次の日の月曜日、学校の廊下を歩きながら将輝、
「ふぁ~~~。」
口に右手を…。
そんな将輝の背中から、
「ヨッ。オス。」
馨である。
将輝、
「あ~~。おはよ。」
馨、
「何…???なんか、元気ないじゃん。」
「…って言うか~~。寝たの…、夜中の3時半~~。」
その声に馨、
「はっ…???なんで…???」
昼休みに、教室のバルコニーで…。
馨、
「ふ~~~ん~。そういう事が…、あったか~~。…で、将輝、おまえは…、どうするよ~~。3年の篠崎柚花。」
「どうするよっつったって…。どうすりゃ、いいんだよ~~。」
「ハッキリ言って、おま…、篠崎柚花、好きなの…???」
「…んな訳ねぇじゃん。ただ、付き合ってって言われたから…。」
「んじゃ。」
馨、
「理沙さんの事は、どう思ってる…???おま、土日は毎回、理沙さんとおばさんと一緒だろ~よ。障害者スポーツセンターに、自宅で練習に~~。」
そんな馨に将輝、
「それは…。まぁ…。仕方ねえだろうよ~~。俺があいつに車椅子バスケ、勧めたんだから~~。ただ…、あいつの事は、俺…。特に、何とも思ってないって言うか~~。前々から、それほど…。ただ、麗亜があいつと…。それから…なんだよな~~。なんでか、あいつと…。」
馨、そんな将輝を見て、
「ふふん。さてと。どうすっかな~~。」
将輝、思わずため息、
「はぁ…。」
その週は、特に将輝、理沙とも柚花ともスマホでの連絡はなく…。
土曜日にはいつも通りに障害者スポーツセンターに。
…けれども、いつもと違い、将輝の言葉の少なさ。
そんな将輝に、いつもと違うと感じた和奏。そして、帰りの車の中で…。
「ねぇ、理沙~~。将輝君、どうかしたのかな~~???」
その声に理沙、
「へっ…???…ううん。私は別に…、いつも通り…。」
「そぉ~~。…でも、部活でもなんだか…。」
母の声に理沙、
「……。」
口を尖らせて、
「ふん。」
そして日曜日。
練習をしながら理沙、
「ねぇ~、将輝~~。」
「ん~~~???」
キョトンとして将輝、理沙に振り向いて…。
「あんた、どうした…???ちょっと、いつもと、様子、変。」
その声に将輝、
「えっ…???」
理沙、バスケットボールを抱きながら、
「何か…あった…???」
顔を傾げて…。
けれども、そんな理沙に将輝、
「うるせぇよ。なんでもねぇよ。」
理沙、口をグニャリとさせて、そのまま繰り返す。
「うるせぇよ。なんでもねぇよ。」
そして理沙、
「あのさぁ、将輝~~。」
「だから、なんだってんだよ。」
「私さぁ。今、車椅子バスケやってて、すんごい、楽しい。そして嬉しい。それと~~。学校の授業、オンライン出来て、本当に良かった。そう思ってる。」
その話に将輝、
「は…ぁ…???」
「でね。そんな私にしてくれたのって…。実は、将輝、あんたなんだよ。それは私も納得している。もぅ~~、おかあさんとおとうさんに、その事、何回言われたか。将輝君には感謝しろって。耳にタコ出来るくらい。そのたんび、私、うるさい、うるさい、うるさい、聞きたくない、聞きたくない、聞きたくな~~い。って、いっつも思ってた。だって、しょうがない。私、あんたの事、嫌いだから。」
その、「嫌い」と言う言葉に将輝、何気にカチンときて、
「うるせぇよ。嫌いで結構だよ。俺だって、おまえの事。好きでもなんでも…。」
すると理沙、
「うん。それは分かってる。最初っから。」
「じゃ~~。何だってんだよ。…ったく~~。」
理沙、そんな将輝にキッパリと、
「あのね、将輝。生半可な気持ちで練習するの、やめて。中途半端は私、嫌い。」
瞬間、将輝、
「えっ…。」
「私、脚、動かない。下半身…全然感覚ない。勉強してて分かったけど、これ、ハンデキャップって言うの…???将輝みたいに動けないんだよ。」
将輝、
「理沙…。」
「…でも、私、真剣に車椅子バスケ、やりたい。そして、今、実際に、それ、やってる。中途半端はいや。だから、中途半端な今の将輝は見たくない。何か、あったっ???」
理沙のその少し大きな声がリビングの方にも。
和奏、庭を見て、サッシを開けて、
「どうかした~~???」
その声に将輝、
「あっ、やべっ。」
理沙、ニッコリと母親に向かって、
「な~~んでもな~~い。」
その声に和奏、少し顔は傾げたものの、
「温かいの淹れておく~~。」
理沙、
「ありがとう~~。」
和奏、徐にサッシを閉める。
理沙、ボールをお腹の前で、ポ~~ン、ポ~~ンと、
「何か、あったっ???…言っちゃえば…。楽になんのに。」
信じて…良かった。 vol.203. 「あんた、どうした…???ちょっと、いつもと、様子、変。」
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※ご本人の承認の下、紹介させて頂いております。