「…って言うか、匡子さん、海江田課…。」
虎一郎。
佐武郎も、両眉の先を吊り上げて、顔を傾げて…。
匡子、
「あ、あ~~。あ~~あ~、ははは。この人…。私の甥っ子。」
葉子、海江田を見て、口を尖らせて、目を真ん丸く。
輪湖と虎一郎は、
「え゛―――――――っ!!!」
葉子、小さな声で、
「匡子さんの…甥…。」
輪湖と虎一郎、
「甥っ子――――――っ!!!」
「いやいやいやいや。」
匡子、
「何々何、私の方がび~~っくりだよ~~。え~~~???」
そして匡子、獏を上から下へと。そして顔をマジマジと見て、
「…あんた、獏ちゃん、一体、今まで何処行ってたのよ~~。ロンドンから帰って来て、その後、1年くらいはここに通ってて…。でも、またすぐに…。それ以来、ず~~っと音沙汰なし。何々…???」
虎一郎と輪湖、海江田を見て、
「お、甥っ子って…。うっそ~~~~。」
輪湖、
「び~~っくりと~~言うか…。私たちからすると…、余りに、シュール…。」
海江田、カウンターの中の匡子を見て、少し気まずそうに右手で耳の上を掻きながら、
「あっ。いや…、その…、へへ、ごめん。」
そんな甥っ子を見ての匡子、
「…って言うか…。まぁ…、コイッちゃんは営業の方だけど…。あっ、そっか、輪湖もヨウちゃん、もぅ…、獏ちゃんの事、知ってんだ…???」
輪湖と葉子、その声に、お互いに顔と顔を見合わせて、そして匡子に、
「う、うん。」
「そっか~~。」
そして匡子、
「…ったく~~。あれから…、何年…???」
その声に、
「…っと~~。11年…だ、そうです。」
ポツリと葉子。
その声に匡子、いきなり肩をぐったりと、口を尖らせて、
「11年。…ふ~~ん。」
佐武郎、匡子に、
「匡子…さん…???」
匡子、
「あぁ~~。うん。ごめんね、サブちゃん、驚かせて。ふふん。この人、私の甥っ子の海江田獏。」
「かいえだ…ばく…さん…???」
「扶桑百貨店の…。」
そして匡子、虎一郎の顔を見て、
「コイッちゃんの営業推進部の新しい課長さんだって。」
その声に佐武郎、2、3度頷く。
輪湖、思わず緊張したように…。
「じゃ、じゃあ…、課長は、この店には…???」
佐武郎、匡子の後ろから回って、海江田の元にグラスに水を。
海江田、そんな男性にコクリと頭を、そして、右手を軽く。海江田、葉子の隣の女性に、
「えっ…???え~~、その…、11年前には…。」
「そうね~~。週に、3、4回は、来てたよね~~。昼も晩も…。」
匡子。
輪湖、
「えっ…???…そんなに…???」
「ふん。獏ちゃんの父親って言うのが、私の兄で、外資系なんだよね~~。そして母親は雑誌社の編集者。」
その声に虎一郎と輪湖、また目を真ん丸く、
「へぇ~~~。」
葉子は頷く。
「まず、その外資系の兄と言うのが、毎日、あっちこっち。まぁ、仕事が忙しいって言うのは分かるけどね~~。しかも…、その奥様も…、兄同様に、雑誌社の編集者とかで、こちらも朝から晩まで…。だから…、自宅なんて、家政婦の盛川さん…???…今も元気なの…???」
その声に獏、
「あ~~。うん。犬、2匹の面倒を見ながらね~~。」
「武流(たける)兄さんと鏡花(きょうか)さんとは…???」
獏、わずかに口をへの字にして、
「とうさんは相変わらず海外。かあさんとは夜に少しだけ、話をした。まっ、朝も夜もない仕事みたいだからね~~。」
佐武郎、注文はされてないが、匡子からコーヒーと言われて淹れたコーヒーを男性の前に。
獏、また男性に右手を…。
匡子、
「そんな訳で…日々、家政婦の食事…。だったんだけど~~。マンションでたったひとりの食事…。味も素っ気もありゃしない。…ってんで、ロンドンからこっちに帰ってきては、ここに…。」
葉子はただ頷いて。
輪湖と虎一郎が、
「ふ~~~ん。」
虎一郎、
「課長…、じゃ、やっぱりバイリンガル…???」
そんな虎一郎に輪湖、
「バカね~~。じゃなかったら、シカゴ…、行ってないでしょ。」
獏、虎一郎の声に、
「あぁ~~。ロンドンがとにかく長かったからね~~。凡そ…、何年だ…???」
匡子の顔に。
匡子、腕組みをして、
「そうね~~。あなたが、小学…3年頃…???」
虎一郎、
「う~~っわっ。」
「…で、高3に、こっちに帰ってきてたから…、ざっと…、8年…???」
「…に、なりますか…???」
匡子、キョトンと顔を傾げて…。
「…で、こっちに帰って、高校に編入して…。大学受験…???」
獏を見て…。
獏はコーヒーを一口。
「おっと。旨いね~~。」
その声に匡子、
「お褒めいただき、光栄です。」
ペコリと頭を下げて…。
こんな私です。~選葉子(すぐりようこ)~ vol,025. 匡子、「あ~~あ~、ははは。この人…。私の甥っ子。」
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庄司紗千 花笠音頭
※ご本人の承認の下、紹介させて戴いております。