和奏、静かにドアを、
「おはようございます、こんにちは~~。」
すると、廊下の向こうから、トントンという音。そして、
「おばちゃ~~ん。」
の声。麗亜である。
和奏、頭を傾げて、
「麗亜ちゃ~~ん。」
玄関に姿を見せた麗亜。
和奏、
「わぁ~~。松葉杖~~。」
麗亜、
「うん。今までの松葉杖、ちょっと、おっきくて…。これに変えちゃった。」
松葉杖からクラッチ杖に変わっている。
和奏、
「うんうんうん。いい感じ~~。何ともシンプル~。でぇ~~。だんだん、しっかりと歩けるようになってきた~~。」
その声に麗亜ニッコリと、
「うん。あっ、お兄…。」
一瞬後ろを振り向…。
「おはようございます。」
麗亜、
「わっ。」
和奏、将輝を見て、
「おはよう。今日は、お願いね。」
将輝、
「あ、はい。」
「理沙、車の中で待ってるから。」
「あっ、はい。」
スリッパを脱いでスニーカーに履きかけて。
和奏、麗亜に、
「じゃ、行ってきます。」
麗亜、
「うん。行ってらっしゃい。」
「あっ、でも、お家に、麗亜ちゃん、ひとりだけ…???」
その声に麗亜、
「あ~~、大丈夫、流美姉ちゃんは早番でクリニックに行ったけど、おとうさん、夜勤明けで帰ってくるから。」
その声に和奏、ニッコリと、
「あ~~、そぅ。うん。分かった、じゃ。」
「はい。行ってらっしゃい。」
玄関を出るとすぐにガレージ。2台の車が入れるスペースがある。
将輝、
「すみません、こんな小っちゃな家で…。」
和奏、
「へっ…???な~~に言ってんの~~。結構、新しい感じのお宅よ~~。うんうんうん。」
「そぅっすか。」
そんな将輝に振り向きながら和奏、笑いながら、
「う~~ん、ふふふふ。」
将輝、車を見て、後部座席に座っている理沙を見て、頭を掻きながら、
「えっと…。」
和奏、
「将輝君、助手席にお願い。」
「あ~~はい。」
そしてドアを。チラリと、後部座席に座っている理沙を見て、
「おはよ。」
理沙も、
「おはよ。」
和奏、シートベルトを締めて、
「さて。参りますか。」
将輝も、
「はい。」
走り始めて凡そ5分。信号機の赤。
「スポーツセンターまで、どれくらいですかねぇ。」
将輝。
和奏、
「うん。地図上から見ると~~。1時間は…優に掛るかな~~。ナビを見て。」
そして、
「ねっ、理沙~~。」
理沙はスマホの画面をがん見している。そして、小さく、
「う~~ん。」
和奏、
「さっきからスマホで現在地、見てるの。…ひょっとして、初めて通る道だから。ふふ。」
その声に将輝、
「えっ…???あっ、そっか…。僕の家、初めてですもんね。」
そして…。
凡そ、20分。
もぅ既に、和奏は運転に集中。
そして、将輝は頭を前に左に、右に。
理沙も同じく、ドア越しに手を、そして頭は右に左に前に。そしてスマホを見ながら、
「あっ、おかあさん、そこ、左。」
将輝も、
「そうですね~~。」
和奏、
「OK。」
そして…、ようやく、道路の案内標識に、「障害者総合スポーツセンター東京支部」の文字。
和奏、
「あった~~~。かかかかか。」
理沙、
「やった~~~。」
将輝も、
「ようやくですね~~~。」
和奏、交差点から右に…。
「へぇ~~。こういうとこなんだ~~。」
時計を見て、
「1時間…45分。さすがに掛かったね~~。」
将輝、
「まぁ…、ナビも、見ながら…ですからねぇ。」
和奏、
「うん。その通り。…けど…、ふたりがいてくれなかったら、私…、大変だったよ、多分、ナビあっても、道、間違えて迷ってた。」
理沙、
「へっ…???」
和奏、バックミラーを見ながら、
「だ~~ってさ~~。そんな…、地理感、ないもん。幾らナビあったって…。1本道間違ったら、一方通行に入って出れなくなっちゃう。当然、渋滞してたら、それだけで、曲がるところも曲がれなくなっちゃって真っすぐ。な~~んてこともあるから~~。」
将輝、建物を見て、
「そっか~~。」
和奏、ハンドルを左に切る。
やがて駐車場に。枠の中に入る前に車を止めて…。和奏、トランクから車椅子を…。
それと同時に理沙がドアを開ける。
和奏、
「ほぃほぃ。」
「ありがと。」
「どういたしまして。ほぃ。」
将輝、見ながら、
「凄ぇ~~。1分も掛からない。」
和奏、
「はは、いつもの事だからね~~。」
信じて…良かった。 vol.103. 和奏、静かにドアを、「おはようございます、こんにちは~~。」
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