出掛け先からようやく駅に着いた海江田。
駅の入り口で虎一郎とバッタリ。
虎一郎、
「はは、課長~~。」
海江田、
「おぅ~~っと~~。江崎(えざき)さんの帰り…???」
「えぇ。しっかりと、契約。」
「はは、お疲れ~~。」
虎一郎、
「このまま、匡子さんの…???」
その声に海江田、
「うん。直帰って部長には言ってあるから…。」
「かかか。実は、俺も…、その口~~。」
海江田、
「おやおや。」
そしてふたり、歩きながら、
「…って言うか~~。」
虎一郎、
「課長~こっち来て…、2か月…???」
その声に海江田、
「ふん。そうなるか…な…。はははは。」
「それにしても…、課長…、凄いっすよね。やっぱり…。」
「えへ~~???…何が…???」
「だって…。営業の方は…、多分、女性…、2か月経って、ようやく、落ち着いてきたけど…。課長が廊下で他の部署の女性社員とすれ違う度に、なんて言うか…、ある種の視線が…。」
すると海江田、
「へぇ~~。そういうの…、あるんだ~~???」
そんな海江田に虎一郎、
「ま~~た、またまた。傍にいるこっちが、感じるんすよ~~。」
そんな虎一郎に海江田、
「ふん。」
「ねぇ~~課長~~。」
海江田、虎一郎に、
「ふん…???」
「課長に…。あんまり、こういうのは…話しちゃまずいのかなって思って…。」
海江田、また、
「ふん…???」
「いや…。女子もかなり興味あるっぽいんですけど~~。中々、上司って感じで、聞きにくいっていうのも…ありで…。」
「ほぅ…。」
「主任にも聞いてみたんすけど…。そしたら、主任も…、首を捻って、いや…。知らない…。って…。」
いきなり海江田、
「はぁ…???…何の話…???」
虎一郎、困ったような顔をして、
「だから…。あれっすよ、あれ…???」
「いやいやいや。あれって…、コイッちゃん。」
そんな海江田に虎一郎、
「ん~~、もぅ~~。あれって言ったら~~。その~~。シカゴにいたときの~~。…何て言うか~~。」
そして、小さな声で、
「女…っすよ~~。」
その声に海江田、
「ふん。」
そして、
「ん~~~。」
そして海江田、虎一郎を見て、
「ふん…???」
虎一郎、そんな海江田を見て、
「え…???」
「ふん。」
とぼけた顔で海江田、
「ふん。…ふん…???」
いきなり虎一郎、ガクッと。
「…って…。」
顔を崩して…。
「課長~~~。だって、主任も~~。…んな事、おま…。本人から訊けよ~~って。」
そして口を尖らせて、
「…そりゃ…、主任はもぅ…、結婚して、子供も。」
海江田、
「ふん。確かに、ヤッさんは…。だよね~~。」
虎一郎、両眉の先端を吊り上げて、
「課長~~。」
「ふん。まぁ~~~。なんだ~~。うん。確かに。いた。」
「えっ!!!」
そして虎一郎、
「ほんとっすかっ!!!」
そんな虎一郎に、海江田、
「ふん。まっ。嘘をつく必要もない…から~~。いた。」
俄然、虎一郎、ニコニコと、
「うんうんうん。…で…???…で…???」
「…でも、今は、いない。」
「はっ…???…って~~こ・と…は…???」
「うん。今はいない。」
すると虎一郎、ニヤニヤとしながら、
「まさか~~。課長が、女性に振られる…なんて…。」
瞬間、海江田、
「そ…いう…、こと…でも、ないんだけどね~~。」
その声に虎一郎、キョトンとして、
「へっ…???いや…。じゃ・あ~~~…。なんで…???」
「…だから~~。今は…。いない。」
虎一郎、
「いやいやいや。…だから…。」
「今はいない。…いないんだ。この世に。」
途端に虎一郎、
「へっ…???」
そして、
「いやいやいやいや。課長…???」
海江田、前を向いて、
「ふん。言葉のまんま。この世にいない。死んじゃったんだ。事故で。」
いきなり虎一郎、
「えっ!!!」
海江田、淡々と、
「事故でね~~。俺とその彼女、婚約してたの。」
すかさず虎一郎、
「こ、婚約…。うそ。…じゃ~~。」
「ふん。結婚する予定で…。…でも、交通事故で、亡くなった~~~。」
瞬間、虎一郎、
「えっ!!!…え~~~~。」
いきなり虎一郎、意気消沈。
「え~~~。あっちゃ~~。」
いきなり立ち止まる虎一郎。
「やっべぇ~~~。…俺…。」
前を歩く海江田。
虎一郎、その後ろを…。そして頭の中で、
「…俺…、悪い事…、訊いちゃったかぁ~~???」
そして、海江田の後ろから、
「あの…。課長…。」
海江田、後ろに顔だけ、
「ふん…???」
「俺…。なんだか…、課長に、悪い事…。」
そんな虎一郎に海江田、
「は…ぁ…???」
そして、思わず笑みを、
「かかかかか。気にすんなよ。もぅ…、済んでしまった事~~。」
海江田に追いつくように、
「いや…。だって、課長~~。」
そして虎一郎、
「ふ~~ん。…すんません。」
「な~~にを~~。君が謝る事じゃないだろ。ん~~???」
「それは…、そうっすけど…。」
「ほぃ。着いた~~。」
ドアを開ける海江田。
こんな私です。~選葉子(すぐりようこ)~ vol,170. 「女子もかなり興味あるっぽいんですけど~~。」
※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※
《PR》
庄司紗千「3センチの中央線」
※ご本人の承認の下、紹介させて頂いております。