爽太の、「お姫様抱っこで、エレベーターの近くのベンチに。」の声に稜平、
目を丸く、
「いやいやいや。お姫様抱っこ…。」
由佳里、葉子を見て、
「わ~~お。」
葉子、今度は口を尖らせて、
「いやいやいやいや。私は、分かりません。」
「気を失ってたからね~~。…で、人工呼吸しようと…。」
いきなり稜平、顔を顰めて、
「人工呼吸~~???」
由佳里、
「わお。」
葉子、
「爽太~~~。」
爽太、父と母を交互に見て、
「あっ。いや…。人工呼吸って、いや…、その人じゃなくって…。その人、俺を見て…。俺が姉ちゃんって言ったから、俺に、弟さんって聞いて。んじゃ俺がって…。その人、やり方教えてくれ…。そんな時に姉ちゃん、気が付いて。」
稜平、
「へぇ~~~。」
由佳里、
「ふ~~ん、な~~るほどね~~。…で、葉子は、その人の名前…。」
葉子、
「まっ。聞けるはずもなく…。だって、そんな…、数秒、顔を見ただけで…、かあさんなら、名前…、訊ける…???…そんな…、すぐ、立ち去ってしまう人に…。」
由佳里、
「ん~~。その時に、なってみないと…。」
「ただ…。」
「ただ…???」
爽太も稜平も、葉子を見て、
「ただ…???」
葉子、
「その人には、その時のお礼は、もぅ…、伝えてあります。」
その声に、3人、
「えっ???」
驚きの顔を隠せない。
由佳理、葉子の隣で、
「…伝えて…って…、葉子…???…どういう…???」
葉子、口を尖らせて、目は真ん丸に、
「ふ~~ん。実はね~~。私もその人を見て、びっくりしたんだけど~~。何と、その人、我が扶桑百貨店の営業推進部の課長に就任でございます~~。」
爽太、いきなり、
「うそ―――――――っ!!!」
そんな爽太に、葉子、
「ほんと。」
由佳理は葉子の隣で、目をパチクリと。
稜平、その話に、ニコリと、
「へぇ~~~え~。そんな話ってあるもんなんだな~~。何とも奇遇~~。」
由佳理、さりげなく葉子の左腕を突いて、
「ねね、葉子。…その…、もしかして…、営業推進部の課長に就任って、もしかして、匡子さんの…、甥っ子さん…。シカゴから来た人って…???」
その話に葉子、
「へっ…???かあさん、知ってるの…???」
爽太も稜平もその話に、
「へぇ~~。」
「ふ~~ん。」
由佳理、
「うん。今朝、匡子さんからびっくりしたよ~もぅ~~って、電話来てたから、かあさんのスマホに。」
葉子、
「へぇ~~~。」
「な~~るほどね~~。匡子さんの甥っ子さんか~~。ねね、何歳くらいの人…???」
稜平。
由佳理、顔を傾げて、
「ん~~。そこまで…。」
葉子、
「35だって。」
由佳理、
「へっ…???」
稜平、
「へぇ~~~。」
「イギリス育ち。まっ、父親の関係で子供の頃からイギリスにって、匡子さん、話してくれた。」
由佳理、数回頷いて、
「ふんふんふん。」
そして、
「どんな人なのか、たま~~に私も、カフェ匡子、行ってみようかな~~。全く以って、ご無沙汰~~。」
「…って言うか、何年…、行ってない…???」
由佳理、そんな葉子に、目だけ天井に、
「爽太がぁ~~。高校にぃ~~。だから~~。」
そして葉子を見て由佳理、口を横に開いて、
「そこ…、訊いちゃう…???」
「15年以上でしょ~~。」
「あららららら。」
その頃…。
陣屋のスマホに鈴村紫から電話。
「あら鈴(すず)~~、どうした~~???」
そして、同じ頃、鳩崎のスマホにも…、
「おぅ~~、泰(やす)~~。お疲れ~~。何、まだ仕事してんのか…???」
鳩崎はサウナの帰り。そして、いきなり、
「何—―――っ???」
そしてこちら、陣屋の方も、顔色を変えて、
「いやいやいや。鈴~~。それって…、有り得ないって思うんだけど…。一体…、何がどうして…???」
陣屋、腕時計を見て、
「いやいやいや。今は無理。こっちが良いと思っても、先方さんの都合も…。変に拗らせちゃいけない。…悪いけど…、時間かけて…。ね。お願い。」
そして、鳩崎、唇を搾ったままで、そしてスマホを耳に、
「一体、どうやったら、そんな事になるんだ、よっ。…ったく~~。今、一番社長が赤ん坊のように可愛がってるとこだぞぉ。くそっ。」
興奮気味に…。そして鼻で息を吐き、
「ふ~~~~ん。」
けれども、何とか冷静さを取り戻して…。
目の前には若いカップルが…。
酔っているのだろうか…、人目も気にせず、お互いがお互いを抱き締めてのディープキス。
そんなふたりの横を静かに通り過ぎての鳩崎。そして、
「…なんなんだよ。別に…目の前でキスする事ぁ、ねぇだろうよ…。…しかも…。…ったく…。」
こんな私です。~選葉子(すぐりようこ)~ vol,038. 稜平、目を丸く、「いやいやいや。お姫様抱っこ…。」
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