ドキドキ  鳩崎、両眉を歪めて、
「あぁ…。…けど…。…けどだ。」
そして、口をガッシリと搾って、
「ん~~~。考えたく…ない。…考えたくは…ないが~~。…これも…。事実。」
そして鳩崎、立ったままで受話器を持って。左手で電話のプッシュボタンを…。

3回のコールで相手が出る。
「おはようございます。お疲れ様です。陣屋です。」

鳩崎、
「あぁ~~。おはよう。鳩崎…です…けど…。」

陣屋、
「あ~~ら、おはようございます。」

その声に鳩崎、
「横領の件…。誰か…。分かったぞ。」

いきなり陣屋、
「えっ…???」

「なんとも…、有り得ない…、人物の…。」
そう言いながら鳩崎、受話器を右手から左手に。そして右手を腰に…。

陣屋、鳩崎の声に、
「有り得ない…、人物…って、まさか…、鳩崎部長…。」

陣屋の口から出る人物の名前に鳩崎、ゆっくりと頷いて、
「そぅ~~。その通りだ。…考えたくは、ないが…。」
海江田を見て…。

海江田。そんな鳩崎を見て、
「……。」

陣屋、頭を撫でながら、
「やっぱり…。」

鳩崎、
「…で…???…社長には…???」

「…いえ…。まだ…。今、ミーティングが終わったばかりだから…。これから…と、思って。」

「あぁ。…だが、早い方がいい。」
壁に掛けられた時計を見て。

すると、陣屋のスマホに着電。陣屋、受話器に、
「鳩崎部長、ちょっと待ってくれます…???…と言うか…。一旦切ります。」

その声に鳩崎、
「お、お~~。」

陣屋、スマホに、
「はい、陣屋~~。瑠唯~~。」

スマホの向こう、長谷部瑠唯である。
「あっ、陣屋。私。分かったよ、横領主~~。」

そして陣屋も長谷部からの人物の名前を聞いて、
「おっと~~。そっちもか~~。」

スマホの向こう、
「まさか…。…とは、思ったんだけど…。…考えられるのは、ひとりだけ。」

「うん。」
陣屋。
「とにかく。社長には報告しないと…。」

「うん。そうね。」
「わざわざありがとうね。」

その声に長谷部、
「いいえ~~。どういたしまして。じゃ、切るね。」

陣屋、通話を切って、そして受話器を持って、プッシュボタンを。そして口を尖らせて、
「ふっ。」

受話器の向う、
「お疲れ様です。秘書課、美…。」

「陣屋です。お疲れ様です。今、社長…。」

その2分後、蔵井氏の机の電話が鳴る。受話器を持って、
「はい。」

聞こえてくる声。
「今から社長室に行ってくる。」

「承知しました。」

陣屋、急いで部長室から出て、早足で…。

そんな陣屋を社員たちが一斉に。

蔵井氏、頭の中で、
「…行ってらっしゃい。」

陣屋、葉子たちの横を…。そして、ひとりの女性をチラリと見て。
ドアを開けて廊下に。

輪湖、葉子に、
「なんか…、部長…、凄い顏してたみたいだけど…。」

葉子、輪湖の顔は見ずにパソコンの画面に、
「そりゃそうよ。犯人、特定したんだから…。」

「誰なんでしょうね~~。課長は、まだ、その人物の名前は…。」
秀美。

輪湖、
「ふ~~~ん。全く見当が付かない~~。」

「付く訳ないよ~~。私たちが入社する前から、横領されてたんだから…。…仮に名前が公表されても、私たち、話した事もない人…。」

「なんだよね~~。」
輪湖。

その時、一瞬、葉子、
「えっ!!!…うそ。」
体はそのままだが、何故か意識が宙に浮いたような感じになり、葉子、いきなり、
「うそ。うそうそうそ。私…、浮いてる…???」
僅かに10…数センチほど宙に浮いたままの葉子、
そして…目の前には自分が椅子に座ってパソコンの画面を見ている。
「…って…???…これ…、わ…、私…???…うそ…。これじゃまるで、私…、幽体離脱…。…えっ…???」
そして…、宙に浮いている葉子。なのだが…、喋っている言葉は、英語。
自分では日本語を喋っているのだが、確かに、口から出た声は英語。
しかも…、自分が自分ではなくアメリカ人になっている。
懸命に輪湖と秀美に声掛けするが、ふたりは仕事に夢中。
それだけではない、周りの社員たちも仕事に夢中。
その時、いきなり葉子、体が吸い込まれたようにパソコンの画面に…。
目を瞑る葉子。

次の瞬間、葉子、体は宙に浮いたまま、ゆっくりと目の前を飛んでいる蝶の後ろを…。

意識の中で葉子、
「蝶…???…見た事…、ない…、蝶。」
そして自分が着ているワンピースを見て、
「こういうのって…、私…、着る…???」
葉子、日本語を口にしているのだが、聞こえる声は、また英語。

蝶が導くあるひとりの人物の下に。
「この人…。……あぁ…。人事部の二宮(にのみや)部長。」

その人物の周りを一周するが、その後、また別の場所に、蝶は導く。

葉子、
「一体、何…???」

そして、今度はある部屋に。ドアをすり抜け…。

葉子、部屋の中を見回して、そしてひとりの男性を…。
「この人…。」
机のネームを見て、
「へぇ~~。取締役~~。門浦智輝(かどうらともき)…。」
頭を傾げて、
「会った事もない。」

こんな私です。〜選葉子(すぐりようこ)〜   vol,202.   その声に鳩崎、「横領の件…。誰か…。分かったぞ。」

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庄司紗千 花笠音頭

※ご本人の承認の下、紹介させて戴いております。

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Source: THMIS mama “お洒落の小部屋