そして、再び葉子と日比谷、同時に、
「M&A買収対象企業の不正、並びに違法行為…。」
「…と、なる可能性、大。」
日比谷。
「当然よね。幾ら社会的な事でも、企業と企業同士が納得行った上での合併と買収というのがM&A。そして、やがてはその会社は生まれ変わる。新しい会社として。間違いなく、個人の利益のためではない。更に社会的に貢献。または、経営不振の企業を立ち直らせる意味でもある。」
尚登、
「その通り。」
杏樹は黙って日比谷の話を聞いている。
日比谷、
「けれども、今回のM&Aは、完全にそれには反している。その証拠に、企業同士の両者自体、その人物を知らない。その企業のトップすら、面識も何もない。単に巨大マンモスホテルが日本で数年前に産声を上げたホテルの業績が著しいと言う理由だけで買収劇が勃発すると言う。」
海江田、腕組みをして、
「ん~~~。」
「当然、社会的には、数千億と言うお金が動くわけだからホテル業界としても、とにかく話題沸騰となる。だって、世界唯一のホテルキャッスルが、横浜トランキルマンヘブンズ、今や業績急上昇、成長株満点のホテルとのM&Aですもの。経営者同士、物凄い事を考えた。と、業界内でも、世間でも誰もが評価絶大。」
そしてここで葉子がまたポツリと、
「けれども、その…舞台裏では…。」
紫も、コクリと頷いて、
「う~~ん。」
「但し。」
日比谷が目の前の光浦に、
「私が幾ら、あなたの前で今まで調べられた事を事細かく披露したとしても、所詮は、私があなたを、どうすることも…出来ない。」
その頃、百貨店扶桑、社長室では…。
廿楽、宮越に、コーヒーを飲んで、ソファから立ち上がり、
「はは。えぇ~。そんな事もあったわね~~。ふふ、懐かしい~~。」
そしてゆっくりと窓の方に。
宮越、
「…で、廿楽社長、例の…、M&Aの件。」
廿楽、
「え~~。今頃は…、ホテルで…。」
「そぅっすか~~。いやいやいや。私も驚きました。まさか、彼女が…、そこまで考えて…。」
「野望が…、大きければ大きいほどに…。時には道を外れた決断すらも、王道だと、錯覚してしまうもの。…恐いわね。」
廿楽、顔だけ宮越の方に向いて。
宮越、その声に、大きく頷いて、
「仰る通り。」
そして、
「…では、今頃は、多分、結果が…。」
「そうだと、嬉しいんだけど…。」
ホテルの会議室では長い沈黙。…けれども光浦の声はない。
画面を見ながら都沢、
「しぶといっすね~~。」
日比谷、ニッコリと目の前の光浦を見て、
「何故だか分かる…???ふふ。答えは簡単。私は警察官ではない。あなたを、捕まえる事すら出来ない。けれども、私の確信で、あなたを…、警察を動かす事は…出来る。」
そして、ここでようやく…、光浦。
「どうして…、あなたがそんな事を…。」
その声に杏樹も目を…。
そして画面を見ていた社長室のそれぞれも、
「おっ。」
「あっ。」
「実は私。」
日比谷、
「元刑事なの。」
「えっ…???」
いきなり形相を変える光浦、そして、眉を歪めて、
「刑事…。」
杏樹、瞬間、頭をコクリ。
「日比谷部長、実は、警視庁の捜査第二課の刑事なんです。」
光浦、途端に目を見開く、そして、
「あなたが…。」
「ありがたい事に、刑事を辞めた今でも、私に協力してくれる警察官がいる事自体、感謝です。」
そして日比谷、
「それに、今回の件であなたを調べてくれた人が、昔、私がお世話になった警視庁捜査第二課の警部なの。」
都沢、その話に、
「凄ぇ~~~。」
海江田、
「警部とは…。」
日比谷、
「面倒見の良い人で。…でも、かなり、厳しかったですけど…。ふふ。」
葉子、
「警視庁捜査第二課の警部…。そこまでは~~。」
紫、
「でも…、凄いよ、葉子、葉子の考えてる事、ことごとく部長と一致。」
尚登もその声に、
「そうっすよね~~。」
「だから…。」
日比谷、
「今更、あなたが、光浦花純さんであろうが、上沼美和子さんであろうが、その事は、どうでもいい。とにかく、その写真がある限り、上沼美和子さんは、ホテルキャッスルチャイナの取締役に会っていたと言う事実。しかも、数回に渡って。…と、言う事は、つまりは、ここ、横浜トランキルマンヘブンズの事についての連絡の取り合い。それ以外には考えられない。」
葉子、また、ポツリと、
「任意同行。」
「多分、私が、昔の恩師に、この話をすれば、自動的に、任意同行に…、なるとは思うけど…。逮捕はされないにしても、それなりの処罰とは…なり得ますから…。」
そして日比谷、最後に、
「認識…して、頂ければ…。」
そして、数秒の沈黙。
日比谷、僅かに顔を傾げて、
「下がっていただいて、結構です。」
光浦、厳しい表情のままで、ゆっくりと立ち上がり、ふたりに僅かに顔を動かし、ドアの方に…。
そしてドアの外に。
こんな私です。~選葉子(すぐりようこ)~ vol,147. 葉子がまたポツリと、「けれども、その…舞台裏では…。」
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