「はい、到着〜〜っと〜〜。」
和奏、玄関のスロープ、車椅子を押して、理沙に、
「おつかれさま〜〜。」
その声に理沙が、
「かかかか。おつかれさまって、それ…私がおかあさんに言うセリフだよ〜〜。」
和奏、
「かかかか。どういたしまして。」
そして和奏、
「ふん。でも、車の中でも言ったけど、多分、おとうさんも、行きたくなるんじゃないかな〜〜。」
「だ〜〜ね。かかか。でも、それ言ったら、いっきだって。」
「はは。うん。…それにしても、助かった〜〜。将輝君もいてくれて〜〜。」
そんな母の声に理沙、口をぐんにゃりと、
「ふ〜〜〜ん〜〜。」
「た〜〜〜く〜。将輝君の事になると、いっつもそれ〜〜。」
そして、
「理沙のために、いろいろとやってくれるじゃな〜〜い。」
車椅子を自分で…。そしてリビングに…。
「そりゃ、そうだけど…、さぁ〜〜。…なんていうかな〜〜。」
和奏はバッグをカウンターに。そしてキッチンに入ってすぐに蛇口を捻って手を洗う。
「病院での、最初の…。インパクト、あるんだわ〜〜。もぅ〜〜、ムス〜〜っとした顔で…、人を横目で睨むような感じ。…それに言葉遣い。全くの上から言葉。全く頭の中から離れない。」
その声に和奏、
「やれやれ。」
両手の平を上げて。
「…でも、理沙。うん。良かった。小野倉さんも、ビックリしてたもんね〜〜。」
カーテンを開けながら理沙、和奏に振り向いて、
「へっへ〜〜。」
3時間前…。
コートに入った理沙。最初はボールを追ってひたすらに車椅子を前に後ろに。
そして右に左に…。それほど他のメンバーにも負けず劣らず。
それを見ている小野倉が、腕組みして、
「へぇ〜〜。なかなかどうして〜〜。全く違和感…、ないねぇ〜〜。うんうんうん。動けてる動けてる。」
そして、
「へぇ~~。しっかりと、ポール。目で追ってますね~~。うんうんうん。」
そして凡そ5分は経ったろうか、いきなり男性からパスを…。
将輝、
「おっ。」
パスを受け取った理沙、今度は右手でドリブルをして…。
その姿に将輝、
「かかかか。」
理沙、必死に左手で車椅子を…。そして、また同じ男性にパス。
その男性、理沙のパスを受け取っていきなりスリーポイント。ネットに、「ザシュッ。」
小野倉、
「ホ~ッホッホッホッ。」
ベンチに座っていた親子も、いきなり立ち上がって拍手。
「凄~~い。」
将輝、
「かかかか。や~~るもんだ。」
和奏、思わず笑顔に。
けれども、そんな和奏と将輝を、当の本人、理沙は全く見ていない。
目はボールを。そして、それに伴い車椅子を動かしているだけだった。
男性からハイタッチの手を差し伸べられ、「ナイスパス。」その手にパン。
「ありがとうございます。」
そしてまた懸命にボールを追う理沙。
時に、車椅子がぶつかりそうになったが、
相手から、「ゴメン。」のお辞儀で理沙ニッコリと。
その後も違う男性からのパス。そして女の子からのパス。全てミスする事なく。
小野倉、和奏と将輝に、
「凄いですね~~。瑞樹さん、何か…やってたんですか~~???…初めてなんて、とても…。」
その声に和奏、
「実は…。」
そして自宅にあるバスケットコートとリンクの話。鴻上高校バスケ部の話と、小野倉に。
小野倉、数回頷いて、
「へぇ~~。な~~るほど~~。だからか~~。うんうんうん。」
そして、20分経過。ホイッスルの音。全員、動きが止まる。
理沙、みんなにお辞儀をして和奏と将輝の下に。
和奏、拍手して、
「凄い、凄い。」
将輝、ニッコリと、
「やるじゃん。」
そして小野倉も、パチパチと、
「凄いね~~。はははは。まさか、あんなにできるとは…。いやいやいや。感心、感心。弓狩監督、さすがですね~~。」
理沙、息遣い荒く、
「ねね、どうだった…???」
和奏、頷いて、
「うんうん。良かった。」
「えっ…???ほんと…???…全然、私、分かんなくって、気付いたら、ホイッスルの音が…。」
その声に和奏、
「へっ…???」
将輝も、
「えっ…???おぃおぃ。」
理沙、
「私、大丈夫だったの…???」
「大丈夫って言うか、最初っから、あんな風に出来るなんて、凄ぇよ。うん。他の人たちともしっかりと溶け合ってたし。」
理沙、まだ息遣い荒く、
「私、全然覚えてないんだよ。ボールだけ追い駆けてたから…。」
そんな理沙を見て、顔を見合わせる和奏と将輝。
信じて…良かった。 vol.106. 「…それにしても、助かった〜〜。将輝君もいてくれて〜〜。」
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庄司紗千 つつじヶ丘の坂道で…。
※ご本人の承認の下、紹介させて頂いております。
Source: THMIS mama “お洒落の小部屋