北、力なく、
「ん~~~。」
尚登、
「おっと、女性…。」
紫、
「頭脳明晰で…、運動神経抜群…かぁ。」
日比谷、
「初めてのトローリングで宮越弁護士のオーストラリア人のその人と出会い、そしてその人の娘さんと出会い…。けれどもあなたはとにかく、大海原でのマーリンに夢中だった。」
北の目をしっかり見据えて話す日比谷。
北は椅子を斜めに座り、腕を組んでいる。
「あなたの…、そのガッシリとした体…。マーリンには、お誂え向きかしら…。」
海江田、
「確かに。」
紫も、
「うん。」
海江田、阿刀田を見て、
「阿刀田常務も似たように、ガッシリとしてますよね。」
その声に尚登、顔を崩して、
「えへ…???僕が…ですか…???…」
そして、右手を振って、
「冗談、冗談。」
「正に。若い者へ、最初は送るよ。…と言う事で、一発目のマーリン。あなたは果敢に挑んだ。…そして…、1時間…。見事に2メートルのマーリンの捕獲に成功。」
海江田と都沢、
「2…、2メートル…。」
「どっひゃ~~。」
「そして…。そんなあなたに。傍であなたにお手伝いしていたメグ・ウォーカーが一目惚れ。」
都沢、
「おっと~~。」
黙って日比谷の話を聞いている北。
日比谷、
「まだ…、続けてよろしいかしら…???」
その声に一度、深呼吸をする北。そして、
「今更、話しを止める人でも…、ないでしょう。」
美琴、尚登、海江田、
「ん~~~。」
葉子、
「何かが…、あった。」
「そんな…、マーリンとの出会い、そして、メグ・ウォーカーとの出会いで、あなたのオーストラリア留学は楽しく過ぎて行く。…けれども、1年後のある日、事件は起きた。」
杏樹も、パソコン画面の面々も、日比谷に注目。
「その日も大物のマーリンをゲットして港に帰る途中だった。宮越弁護士とジョンウォーカーは船内で…。そして、あなたとメグはデッキで…。まだ、それほどは飲んでいないアルコール。天気も最高。…けれどもその時。いきなりの波に船が揺れたかと思ったら、一瞬、船首に波しぶき、船首が大きく持ち上がったと同時に、黒い物体が…。」
静まり返る。
とつとつと話す日比谷。
「一瞬の出来事だったみたい。あなたは何とか掴まれるものに必死に…。だけど、傍にいたメグ・ウォーカーは…。強い波しぶきと、その黒い物体の何かに叩きつけられて…。」
北は目を閉じる。
「まだ揺れてる船のデッキ、あなたは彼女がいないことに気付き、すぐさま海に飛び込んだ。…けれども、彼女の姿は…。」
日比谷、北を見ながら、
「…その…、黒い物体は、多分…、クジラであろうと…。」
都沢、
「クジラ…。」
「そして…、その日を境に、あなたは…、心が折れたように…。そして…、アルコール漬けになり、何もかもが…。挙句の果てには、あなたの得意とするFX…。アルコール漬けの中で、意識朦朧としていたのか、レバレッジで大損。殆どの資金を失った。」
都沢、
「うそ――――――っ!!!」
紫、
「レバレッジって…???」
葉子、
「少ない資金で、大きな資金を得る。」
海江田、
「ただ…。この場合は…、多分、少ない資金と言っても、その額が…、違ったんだろうね~~。多分、大金で、その倍以上の大金を手に入れると…。それが…、今度ばっかりは裏目に。」
パソコン画面の日比谷、
「今までのあなただったら、そのずば抜けた予想力で、レバレッジを活かして収益を上げていた。それが今回は…。心の折れたままのあなたを気の毒に思ったのが宮越弁護士。つまりは自分の紹介でオーストラリアに留学させ、その結果…。」
思わず北は天井を…。
「何とか、オーストラリア留学を終えたあなたは、そのまま日本に…。細々と生活はしていたけど…。その頃に、ある人物と出会ってるわね。」
その話に北、
「もぅ…いいでしょ。気が済んだようですけど…。」
日比谷、今度は微笑みよりも、北に納得してもらうと言う心持で、
「いいえ。あなたがホテルキャッスルチャイナとは、全く無縁だと言う事を周知してもらわないといけない。」
瞬間、杏樹もパソコン画面の面々も、
「!!!!」
「日本に帰っても傷心のままで生活しているあなたを、宮越弁護士はある人物をあなたに紹介した。」
葉子、
「ある人物…。」
目をキョロキョロと…。そして、
「もしかして…。その人物。」
海江田も紫も、
「えっ…???」
また、画面の日比谷と葉子の声が重なる。
「天春宗謙。」
杏樹、目を真ん丸に。
瞬間、美琴の唇が緩む。
尚登、
「へぇ~~~ぇえ。」
海江田、腕組みして、
「ん~~~。」
紫と都沢は、
「うそ~~~~。」
こんな私です。~選葉子(すぐりようこ)~ vol,113. 紫、「頭脳明晰で…、運動神経抜群…かぁ。」
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庄司紗千 つつじヶ丘の坂道で…。
※ご本人の承認の下、紹介させて頂いております。