そして次の日曜日。将輝の家の玄関で馨。
将輝、玄関から出てきて、
「おっ。悪ぃな。」
松葉杖で麗亜、玄関に、
「おはよ、馨兄ぃ。」
馨、そんな麗亜に、
「おぅ、おはよ。かかか、松葉杖、上手い、上手い、麗亜~~。」
麗亜、
「へっへっへ~~。」
将輝、玄関から自転車を出して、
「んじゃ、行こか。」
「おぅ。」
麗亜、玄関で、
「気を付けてね~~。」
馨と将輝、同時に、
「おぅ。」
そして道路に出て…。
馨、
「おっと。こっち…???」
将輝、頷いて、
「あぁ…。」
暫くはお互いに何も話さず、馨は将輝の後ろを…。
けれどもその内、馨、
「へぇ~~。こっちなんだ…???…って言うか、将輝~~。」
前を走る将輝、
「ん~~~???」
「おま、先週の日曜日に理沙さんち、行ったんだろ。」
その声に将輝、
「あぁ。」
「良く知ってんな、理沙さんの家…。一回行っただけで…。」
将輝、途端に、
「あ、あ~~。」
車では信号機もあったりで、理沙の家まで凡そ30分は掛かる。
その距離を自転車で…。
凡そ45分。
将輝、
「あと…、少しだ。」
将輝、ある住宅の前を通り過ぎて…。
馨、
「おぅ。」
そして300メートル先。
将輝、
「ここだ。」
馨、
「へぇ~~。」
馨、理沙の家の外観を見て、
「かかかか。凄ぇな。」
将輝、
「だろ。かかかか、俺んちみたいな家とは月とすっぽん。」
馨、「参った。」みたいな顔をして、口をへの字に、
「なぁ~~。正に…豪邸…。」
その声に将輝、
「かかかか、あぁ。」
そして、アプローチを歩く将輝。
馨、庭を見て、
「おほほ~~。いやいやいや。」
将輝、
「だろ。」
「うんうんうん。」
馨、玄関前のスロープも見て、
「へぇ~~。こんな風に~~。」
将輝、
「あぁ~~。」
そして玄関のチャイムを…。
すぐに、
「は~~い。いらっしゃ~~い。将輝く~~ん。玄関開いてるから、入ってきて~~。」
理沙の母親の声。
将輝、
「あ~~、はい。ありがとうございます。お邪魔しま~~す。」
馨に、
「リビングからこっちの様子、見えるから。」
その声に馨、
「おっ、お~~。俺んちなんて、チャイムもねぇよ。」
将輝、
「かかかか。まっ、俺んちは、チャイムくれぇは…。」
玄関の引き戸を…。
馨、
「おっと、ここにも…。」
将輝、
「あぁ…。」
蒼介が廊下を歩いて、
「おぅ。」
そして和奏、ふたりに、
「いらっしゃい。」
馨、ふたりに丁寧にお辞儀をして、
「将輝に言われて、俺も…。」
そして頭を撫でて、
「いや…。僕も…お邪魔。」
蒼介、ニッコリと、
「うんうん。馨君、鴻上の部活で一度。」
馨、
「あっ。はい。」
蒼介と和奏の後ろに、車椅子で理沙、
「おはよう~~。いらっしゃ~~い。」
その姿に馨、
「ヨッ。俺も来た。」
理沙、馨を見て、笑顔で、
「うん。いらっしゃい。」
蒼介、
「はいはい、とにかく、入って、入って。」
和奏、
「うんうん。」
将輝、
「お邪魔しま~~す。」
馨も、
「お邪魔しま~~す。」
蒼介、将輝に、
「迷わず、来れた…???」
その声に将輝、
「あ~~。え~。は、はい。」
馨、
「…って言うか、おま、不思議に…、全然迷わず来たよな。」
和奏、その声に、
「えへぇ~~。凄いね~~、将輝く~~ん。記憶力いい~~。先週、一度だけでしょう、ウチ来たの~~。はは。」
蒼介、頷きながら、
「うんうん。だよな~~。」
そしてリビングに。
リビングから真っすぐに見えるバスケットコートとリンク。
馨、
「凄ぇ~~~。」
将輝、また、
「だろ…。」
理沙、始終ニコニコと…。
和奏、
「はいはい。まずは飲み物~~。自転車で疲れたでしょう~~。」
蒼介、
「おぅ~~。うんうん。飲んで、飲んで。」
将輝、馨に目配せして、
「…じゃ、いただきま~~す。」
階段をドタドタと。そしてリビングに、栞奈。
「あは。いらっしゃ~~い、おはよう。」
いきなりの女子の登場にびっくりする将輝と馨。
「お、おはようございます。」
馨、女子を見て、
「あっ。」
栞奈、馨を見て、
「こんにちは。久しぶり~~。」
馨、
「あっ、ど、どうも…。」
蒼介、和奏も、
「あれ…???お姉ぇは、彼…???」
栞奈、
「うん。知ってる。病院の屋上で…。一度だけだけどね~~。身長、高いからインパクト大。」
その声に馨、
「あ、はぁ~~。」
理沙、そんな栞奈に、
「かかかか。お姉ぇ~~。」
信じて…良かった。 vol.089. 車椅子で理沙、「おはよう~~。いらっしゃ~~い。」
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