
匡子、優しそうな顔で葉子を見て、
「ヨウちゃん…。」
「おとうさん。私と一緒に歩いてたんだって。…そして、私がようやく疲れて足を止めたときに。私の前に、腰を落として背中を出して、帰ろって。…私、そのままおとうさんに負ぶさって。…家に帰った。何度も、クゥンが死んじゃったって背中で言いながら…。」
5人はそのまま葉子の話を…。
「それからは…、子供たちの可哀想な姿を見たくない。…おとうさんが…。そんなふうな事言って…。我が家では、犬を飼わなくなった。」
こんな私です。〜選葉子(すぐりようこ)〜 vol,210. 「フィアンセは笑いながら、愛犬は楽しそうに吠えながら…。」
※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※
《PR》
庄司紗千 花笠音頭
※ご本人の承認の下、紹介させて戴いております。