ドキドキ そして…。ほどなく雑誌は刊行された。

横浜にある横浜トランキルマンヘブンズホテル、社長室で、
「どういうことなの…???…まさか、ここが買収~~???…これって、事実上のM&Aじゃない。しかも強行的な合併、買収。冗談じゃない。」
鶴来美琴(つるぎみこと)。横浜トランキルマンヘブンズホテルの代表取締役社長である。

その鶴来の声に部屋の中央で頭を下げる女性、
「大変申し訳ありません。私たちもまさか…。」
専務取締役の久留巳杏樹(くるみあんじゅ)。

「この事、天春社長には…。」
「はい。逆に…、天春社長の方から私どもの方に連絡が…。扶桑の鈴村さんと都沢さんから話は受けていると…。けれども…、まだ…。」

その話に鶴来、
「そぅ~~。分かった。とにかく…、みんなの力で、何とかする以外に…、ないわね。…で、尚登(なおと)さんは…???」

その声に杏樹、
「常務、今日も、朝から駆け回ってます。とにかく笑顔で、全部見ないと気が済まないって…。」

その杏樹の声に鶴来、笑いながら、
「ま~~ったく~。良くぞあんなに毎日動けるもんね~~。こっちは体が心配。いつ倒れられるかって、ヒヤヒヤ。」
 

「でも…、常務、あれだけ多くの方々から愛されている人って…。難しい顔もするん…ですけど…、何故か、笑顔になってるんですよね~~。不思議な人です。」
「杏樹~~。尚登に誰かいい人…、いないの~~???」

瞬間、杏樹、いきなり体を崩して、右手を前に、
「いやいやいや。全然っ。無理。私なんて何回薦めたと思います…???その都度。その都度ですよ。いやいやいや。俺なんていいですよ~~。って、笑って。結婚なんて…、とんでもないですよ。相手に迷惑だ。嫌われちゃいますよ~~。ですって~~。」
顔を崩しながら杏樹、
「紹介したくとも、あれだけ低姿勢で…。」

「ふ~~ん。まっ、人から愛されると言うのは、嬉しい事、なんだけど…。出来るだけ、身を固めて…、欲しいんだけど…。」

この、尚登と言う人物、横浜トランキルマンヘブンズホテルの常務取締役である。

横浜トランキルマンヘブンズホテルは代表取締役社長の鶴来美琴を筆頭に、
鶴来醍醐(つるぎだいご)、副社長と支配人を兼務している。
その下に、専務取締役の久留巳杏樹(くるみあんじゅ)。
そして専務の阿刀田尚登(あとうだなおと)。
そしてもうひとり。鶴来夫婦にはひとりの男子がいる。
世に言う御曹司ではあるが…。現在はホテルマンとして修業の身。鶴来大翔(つるぎはると)。

横浜トランキルマンヘブンズホテルのM&Aの話が持ち上がって、
更には雑誌が発売されてから、数日、葉子たちはカフェ匡子を訪れていない。

訪れているのは匡子の甥の獏だけ。
しかも、高村家の食卓にも数日、陣屋たちの姿はなかった。

けれども通は、心持、
「なんか、あったね~~。」

愛生も心配して、
「みんな…。」

昼、夜と必ず匡子の店に顔を出す獏、
「ふぅ~~。食った、食った。」

いつも、3人が座っている椅子は、ここ数日、殆ど誰も座ってはいない。
他の客たちも、いつもの男女が座る定位置として、なまじ遠慮している節もあった。

匡子、開いている手前の席を見て、
「ヨウちゃん、輪湖、コイチも…。何かあったのかしら…???…それこそ獏~~。あんた、コイっちゃんから何か…、あんたの部下でしょ。」

その声に獏、右手を振って、
「いやいやいや。そればっかりは…。まっ、でも…、選さんたちとも、ここ数日、俺自身、会ってないんだ。」

実際、虎一郎にしても、輪湖にしても、内心、降って湧いたようなホテルの買収と言う事が、
その波及が扶桑にまで及ぶ、と、言う事が耳に入ってきた以上、心は晴れなかった。
葉子も無論、ふたりと同じ気持ちだった。
その為か、親しい仲間との食事を楽しく…と言う、気持ちにはなれずにいた。

それとは少し方向性が違ってはいたが、営業推進部の鳩崎、
そして財務企画の陣屋にしても、表沙汰になった以上、その買収の情報収集に躍起になっていた。

当然の事ながら高村家の通に限っては雑誌が販売された時点で、
既に客の話から情報は得ていた。

日頃、それほどテレビなど見ず、専ら軽音楽を楽しみ、
そして自分の料理のレシピづくりに明け暮れる匡子も、
いい加減に店に顔を出さない葉子や輪湖、虎一郎の事を思い、遂に獏に、
「ねぇ~~。あの3人、一体、どうしたのよ~~。」

既に、1週間…、過ぎていた。
週に3回は匡子の店に通っていた3人。

そんな叔母に獏、
「ふ~~~。まっ、これ以上は…。」

こんな私です。~選葉子(すぐりようこ)~   vol,065.   ほどなく雑誌は刊行された。

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Source: THMIS mama “お洒落の小部屋