ドキドキ 頑なに口を閉ざしているような葉子に海江田、いきなり足を止めて、
「ふ~~ん。」
差が広まっていく。
「参ったね~~。」
そしてまた歩き出して、
「まっ。言いたくなかったら、それならそれでいいけど…。それ、ずっと隠しておくつもり…???…逆に、匡姉ぇ、気になって仕方がなくなるよ。そんなんじゃ~逆に~。そんな感じで、店で食事…???…美味しくないでしょ。」

変に、的を得ていた。

葉子、思わず、目をパチクリと…。
「そっか…。」

行き交う人の流れに任せるように葉子、海江田に、
「課長…。横領です。」

その声に海江田、
「横領…???」

人の流れは、そんな通行人の話す声にイチイチ反応してはいない。
むしろ自分の事に集中している。そうでなくとも耳にはイヤホン。隣の人とのお喋り。
スマホ画面に食い入る人。しかも、いきなりの大きな声。そして笑い声。
一切が周囲には無頓着。

そんな駅構内での葉子と海江田。

歩きながら…。
「何やら…、発覚したと言う…。」

海江田、葉子に、
「…確定…なの…???」

「いえ…。まだ、そこまでは…???…けれども…。確実に…、使途不明金。」
「その額は…???」

「凡そ、5億。」

海江田、思わず、
「ヒュ~~~。」
そして、
「なんとも…。デカイ。…やれやれ…、輪湖ちゃんの事にしろ、横領の事にしろ、いやいやいや。」

瞬間、葉子、
「あっ。今、課長、輪湖の事、館城じゃなくって、輪湖ちゃんって…。」

その声に海江田、
「へっ…???」
いきなり、顔を傾げながら、
「はっ…???」
そして、
「あは~~~。まっ。匡姉ぇが、いつも、輪湖ちゃん、ヨウちゃんって、言ってるから…。思わず、出ちゃったかな~~。」

葉子、
「輪湖、喜ぶと思います。」

「ふ~~~ん~~。…それにしても、何処からどうやって…。そんな…。」
「多分…。時間は…、掛かると思います。」

「きついな~~。財務企画~~。」
そこまで言って海江田、
「…ん…???…いや…。これ…???」
そして海江田、
「いや。いやいやいやいや。選さん。これ…。他人事じゃない。財務企画だけの問題じゃない。扶桑、全体の問題。」

その声に葉子、目だけあちらこちら…。そして、
「あっ。」

海江田、
「もしかして…。」

そしてふたり同時に、
「M&Aと同じレベル。」

そして海江田、
「選さん。この事、財務企画だけで抱え込むな。」

その声に葉子、思わずキョトンとして、
「あ、はい。」

「逆に、共有した方がいい。…その方が、むしろ、今まだ、横領の手口が継続なら…。何かある。そこを見極められれば…。当然、百貨店内に…、その…、人物…。」
「どこかで…、動く。」

「まだ…、継続しているので、あれば…。当然、発覚したことも、知らないはず。」
海江田、
「但し…。こちらの動きを悟られると…。」

その声に葉子、
「…でも、その方が逆に…。起きてしまったことを、起きなかった事実に、出来るはずない。」

「逆に、追い込む。」

葉子、2度頷いて、
「はい。」

そして…。その事は次の日に、葉子から陣屋に。
そして、海江田から鳩崎に…。

鳩崎、自分のデスクで海江田から、耳打ちされて、
「何ぃ~~っ!!!」
いきなり海江田の肩を抱いて、部長室に。

社員たち、
「何だ…???」

鳩崎、部長室で、
「おぃおぃおぃおぃ。何だよ何だよ、何だよ。国内大手の、この、百貨店扶桑で…。何…???…横領…???…本当なのか、それっ。」

「いや…。まだ…、確定はされて…。…ですが…。確実な…、使途不明金と…。しかも…、手口がとにかく巧妙と…。」

鳩崎、海江田に、
「それ、誰が言ったの~~???」

「いや…。それ…は~~。」

瞬間、鳩崎、ニンマリとさせて、
「はは~~ん。もしかして…。獏ちゃん。ひょっとしたら…、財務企画に…。」
そして鳩崎、海江田の左胸を右指先でグリグリと。

途端に海江田、
「部長~~。」

「まぁ~~。いい。おまえさんの事だ、キッチリと、してんだろ。」

その声に、
「どういう…意味ですか~~。」

「だから。」
鳩崎、
「まぁいい。」
そして、
「とにかく。…この事は、社長の耳には…???」

目をパチクリと海江田、
「えぇ…。多分…。僕にそういう話をするくらいですから、とっくに…。」

「それ聞いたの、いつよ…???」
「昨日ですけど…。」

「何時、何分…???」
「部長~~~。」

鳩崎、思わず。両手を前に、
「どぅどぅどぅ…。うんうんうん。分かった。…とにかく、秘密裡に…、頼む。」
そして鳩崎、
「じわり、じわりとな…。その方が、効果が出やすい。いきなりド~~ンは、ダメだ。必ず、マスコミが動く。…んな事になったら…、とにかく、面倒になる。」

海江田、ニッコリと。
「心得ております。」

財務企画部では陣屋。部長室で、
「ふん。確かに。扶桑全体で…。その方が、効果は覿面。いいかも…。…けど、ヨウちゃん、さすが…、名案。」

葉子、思わず、
「私じゃなくて…。」

陣屋、
「へっ…???」

こんな私です。~選葉子(すぐりようこ)~   vol,186.   「それ、ずっと隠しておくつもり…???」

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※ご本人の承認の下、紹介させて頂いております。

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Source: THMIS mama “お洒落の小部屋