その週の土曜日。
いつも通りに和奏と将輝が伴い理沙、障害者スポーツセンターに。
小野倉、
「おっ、おはよう~~。」
和奏、将輝、理沙、3人揃って、
「おはようございます。」
理沙、すぐさま持っているバッグから、
「小野倉さん、小野倉さん。」
小野倉、
「ん~~~???」
理沙、
「はい、これ。」
四角い箱を。
その箱を見て小野倉、
「えっ???…まさか、僕にバレンタイン…???」
理沙、少し赤らめた顔をして、
「はい。いつもお世話になってま~~す。」
そんな理沙に小野倉、思わず動揺したような顔で、
「ぼ…、僕に…???…いいんですか~~???…いや…、嬉しいけど~~。」
小野倉、和奏を見て、
「瑞樹…さん…???」
そんな和奏は小野倉の顔を見てニッコリと。
「えぇ。理沙が自分で考えて…、決めた事ですから…。受け取ってあげてください。」
その声に小野倉、申し訳なさそうに、
「そ、そうですか~~。」
そして小野倉、理沙にニッコリと、満面の笑顔で、
「うん。じゃ、ありがたく。いただきます。」
理沙、そんな小野倉にニッコリと、
「ありがとうございます。」
小野倉、チラリと将輝を見て…。けれども、
「ヨシ。今日も頑張って~~。みんな、理沙君、待ってるんじゃない…???」
理沙、瞬間、
「へっ…???」
「10分前に来た女の子、中学生なんだけど、五木奈美(いつきなみ)ちゃん。」
理沙、
「あ~~、うん。はい。」
「入ってきて、瞬間、物凄い笑顔で、今日も理沙さん来るよね~~って。」
その声に和奏も将輝も、キョトンとして…。…けれども、
「あ~~。うんうんうん。」
「はい。分かります。」
小野倉、
「うん。来るけど…。でも、どうして…???…で、話を聞いたら、物凄い楽しいんだって。理沙君と話してると。…しかも…、凄いって…。」
その声に3人、
「凄い…???」
小野倉、
「つまりは、上達が早いって事…、なんじゃない…???」
瞬間、和奏、
「ぷっ。」
そして小野倉に、お辞儀をして、
「ありがとうございます。」
けれども理沙、顔を傾げて、
「私…、上達、早いのかな…???」
将輝を見て…。
そんな将輝も、顔を傾げて、
「さ…あ…???」
小野倉、いきなり両手をパン。
「うん。今日も、頑張っちゃえ。」
理沙、その声に元気に、
「ハイ。」
事実、理沙の動きは、去年の12月辺りからは他の参加者の動きからは既に抜きん出ていた。
男性の参加者も口々に、
「あの子、学校で何やってるんですか…???」
と、小野倉に聞くほど。
小野倉も、そんな男性たちに、
「高校では、バレーやってたそうです。しかも、エースアタッカーって聞いてますけど。」
その声に男性たちは誰もが顔を頷かせて、
「な~~るほど~~。納得~~。」
そして、ゲーム開始。
確かに理沙の動きは他の女子よりも目立ってきている。
しかも、シュートの成功率も高くは…、なってきている。
ゲームを見ながら小野倉、将輝に、
「ねね、将輝君、将輝君は理沙君から、バレンタイン…、もらったの…???」
将輝、その声に、左手を左右に振って、
「いえいえいえ。全然。もらってませんけど…。」
小野倉、
「い゛っ…???」
すると小野倉、何を思ったのか、和奏に摺り寄り、
「瑞樹…さん…???」
和奏、
「あっ。はい。」
将輝、コートの近くに…。理沙の動きを見るように…。
小野倉、和奏の顔に近づいて、耳打ちするように…。
「理沙君、将輝君にバレンタインって…???」
その絵に和奏、小野倉を見て、
「はっ…???」
「あっ、いや…。てっきり、もぅ、理沙君、将輝君にはいち早く、バレンタイン…。…だと思って、僕…、あの時、受け取ったんですけど…。」
瞬間、和奏、右手人差し指を鼻先に、
「ぷ。くくくく。」
そして首を振って、小さな声で、
「いいぇ~~。理沙、将輝君にあげてないと思います。チョコ買いに行った時に、なんで私があいつにチョコ…???…って、不貞腐れてたくらいですから…。」
いきなり小野倉、右目を歪めて、
「は、ぁ~~~あ…???」
そして小野倉、すぐさま腕組みをして、
「ど…、どぅ~~なってる、あのふたり~~~???…全く分かんない。」
そんな小野倉に和奏も、口を真一文字に、
「さぁ~~~。どぅ~なってるんでしょうね~~。かかかか。」
その声に小野倉、腕組みを解いて、
「あ、いやいやいや。瑞樹さん、そんな…、呑気な…。」
間髪入れずに和奏、
「まっ。ふたりに、任せてますから…。いずれにしても、みんなが理沙と将輝君の事、思っている。感じているみたいですから。私は、それでいいんじゃないかって。ふふ。」
信じて…良かった。 vol.193. 理沙、すぐさま持っているバッグから、「小野倉さん、小野倉さん。」
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