「ふたり目は~。料理人がいてぇ~~。それが、神田川俊郎。でぇ~~、最後にもうひとりが…。何と…。イングリッド・バーグマン。むふふふふふ。」
匡子。
その声に獏、目を見開いて、
「いやいやいやいやいや。うっそ~~。凄いね~~。なんとも…。」
そこまで言って獏、少し申し訳なさそうに頭を撫でて、
「ただ…。…ごめん。俺…、料理人の神田川…???…は~~、ちょっと…、知らないかな~~。イングリッド・バーグマンは、知ってるけどね~~。銀幕の女優~~。」
匡子、
「うんうん。…あっ。でも…、さすがに獏も料理人、神田川俊郎は…、知らなかったか~~。」
獏、佐武郎に、目の前で両手を合わせて、
「ごめん。」
そんな獏に佐武郎、照れたように笑いながら顔を左右に振る。
獏、
「な~~るほどね~~。イングッド・バーグマン。凄いね~~。」
匡子、
「おかあさんが、イングリッド・バーグマンに似てるんだって~~。しかも…、おかあさんも、イングリッド・バーグマン好きなんだって。そのせいね。」
獏、その話に、
「へぇ~~~。うんうん。何とも渋いわ~~。はは。」
「…で…???」
匡子、
「あんたはどうすんのよ。秀美ちゃん、ヨウちゃん。」
腕組みしながら、
「とにかく、ふたりの女性から、あんなこと言われて~~。片っぽは一緒にいるのは全然抵抗なし。違和感なし。でも、好きと言う感情はない。…で~~。私は海江田課長の事、好きです。何ともストレート。どうすんのよ。」
その声に獏、
「ふ~~~ん。何ともなぁ~~。…とは言っても、俺の気持ちなんて、蚊帳の外。さ~~てと~~。ん~~。まっ、時が解決してくれんじゃないの~~。」
匡子、そんな獏に、
「もぅ~~。そんな、適当な事~~~。」
「いや。適当な事って…、言われても~~。ここで、俺が、秀美ちゃんの事、好きです。選さんの事、好きです。な~~んて言ったら、匡姉ぇ、納得しちゃうの…???…俺だったら、そっちの方が。物凄い、変。あまりにも適当って感じじゃない~~~。」
今度は匡子、獏のその話に、
「…い、いや…。だ~~って~~。」
「それとも何…???…ここでもし俺が、秀美ちゃんと選さん、どっちかを好きなんて言ったら、逆に、匡姉ぇ…、疑わない…???…って言うか、そっちの方が、逆に自然じゃない…。土台、考えてくれないかな~~。…ってぇ~~、言う方が、筋って感じ…するんだけど…。」
そんな獏の声に、今度は匡子、下唇をビロンと。そして、
「ま、ま~~ねぇ~~。」
「そんな…。いきなり女性から、そんな事言われても、俺だって、返答に困るよ。今まで。そんな事、考えてもいなかったし…、それより、はっ…???…そんな感じだよ。」
けれども獏、
「まっ。確かに、女性の口からハッキリと、好きですって言われて、嫌な気分になる男性はいない…とは、思うけど…。」
匡子、
「……。」
「ただ…。相手は22よ~~。俺より一回りも年下だよ~~。…それに、選さんだって…。確かに、彼女は凄いよ。頭脳明晰。それは分かる。…けどさ~~。まっ。今回のあの…、M&Aの件…。対策室でも一緒だったし…。まぁ…、財務の鈴村さん。そして、ウチの都沢君と一緒に。いい感じだったって思うよ。でも、それとこれとは…。」
匡子、また腕組みして、
「ん~~~。」
「時間、掛けようよ。そんなすぐさま、どうなの…???…なんて…、結論は、出ないよ。無理やり結びつけるなんて…、無理無理~~。」
話を聞きながら匡子、口を窄ませて、
「まぁ…ねぇ。…確かに。女性の口から、いきなり…。」
獏、匡子を見て、
「もし、仮に、匡姉ぇ。匡姉ぇが、目の前の…。まぁ…、お客さんでもいいよ。ま、俺みたいな常連の男性から、匡姉ぇに、いきなり、匡子さん、俺…、あなたを、前から好きって思ってんだけど…。な~~んて言われたら…???…多分、匡姉ぇだって、…まぁ…、嫌な思いはしないだろうけど…。絶対に、可笑しがりながら、ちょ、ちょっと待って。え、え~~~???…相手の男性に向かって、ちょっと…、いきなり、何言い出すかな~~。…って、そんな感じじゃない…???」
佐武郎は黙って獏の話を聞いている。
獏は続ける。
「その男性にさ…。いや…。ちょ、ちょっと、待ってくれる…???…私…、こう見えても、結婚恐怖症だって、あなたに言わなかった…???…なのにさ…。…そんな…私を…。いやいやいや。…って、必ず、そうなるって…。…それが、今の俺。シチュエーション、似てない…???」
匡子、獏の話に、口を捻じ曲げて…。
「2度も、男を好きになった匡姉ぇでしょ。…それくらいは…。…察しても~~。」
こんな私です。~選葉子(すぐりようこ)~ vol,168. 匡子、「あんたはどうすんのよ。秀美ちゃん、ヨウちゃん。」
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庄司紗千「おふろ月夜」
※ご本人の承認の下、紹介させて頂いております。